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【まとめ】2023年 日本劇場公開の映画(8月編)

 この記事は2023年8月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

死霊のはらわた ライジン

Evil Dead Rise (C) Pacific Renaissance Evil Dead 21 Limited and Blade Rights Limited 2022. All rights reserved.

公 開 日  :8月2日

ジャンル:ホラー

監 督 :リー・クローニン

キャスト:リリー・サリバン、アリッサ・ザザーランド、モーガンデイビス、ガブリエル・エコールズ、ニール・フィッシャー 他

 

概要

 巨匠サム・ライミ出世作である『死霊のはらわた』シリーズの第5作目。死霊軍団VS姉妹とその家族たちの壮絶な死闘を描いた、戦慄のバトル・アクション・ホラー。シリーズ同様、死霊に憑りつかれた人間と闘うための武器となるチェーンソーは本作でもエンジン全開!死霊から逃げるハラハラドキドキ感はもちろん、エキサイティングな死霊軍団との死闘が全編に渡って繰り広げられる。

 本作の脚本および監督はリー・クローニンが務め、サム・ライミとシリーズお馴染みのキャスティングである名優ブルース・キャンベルが製作総指揮として名を連ねる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ベスは疎遠になった姉のエリーに会うため、彼女が住むロサンゼルスのアパートを訪れた。久々の再会を果たした後、突如として地震に襲われた。その際に生じた亀裂により、地下に謎の部屋が姿を現した。エリーの子供たちが中に入ると、1冊の本とレコードを発見する。レコードを再生すると、なんと死霊を呼び覚ます呪文が吹き込まれていた。そして、みるみるうちに死霊が復活を遂げ、ベスたちに襲い掛かる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 出血大大大サービス過ぎるハイ・テンションなスプラッター・ホラー。(実際の出血量は「大」が何個ついても足りない。)

 簡素で最低限の設定から強すぎる死霊が呼び起こされ、何でもアリな恐怖演出とゴア描写から怖さと楽しさが一体となった面白さがある。恐怖演出は、ギョロっとした鋭い目の動きや身体の悶え1つ取っても怖くて楽しい。ゴア表現は出血量が凄まじい。身体の外側だけでなく内側からも破壊し、その度に血が放出。子役を前にしても容赦ナシ(笑)しかも、物語が進むにつれて人体破壊がエスカレートし、出血量は序盤と終盤で天と地の差ほど右肩上がり。本作1つで血糊を何リットル使っているのだろう(笑)

 物語的にも主人公たちが「偽りの同情に打ち勝つ」の精神で死霊と闘う動機付けが牽引してた。また死霊に関して、設定の少なさが無尽蔵の強さに繋がり、「やっぱり死霊は強いんだなあ…」と最後に思わせてくれる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

スナッチャー

© 2018 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved.

公 開 日  :8月2日

ジャンル:コメディ、ホラー、SF

監 督 :ステファン・シダーズ、ベンジ・クレイマン

キャスト:メアリー・ネピ、ガブリエル・サリス、J・J・ノーラン、オースティン・フライバーガー、ニック・ゴメス 他

 

概要

 特になし。

 

あらすじ

 イケメンのスカイラーと付き合ったおかげで、サラはすっかりスクールカースト上位の仲間入りを果たした。だが、スカイラーと初体験を済ませた翌日に事態は急変。なんと、たった1日でサラは妊娠してしまった。しかも、腹は妊娠9か月の形にまで膨れ上がっていた。さらに、元親友のヘイリーに連れられ、無料クリニックでエコー検査をしたところ、胎児は人間ではなくエイリアンだった!やがて、サラとヘイリーはエイリアンの恐怖を知ることになる…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 ライト時々ヘビーなエロネタ。エイリアンの登場と共に追随するグロ描写。エロもグロも、緊張感の欠片もない登場人物たちの軽ノリな掛け合いと、バシッと決めるカメラワークとカット割りで和気藹々に映し、不謹慎極まりないブラック・ユーモアへと昇華させる。「ホラー表現で驚かすと思ったろ?違うぜ〜。笑わせるんだぜ〜」と斜め上を行くほどコメディであり、B級映画としてアイディア勝負を試みる振り切りがある。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

ゾン100 ゾンビになるまでにしたい100のこと

(C)麻生羽呂高田康太郎小学館/ROBOT

公 開 日  :8月3日

ジャンル:漫画実写化、コメディ、ホラー

監 督 :石田雄介

キャスト:赤楚衛二白石麻衣、柳俊太郎、早見あかり北村一輝

 

概要

 漫画家・麻生羽呂さんが月刊サンデーGXにて連載している同名漫画の実写映画化。

 

あらすじ

 都内の大学を卒業し、制作会社に新卒入社した天道輝(テンドウ アキラ)。大学時代にアメリカンフットボール部で培ったガッツを武器に意気込んでいたが、歓迎会の直後に帰社して連日徹夜という”洗礼”を受け、自分がブラック企業に入社してしまったと知る。有能だが部下をこき使うパワハラ上司・小杉の下から次々と仕事を押し付けられ、連日の疲労感で自宅の部屋は荒れ放題だし、自分の時間などまるでない。みるみる”社畜”と化していく。だが、ある朝、いつものように重い気分で自宅のドアを開けると、世界は一変していた。なんと、感染するとゾンビのように意志を持たない捕食者と化す未知のウイルスが都内で蔓延していたのだ。絶望的な状況だが、輝は「これで会社に行かなくていい!好きなことを何でも出来る!!」と有頂天に。これまでの人生で叶えられなかったことを「ゾンビになるまでにしたいこと」というリストを作成し、道中で出会った三日月閉(ミカヅキ シズカ)や、疎遠になっていた親友・竜崎憲一朗を巻き込み、リストを実現する冒険に繰り出していく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 大量の人々がゾンビとなって、生きてる人間たちを襲うパンデミック・パニック…と思わせて、「ゾンビ=現代の日本社会」と風刺した社会派な作品。ゾンビに呑まれるだけの生涯を送るのかといった葛藤。ゾンビから生き残るために、嫌でもライフラインを確保できるコミュニティに渋々と帰属する惰性。劇中で主人公が辿る前述の苦難にある「ゾンビ」という単語を「現代の日本社会」に置き換えても通ずるほど時代の映し鏡となっている。そして、ゾンビの荒波を越えて自己実現を果たすには、モチベーションを確保できる目標設定と信頼できる仲間と共同体になることが、そっくりそのまま今後に渡る現代の日本社会の生き方を提示している。ある意味、本作は「君たちはどう生きるか」である。

 単にゾンビを用いた社会的な作品としてだけでなく、ゾンビの描写やディストピアと化した街並みの設計に惜しまず予算を投入している。ゾンビの爛れた皮膚や食いちぎった肉片は生々しく作られているし、街並みは遠くに映る風景までゾンビの侵食が見える。もちろん、主人公の生活圏内も点在するゾンビと散らかった物品がディストピア感を醸し出している。コメディや社会風刺やヒューマン・ドラマといったストーリー性だけを前面に出すでなく、ちゃんとパンデミック・パニックとして製作が行き届いてエンタメ性を完備している。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

トランスフォーマー ビースト覚醒

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. (C)2023 HASBRO

公 開 日  :8月4日

ジャンル:SF

監 督 :スティーブン・ケイブル・jr.

キャスト:アンソニー・ラモス、ドミニク・フィッシュバック、ディーン・スコット・バスケス

 

概要

 2007年から製作を続けている『トランスフォーマー』シリーズの7作目。1作目から5作目を監督したマイケル・ベイと巨匠スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を執り、スティーブン・ケイブル・jr.が監督を務める。本作は車から変形する馴染みのオートボットだけでなく、動物から変形するマクシマルズが加わり、『バンブルビー』の続編としてだけでなく、新たな物語の幕開けにもなっている。

 

あらすじ

 金属生命体のオートボットが地球に降り立ってから約10年後となる1994年。あらゆる惑星を丸呑みにして食べ尽くす凶悪な敵・ユニクロンが地球を標的に接近していた。地球の危機を救うため、オートボットのリーダーであるオプティマス・プライムはオートボットたちを緊急招集して立ち向かうことに。さらに、動物から変形する金属生命体であるビーストが参戦する。また、偶然にもオートボットの存在を知ってしまった人間のノアとエレーナも協力する。果たして、オートボットとビースト、そして人類は、ユニクロンによる地球消滅の運命を変えることが出来るのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 シリーズ7作目にして『バンブルビー』からの続編であるリブート2作目。だけど、本作が初見でも大丈夫。

 直近の『バンブルビー』と比較すると、良くも悪くもマイケル・ベイ風味がある。多種多様な金属生命体がいっぱい登場し、ガシャガシャと変形を見せてくれる。マイケル・ベイほどダイナミックではないが、画面狭しとばかりに正義と悪の金属生命体が入り乱れる戦闘シーンは迫力と臨場感がカムバック。スロー・モーションを用いたアドレナリン演習もカムバック。かと言って、マイケル・ベイほどゴチャゴチャのこってり感はなく、良く言えばシャープで見やすいアクションとなっている。

 変形シーンでは、主人公を車モードの金属生命体が主人公をフォローしながら難なく変形するのが印象的。

 音響が良い。悪の金属生命体が惑星を呑み込もうとする重低音の地響きは随一。身体が震える。

 音楽の導入が良い。主人公の潜入シーンやバンブルビーがダイビングを決める際の音楽が雰囲気にマッチしていてノレる。

 「ビースト覚醒」とサブタイトルが付いてるが、あまりビーストたちが活躍しない。存在感を残せたのは、プライマルとエアレイザーぐらい。他のビーストたちは戦闘シーンでは映りが少ないし、セリフも少なくて会話に混ざり切れてない。

 主人公とヒロインのキャラが立ってない。背景と行動原理が記号的。金属生命体と手を組んで地球および宇宙を救おうとする心境変化にグラデーションがない。主人公に至っては、ラストで急に更なる正義感に目覚めるのが唐突。マイケル・ベイのシリーズと同様の悪い部分である。また、ヒロインと主人公の弟が状況の飲み込みが早すぎるのもマイケル・ベイのシリーズと同様の悪い部分。だけど、本作の主人公がシリーズの中で物理的に1番体を張ったと思え、そこに関しては新たなアプローチ。なぜ、主人公が頑張る描写が多かったのかはラストで判明する。賛否両論あるけど。

 吹き替え版に関して、定番の玄田哲章さんはもちろんのこと、子安武人さん等の豪華声優陣で見事だった。藤森慎吾さんは藤森さん本人だと忘れるぐらいハマっていた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

マイ・エレメント

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

公 開 日  :8月4日

ジャンル:アニメ

監 督 :ピーター・ソーン

キャスト:川口春奈玉森裕太MEGUMI伊達みきお、楠見尚巳 他

 

概要

 『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『リメンバー・ミー』を手掛けたディズニー&ピクサー作品。火、水、土、風のエレメント(元素)がともに暮らす都市エレメント・シティを舞台に、イマジネーションあふれる色鮮やかな世界での奇跡の出会い、予想もできない驚きと感動を描いた物語。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 火、水、土、風4つのエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。火の街で生まれ育ったエンバーは、家族のために、そして大好きな父の店を継ぐ夢のために頑張っていた。ある日偶然、エンバーは、涙もろくて優しい自由な心を持つ水のエレメントである青年ウェイドと出会う。自分と正反対の彼と一緒に初めて世界の広さに触れたエンバーは、ふと自分の新たな可能性を考え始める。だが、エレメント・シティでは「違うエレメントとは関わらない」という絶対的なルールが敷かれていた。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 4つのエレメントが在住し、「違うエレメントと関わらない」という体制は現実世界の多民族国家。火と水の主人公2人が垣根を越えて繋がりを持つ関係性は現実世界における異民や異人種の交流。設定が現実世界の民族や人種に関することへリンクしており、主人公2人の絆が理想の現実世界を訴えている。とはいえ、見た感じでは土と風のエレメントたちは他のエレメントに友好的で、火と水が歪み合ってるように見えたが…。あと、同じく見た感じの化学反応では、火と土の関係が危険性を孕んでいる。木を生やした土のエレメントは、火のエレメントに触れられると燃やされるから一方的に身体と生命が脅かされる。加えて、火のエレメントたちは木が主食であり、いざとなったら木を生やした土のエレメントを食料にすることさえ出来る。それらを踏まえると、火と土の関係性が1番危なくて、脅かされないように最優先で条例を定める必要性を感じた。まあ、本作の世界観でそんなことを言ってたらキリがなさそうだが…。とはいえ、火の世界しか知らない火の主人公が水の主人公に連れ出されて世界の広さを知り、その広さを知った分、自分の将来や価値観を拡張していく変化は、学びを得る経験として非常に良いシークエンス。

 エレメント(元素)に基づく映像表現が素晴らしい。各々の身体から取り出せるエレメントの特性を活かして物品やインフラを創造するシーンは唯一無二の映像体験。製作陣の想像力の高さが伺える。見ているだけで楽しい。同時に、街でエレメントたちの生活を肌身で感じて躍動感を覚える。作り上げた世界設定の活用が巧みである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司

(C)臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会

公 開 日  :8月4日

ジャンル:アニメ

監 督 :大根仁

キャスト:小林由美子ならはしみき森川智之こおろぎさとみ真柴摩利、鈴木もぐら、水川かたまり、鬼頭明里、松阪桃李 他

 

概要

 毎年、劇場版が公開される大人気アニメ『クレヨンしんちゃん』が初の3DCGで映画化。製作期間7年間の時を経て、笑いも、感動も、家族愛も、何もかもが超スペクタクルな”しんちゃん”が誕生した。

 アニメーションを担当するのは『シン・ゴジラ』や『STAND BY ME ドラえもん』を手掛けた、CGプロフェッショナル集団の白組。脚本および監督を担当するのは『モテキ!』や『バクマン。』の大根仁さん。

 3DCGでモッチモチと化したしんちゃんが、エスパーになって、手巻きずしを飛ばして、世界をおたすけ(!?)する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ノストラダムスの隣町に住むヌスットラダマスは、「20と23が並ぶ年に天から2つの光が降るであろう。1つは暗黒の光、もう1つは小さな白い光。やがて暗黒の光は強大な力を持ち、平和をごっつ乱し、世界にめっちゃ混乱を招くになるんやでえ」と予言を残していた。

 そして、来たる2023年。宇宙から暗黒の光と小さな白い光が接近。白い光は春日部に住む幼稚園児・野原しんのすけに命中。体に不思議なパワーがみなぎり、しんのすけエスパーとなる。そして、暗黒の光を浴びたのは非理谷充。非理谷は、バイトは上手くいかず、推しのアイドルは結婚、さらには暴行犯に間違われて警察に追われるといった悲劇の連続に襲われて、この世を恨んでいた。暗黒の光の力で暗黒のエスパーとなった非理谷は世界に復讐することを誓い、破壊活動に目覚めていく。

 世界の破滅を望む非理谷VSしんのすけ。”すべてが、しん次元”なちょー超能力大決戦が今、幕を開ける。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 3DCGだが、人力のペンで書いたような線は踏襲。だが、漫画やアニメでは平面的だったキャラ絵が立体的になり、ペーパークラフトのようにフンワリ膨らんだ触感となった。背景がカチッと描き込まれている分、登場人物がフワフワ浮いてる感じがあるけど、キャラが立体的でスムーズに動く様は『クレしん』では新感覚。

 本作の元ネタは原作漫画の単行本26巻にある「しんちゃんのお話バトル!オラに不可能はない編その2」。超能力の設定、池袋博士と助手の深谷の登場、使用するギャグ、そして敵キャラの動機も踏襲している。

 だが本作では、敵キャラの動機から発展させたテーマが賛否両論を巻き起こす問題点となっている。本作のテーマは2023年の現実世界を投影しており、不況や政策で苦しめられて未来が真っ暗な若者たちを描写している。「引きこもり」や「少子高齢化」等、耳にすると心苦しい単語が出て、現代社会に切り込みを入れる攻めた内容になっている。そこで問題になってくるのが、現代を苦しんで生きている若者へ向けたアンサーである。そのアンサーが「若者は頑張れ」である。現代の社会および政治の問題を提示した以上、解決案を出すべき年齢層は若年層に限った話ではない。他の年齢層にも関係ある話である。若者だけが頑張れば済むわけではない。若者に問題を置いた側も見つめ直す必要性がある。それとも本作は、若者と高齢者の対立構造は解消できないから、若者だけは頑張っておけよという皮肉だったのだろうか?それにしても、頑張りを重ねて挙句、身体や精神に異常が起きたら元も子もない。頑張るのではなく、無理せず生きれる社会を目指す方が先決ではないでしょうか?だって、頑張ったところでダメな人間は大勢いるのが、この無理ゲー社会なのであるから。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計10個

 

ジェーンとシャルロット

(C)2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms

公 開 日  :8月4日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :シャルロット・ゲンズブール

キャスト:ジェーン・バーキンシャルロット・ゲンズブール、ジョー・アタル 他

 

概要

 2つの時代をセンセーショナルに彩ったフレンチ・アイコンの母ジェーン・バーキンと娘のシャルロット・ゲンズブール。親子でありながらも今まで決して語られることのなかった2人の「心の奥に隠された深い感情」を映したドキュメンタリー映画

 フレンチ・ポップのレジェンドことセルジュ・ゲンズブールのパートナーと娘という特異な環境下で家族の形を築いてきたジェーン・バーキンシャルロット・ゲンズブール。2人はセレブリティの母と娘ということ以上に、1960ー70年代と1980ー90年代、2つの時代をセンセーショナルに彩ったシネマ&ファッション・アイコンでもあった。

 シャルロット・ゲンズブールにとって監督デビューとなる本作は、母ジェーンがこれまで誰にも語ることのなかった娘たちへの想い、パブリック・イメージとの狭間で感じた苦悩や後悔、最愛の娘ケイトを自死で失って以降の深い哀しみを、2人の間に流れる優しい時間の中に紡ぎ出した貴重なドキュメンタリー作品となった。誰にも踏み込めなかった母と娘の真実の姿が、感動的に綴られる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 2018年、東京。シャルロット・ゲンズブールは、母であるジェーン・バーキンを見つめる撮影を開始した。これまで他者を前にした時に付き纏う遠慮のような感情が、母と娘の関係を歪なものにしてきた。自分たちの意思とは関係ないところで、距離を感じていた母娘。ジェーンがセルジュの元を離れて家を出ていった後、父の元で成長したシャルロットには、ジェーンに聞いておきたいことがあったのだ。3人の異父姉妹のこと、次女である自分より長女ケイトを愛していたのではという疑念、公人であり母である彼女の半生とは一体どんなものだったのか。シャルロットはカメラのレンズを通して、初めて母親の真実と向き合うことになる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 苦難を辿ったり、過去を振り返るジェーン。母であり偉大なるアーティストであるジェーンに羨望を抱いていたシャルロット。親子であり芸能界に生きる仲間として近しい存在。芸能人として、それぞれの道を歩んでいった遠い存在。近くて遠い位置関係であった2人がカメラを回して対話することで、ようやく胸中に溜めていたことを声に出し、改めて距離を詰めて両者一体となりながらも距離を感じる。2つの距離感を保ち、親子でありながら互いに別々の道を歩んだ芸能人である位置関係が2人だけの特別な関係性を形成しているのが分かる。

 映画としてドキュメンタリーとして、明らかに出来具合は完璧から程遠い。ジェーン・バーキンおよびシャルロット・ゲンズブールが何者であるかの説明が一切ない。過去または現在の写真・映像・物品を映したところで2人の会話しかなく、何の写真なのか等の説明が一切ないため、観る側にとっては把握がしづらい。そういった欠点が凄く目立つ。

 だが、それでも実際に2人が人生を送る中で感じていたことは紛れもない事実であり、ジェーン・バーキンだからこそ、シャルロット・ゲンズブールだからこそ成し得た2人だけの特別なドキュメンタリーである。この作品の題名に『ジェーンとシャルロット』以外はあり得ない。そして、許されない。唯一無二のドキュメンタリー。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

トイズ・オブ・テラー

© 2018 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved.

公 開 日  :8月9日

ジャンル:ホラー

監 督 :ニコラス・バーソ

キャスト:キャナ・テレサジョージア・ウォーターズ 他

 

概要

 特になし。

 

あらすじ

 ハンナの一家はクリスマス休暇を過ごすために、人里離れた古い屋敷を訪れる。そこは、かつて小児病院として使われており、ハンナはリフォームして高く売ろうと考えている屋敷だった。屋敷に入った途端、娘のゾーイと息子のフランクリンは、病院閉鎖後に放棄されてしまった院内の玩具を見つけて遊び始める。ところが、その玩具たちは人間を殺害するといった凶暴な意思を持っており、ハンナたち一家に襲いかかってくる。果たして、ハンナたちは生き延びてクリスマス当日を迎えることが出来るのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 実写映画だけど、玩具たちがまさかのストップ・モーション・アニメで襲撃してくる驚きの作品。もはや、ホラー映画としての怖さはなく、玩具たちが愉快に動き回っている。襲って来る敵をストップ・モーション・アニメで表現したのは確かに斬新だが、逆にホラーとしての振り幅が狭くて表現に限界がある。最初から最後まで玩具たちが一辺倒な立ち回りしか出来ず、表現にレパートリーがない。とゆうか、生み出せない。それ故、演者たちによる玩具の対処法も広がりがない。しかも、全ての玩具が物理的に対処可能であり、全く脅威に感じない。生身の肉体で何とかなってしまうのでギャグの領域である。ここまでくると、玩具たちに攻撃されて致命傷を喰らう側に問題がある(笑)もはや、玩具の攻撃を喰らった方々がドジっ子にしか見えてくる(笑)

 玩具に他人を洗脳する能力あるらしいけど、洗脳が開始されるスイッチが分かりづらい。なんか勝手に洗脳が始まって、「私、洗脳されるシーンの時に寝てた?」と自問自答してしまった(笑)

 家族の長女以外の登場人物たちが基本的に、他人が襲われても救いの手を差し伸べない。頑張って闘ってる人にも加勢しない。薄情者だな(笑)

 結果論だけど、事故物件だと知りながら家族全員に内緒で買い取った母親が悪く、最終的に皆へ謝罪しないのは誠意が足りない。なお、事故物件だけど買い取った理由が全く深掘りされない。ストップ・モーションによるホラー表現に限界を感じて、母親のストーリーに期待すると肩透かしを喰らう。驚くほど何もないよ(笑)そして、ここでストーリーを作れなかったことにより、本作はストーリーがあってないような映画になってしまった。

 B級映画だと割り切って観れば、ツッコミながら笑って観ていられる作品ではある(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計9個

 

バナナ・スプリッツ・ホラー

© 2018 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved.

公 開 日  :8月9日

ジャンル:ホラー

監 督 :ダニシュカ・エスターハジー

キャスト:ダニ・カインド、スティーブ・ランド、セリーナ・マーティン、フィンレイ・ボイタク=ヒソン、サラ・カニング、ロメオ・カーレ、マリア・ナッシュ 他

 

概要

 特になし。

 

あらすじ

 9歳のハーリーと彼の家族は、大好きな子供向けバラエティ番組「バナナ・スプリッツ」の公開収録を観覧することになった。その頃、番組内に登場するAI搭載の動物キャラクターたちは、番組が打ち切りになることを知ってしまう。そんな真似は断じて許さないと大暴走した動物キャラクターたちに搭載されたAIが誤作動を起こし、殺人マシーンへと変貌!スタジオは大パニック!果たしてハーリーたちは、恐怖の館と化したスタジオから脱出することができるのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 意思を持った着ぐるみが起動して人間を襲って攻撃するスタンスは有名なホラーゲーム『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」に同じ。着ぐるみホラーとして、着ぐるみの可愛さが怖さへと切り替わる特長が本作にもある。また、お茶目でおちゃらけ感があった番組内でのパフォーマンスがそっくりそのままの動きでスプラッターと化して恐怖へと切り替えており、着ぐるみを用いた恐怖が遺憾なく発揮されている。

 人体破壊描写に容赦がない。低予算のB級映画だけど、人体のパーツの原型を変えてしまうレベルのゴア表現である。それを着ぐるみが行うことによって、人間とは違った無機質な恐怖と絵面が見れる。

 やはり、B級映画ゆえに気になる部分が何箇所かある。

 舞台は番組スタジオ内だが、広さが掴めないし、部屋などの位置関係が不明。部屋やフロアの繋ぎがよく分からず、登場人物が移動してもワープしてるようで位置関係が不明確になる。

 明らかに、着ぐるみAIたちの中に演者が入ってることを想像させてしまう動きが多々ある。ロボット感を出すために「ウイーン、ガシャッ」のよう歩き方をしてるけど、不要に思える。ステージ上のパフォーマンスや殺戮シーンでは人間の動きをしないと構築できず、結局、人間の動きをしてしまうならロボット歩きは要らない。むしろ、人間のような動きに違和感がなく、ロボット歩きに違和感がある。この部分で世界観の定まりが揺らいでしまった。

 あと、着ぐるみたちの動きが遅く、「全力ダッシュで逃げれば、着ぐるみたちの攻撃から逃れられるんじゃないの?」とシンプルなツッコミがあり、若干、恐怖感が削がれている。

 とはいえ、着ぐるみスプラッター・ホラーという独特な世界観を楽しめる作品である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

リボルバー・リリー

(C)2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

公 開 日  :8月11日

ジャンル:歴史、アクション

監 督 :行定勲

キャスト:綾瀬はるか長谷川博己羽村仁成、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、佐藤二郎、ジェシー板尾創路阿部サダヲ石橋蓮司野村萬斎豊川悦司

 

概要

 第19回大藪春彦賞を受賞した長浦京さんの同名小説を実写化したスパイ・アクション。

 

あらすじ

 大正末期の1924年。幣原機関と呼ばれる組織の下で敏腕スパイとして名を馳せた小曾根百合はスパイを引退し、東京にある銘酒屋の女将として働いて平穏に暮らしていた。ところが、ある日、陸軍から標的にされている少年・近見慎太を陸軍の刺客から助けたことでお尋ね者となり日常は一変。百合は危険に晒されている慎太を守るため、再び戦火へ飛び込んでいく。

 

 

感想

 大正末期を舞台に、元敏腕スパイが、日本軍の陰謀に巻き込まれて狙われる1人の少年を護るため、再び戦火に身を投じるアクション活劇。

 作品の全体像としては、「毒を持って、毒を制す」ならぬ「戦いを持って、戦いを制す」といった具合で、反戦をテーマに掲げている。スパイとして戦いに身を投じてばかりの主人公が、戦いを終わらせる為に戦いを手段として使うことを選択し、歩んだ道程の意味と自身のアイデンティティを確立させ、戦う意義を見つける物語である。この戦うことについての意義は、スパイ作品繋がりとして『メタルギア・ソリッド』シリーズの「戦うことでしか自分を表現できなかったが、いつも自分の意志で戦ってきた」の論理に通ずるものがある。

 銃撃戦は、地に足をしっかり着けてバシバシ撃ちまくって当てまくる事に重点を置いている。敵サイドの兵士たちは物陰に隠れることなく、「私を撃ってください」と言わんばかりのポジショニングであり、主人公サイドの腕前を魅せる恰好の的になっている。逐一、ドスンと重い音を発する銃撃音が重厚感を生み出しており、身体に当たった際に致命傷を負ったのが一目で分かる。一撃ごとの重さが本作における銃撃シーンの売りである。

 格闘戦は、地に足を着けた重厚感ある銃撃戦とは打って変わり、身を翻すほど体を使った華麗で激しいアクションになっている。とはいえ、必要最低限の動きだけを行い、シャープな見栄えとなっている。

 多くの登場人物の立ち振る舞いがクールかつミステリアス。綾瀬はるかさん演じる主人公ですら素性や背景がなかなか読めない。長谷川博己さんを初めとする主人公の仲間たちは尚のこと。ミステリー要素を常に入れたストーリー展開をさせる中、登場人物自体が結構なミステリーである。だが、綾瀬はるかさんは回想や劇中で明かされていく秘密がリンクして人間味が露わとなり、その他の人物たちは義理人情を通した行動で人間味が灯っていく。後半になればなるほど登場人物の人物像が形成され、クールかつミステリアスに見えていた者達が最終的には感情ある人間として温かい存在となっている。語りと説明が少ない人物たちだからこそ、名優たちを揃えたのが功を制している。

 最後の最後に最高な名優が仕事をしてくるから、スタッフロールが流れるまで油断は禁物。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

バービー

(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

公 開 日  :8月11日

ジャンル:コメディ、SF

監 督 :グレタ・ガーウィグ

キャスト:マーゴット・ロビーライアン・ゴズリングアメリカ・フェレーラ、アリアナ・グリーンブラット、マイケル・セラケイト・マッキノン、シム・リウ、ヘレン・ミレン

 

概要

 ドールの世界に革命を起こし、世界中を熱狂させてきたバービー。オシャレでかわいいだけでなく、常に時代を先回りし、性別や人種を超えて「You Can Anything(なりたい自分になれる)」を発信して世界中に勇気を与えた。そのバービーの想像をはるかに超えたパワフルな実写映画化したのが本作である。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 すべてが完璧で今日も明日も明後日も夢のような毎日が続くバービーランド。バービーとそのボーイフレンド(?)であるケンは連日に渡ってパーティー、ドライブ、サーフィンに興じて楽しい日々を送っていた。しかし、ある日突然、バービーの身体に異変が生じる。原因を探るためにバービーとケンは人間の世界へ行く。そこに待ち受けていたのは、バービーランドとは勝手が違う世界であり、行く先々で大騒動を起こすことになる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 人間の世界とバービーたちが住む空想世界を行き来し、男女問題を浮き彫りにするコメディ・ドラマ。

 人形の世界が人間サイズになったかのようなバービーランドのデザイン・センスが秀逸。パステル・ピンクを基調とした煌びやかな世界観が広がり、風景や建物、衣装や小道具まで意識が行き届いている。隅々まで眼福を味わえる映像体験となっている。

 コメディ・センスも抜群。人形の世界を自由に動ける人間でやるからこそ生まれるユーモアは唯一無二。しかもバービーを知らずとも、誰もが笑える「人形ネタ」となっている。(ただ、人形ネタ以外では、知ってる人は知ってるネタが多少ある。)足の踵が地面に着くだけで笑いを取れるなんて、そうはない。また、バービーを実際に製作したマテル社を登場させ、バービーが起こした悪い社会現象を反省するかのような自虐ネタを仕込む徹底ぶり。

 物語としては、「着地点そこかよ!」とツッコミを入れた。男女の優位性における問題を扱っているが、人間界で実際に起きた問題をバービーランドでは性別を逆転させるだけで終わらせる前時代的な着地。確かに、現実的に見れば「男女平等のラインって、どこよ?」となるけど、バービーランドに人間を連れて介入させた果てがコレかよ…。人類が送った嫌な歴史をバービーランドにも味わせるのではなく、男女がどうすれば対等になるのか話すことを提案しなさいよ…。とはいえ、現実的に考えれば全てをひっくり返すことは難しいか。そう思えば程よい妥結か。ただ、バービーを用いて家父長制とフェミニズムといった社会的テーマをコミカルかつシニカルに提示した設定と話運びは練り込みが深い。あと、人間のアイデンティティだけでなく、バービーとして生まれながら生き方を決められているバービーが、自身で考え抜いたアイデンティティを見出すアプローチは、観る者へ自身の生き方を決める励みになっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男

(C)2019 Wood Entertainment

公 開 日  :8月11日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :タラ・ウッド

キャスト:ゾーイ・ベル、ブルース・ダン、ロバート・フォスター、ジェイミー・フォクス、サミュエル・L・ジャクソンジェニファー・ジェイソン・リーダイアン・クルーガールーシー・リューイーライ・ロスティム・ロスカート・ラッセルクリストフ・ヴァルツ

 

概要

 1992年、監督デビュー作『レザボア・ドッグス』でカンヌ国際映画祭に殴り込みをかけ、まさに一夜で時の人となったクエンティン・タランティーノ。その後も新作を発表するたびに世界中の映画ファンを熱狂させ、「タランティーノ映画」と呼ぶしかない唯一無二のジャンルを打ち立てた。いったいどうやって彼は、奇想天外な物語を次々と生み出し、観たこともない映像を作り出し続けるのか?そんな疑問に迫るドキュメンタリー映画が完成した。

 タランティーノの逸話と秘話をタブーなしで暴露するのは、監督第1作目から8作目の『ヘイトフル・エイト』までに出演した俳優たち、そしてプロデューサーやスタッフたち。監督は、『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督のドキュメンタリー映画でも高く評価されたタラ・ウッド。

 かねてより「長編映画を10本撮ったら、映画監督を引退する」と公言しているタランティーノ。近く完成するだろう最後の1本の前に特別に用意された、発見と興奮と感動が爆発する必見の逸品。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 特になし。

 

 

感想

 クエンティン・タランティーノが好きな映画人たちによるタランティーノ・ファンのためのドキュメンタリー。

 タランティーノ本人は出演しない。タランティーノ監督作に携わったプロデューサーや出演した豪華俳優陣が、タランティーノ人物像だったり各作品の舞台裏だったりを語る。タランティーノ・ファンなら必聴の内容となっている。第3作目の『ジャッキー・ブラウン』から顕著に表現される強い女性キャラクターの存在だったり、『ジャンゴ 繋がれざる者』や『ヘイトフル・エイト』での人種差別へのカウンターだったりに触れ、タランティーノ本人が語らずともタランティーノの他者に対するリスペクトだったり映画制作へ賭ける熱意が伝わってくる。本作のタイトルは「映画に愛された男」だが、タランティーノ自身も映画を愛して相思相愛である。

 第1作目の『レザボア・ドッグス』から時系列順に作品を語ってくれる点が分かりやすくて親切。ただ、作品内容の説明は一切ないため、タランティーノ監督作品を観てない者に対する親切心はない。完全にタランティーノ9作品を観たファン向け。

 映画人のインタビューと監督作の本編映像と舞台裏の映像とバシッバシッと切り替えていく編集がスタイリッシュ。若い年代のタランティーノ・ファンほど劇場でタランティーノ監督作を観てないので、これを機に劇場で堪能してはと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ハート・オブ・ストーン

Netflix

公 開 日  :8月11日

ジャンル:アクション

監 督 :トム・ハーパー

キャスト:ガル・ガドットジェイミー・ドーナンソフィー・オコネドー、マティアス・シュバイクホファー、ポール・レディ、ジン・ルージ、アーリアー・バット 他

 

概要

 『ワンダーウーマン』シリーズで主演を務めるガル・ガドットを主演に迎え、強大な力を持つコンピュータ・システムを巡って世界を股にかけるスパイ・アクション・エンタメ。

 

あらすじ

 世界を股にかけた平和維持組織に所属する陰の諜報員レイチェル・ストーン。とある任務の最中、世界中のコンピュータ・システムにアクセスしてコントロールすることが出来る「ハート」と呼ばれる強大なシステムが敵に狙われてることを知り、それを阻止すべく世界各地を飛び回る。果たして、レイチェルは強大なシステムを魔の手から守ることが出来るのか…。

 

感想

 ミッション:インポッシブル』の1作目のような騙し合いによる駆け引きと、『ゴースト・プロトコル』以降のようなエクストリーム・アクション(本作はトム・クルーズのように命懸けな試みはしてない)を足して割ったような作品。

 最初の掴みがバッチリ。予備知識ナシで観れば、主人公が何者かを伝える序盤で驚きが沸く。その後も前半では登場人物の正体だったり、人間関係が揺れ動いたりとアクセントがある。だが、尺と物語の都合上、各登場人物に思い入れが生まれる前に手札を切ってしまうことが多々あるけど、展開的には面白いけど心を打つことはない。特に、人間関係の揺れ動きで主人公に葛藤が生まれるけど、主人公の周囲の人間たちの人物像が定まってないため、表面的にしか映らない。

 アクションに関して、主演のガル・ガドットが泥臭く使命にしがみつくような見栄え。『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズのように、一歩踏み外せば死ぬような極限状態で乗り物にしがみついてる。(流石にトム・クルーズのように体を張ってないけど。)風が体を切っていくレベルのスケールでエクストリーム・アクションをしてるので、劇場公開をしなかったことが悔やまれる。

 本作はCGが素晴らしい。現場から離れて主人公をサポートする仲間のコンピュータ・システムが立体映像でマップを映し出し、ドクター・ストレンジ並みに手を動かして映像を切り替えていくシークエンスに気持ちよさがある。そして、何と言ってもそのシステムから情報を主人公の目に送信し、FPSゲームのように敵の位置情報や目標地点までのルートを表示させるのはゲーム好きにとっては堪らない。

 同年公開の『ミッション:インポッシブル/デッド・レコニングPart1』にて、人間とAIの関係性を語ったように、本作では人間とコンピュータ・システムの関係性を語っている。時代と共にコンピュータ・システムは発展して強大な機能を持っていくが、その力に呑み込まれないように正しい人間の意志が必要だと伝えている。それ故、前半ではコンピュータ・システムの頼もしさ、後半ではコンピュータ・システムの恐ろしさといった落差を描いたのかと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

SAND LAND

(C)バード・スタジオ/集英社 (C)SAND LAND製作委員会

公 開 日  :8月18日

ジャンル:アニメ

監 督 :横嶋俊久

キャスト:田村睦心山路和弘、チョー、鶴岡聡飛田展男茶風林大塚明夫

 

概要

 『ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』など歴史的作品を全世界へ送り出してきた漫画家・鳥山明さんの作品の中でも、「圧倒的完成度を誇る名作」と称される漫画『SAND LAND』を長編アニメ映画化。個性的でユーモア溢れる人懐っこいキャラクター、メカニック、そしてストーリーが凝縮された鳥山明ワールド全開だった原作を、サンライズ×神風動画×ANIMSといった実力揃いのアニメ制作会社が集結し、満を持して宿願の映画化となった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 魔物も人間も水不足にあえぐ砂漠の世界「サンドランド」。悪魔の王子・ベルゼブブが、魔物のシーフ、人間の保安官ラオと奇妙なトリオを組み、砂漠のどこかにある「幻の泉」を探す旅に出る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 ドラゴンボール』や『ドラゴンクエスト』を手掛けた鳥山明先生による唯一無二の描画センスをそのままアニメに落とし込み、鳥山先生の漫画がそのまま動いてるような映像体験だけでも十分に観る価値あり。(鳥山ファンなら尚更。)鳥山先生が好きな自然の地を舞台に(街は描くのが面倒で舞台にしたくないだけ)それぞれの背景を持ったキャラたちが織り成す王道ドラマと、戦略的で軽快な王道アクションは老若男女を問わずシンプルに楽しめる。また、鳥山先生の大好きな銃や戦車が登場したり、『ドラゴンボール』のように怒りがパワー源となる設定だったりと、あらゆる箇所に鳥山成分を感じ取れるのはファンにとって嬉しいポイント。

 主人公3人組の結束が固っていく過程が優れている。各々の知恵と特技を持ち寄った協力プレー。人間と魔物を隔てる壁を取り払って増幅する信頼関係。笑い話を咲かせられる距離感。現代の仕事に例えるなら、共同プロジェクトを軌道に乗せた優秀なフリーランス集団のような結束力である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

高野豆腐店の春

(C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

公 開 日  :8月18日

ジャンル:コメディ、ドラマ

監 督 :三原光尋

キャスト:藤竜也麻生久美子、中村久美、徳井優山田雅人、日向丈、武内都子、菅原大吉、小林且弥、桂やまと 他

 

概要

 藤竜也さんと麻生久美子さんをダブル主演に迎え、豆腐店を舞台に父と娘の人生を描いたヒューマン・ドラマ。

 藤竜也さんは、三原光尋さんの監督作品で3度目の主演を務める。2005年の『村の写真集』では頑固一徹写真屋。2008年の『しあわせのかおり』では年老いた中国出身の名料理人。本作では豆腐屋の店主を務め、「藤竜也×三原光尋」の職人三部作の完結作とも言える作品となった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 広島県尾道市の風情ある下町。その一角に店を構える高野豆腐店。父の辰雄と娘の春は、毎日、陽が昇る前に工場に入り、こだわりの大豆からおいしい豆腐を二人三脚で作っていた。

 ある日、もともと患っている心臓の具合が良くないことを医師に告げられた辰雄は、出戻りの一人娘。春のことを心配して、昔ながらの仲間たちである、理髪店の繁、定食屋の一歩、タクシー運転手の健介、英語講師の寛太に協力してもらい、春の再婚相手を探すため、本人には内緒でお見合い作戦を企てる。同時に、辰雄にも、偶然が重なり合って言葉を交わすようになった、スーパーの清掃員・ふみえと心を通わす。豆腐を作る日々の中に訪れた、父と娘それぞれにとっての新しい出会いの先にあるものは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 豆腐屋を舞台にしてるだけあって豆腐が美味しそう。白い液状となった大豆をかき混ぜ、固体になった後のプルッとした質感が、口の中に豆腐の食感を覚えさせる。本作を観終わった後、大豆本来の旨味を引き出した豆腐屋さんの豆腐が食べたくなる。かといって、本作は豆腐作りを頑張る映画ではない。

 本作開幕後の前半はコメディが中心。主演の藤竜也さんと麻生久美子さんをはじめとするベテラン俳優陣が、古き良き昭和の香りがする軽快な笑い話に花を咲かせる。ストーリー展開もコミカルであり、何か起きた際の登場人物のリアクションにクスッと笑える。藤竜也さん演じる主人公の視野の狭さ、仲間たちの大きな世話焼きに時代錯誤を感じるが、後半で打ち消してくれるから良しとしよう。

 後半はコミカルなテンポを残しつつも、ほんのりと温かいヒューマン・ドラマがウェイトを占める。藤竜也さんと中村久美さんを中心に、歩んできた人生を振り返り、同じ時間を共に生きる他者を大切にしようとする思いへ収束していく。そして、登場人物たちの他者に対する思いが熱を帯び、前半のコメディ色は何処へ行ったのかと疑うほど感動を呼び起こす。

 前半は、和気藹々で大いに笑えるコメディ。後半は、登場人物たちの人生に温かみが灯る感涙のヒューマン・ドラマ。エンタメ作品にて多用されがちな「笑って泣ける」という代名詞があるが、本作は他に類を見ないほどピッタリ当てはまる作品である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

オオカミの家

(C)Diluvio & Globo Rojo Films, 2018

公 開 日  :8月19日

ジャンル:アニメ

監 督 :クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ

キャスト:アマリア・カッサイ、ライナー・クラウゼ 他

 

概要

 クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの2人組による初の長編映画にして、ピノチェト軍治政権下のチリに実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」にインスパイアされたホラー・フェアリーテイル・ストップ・モーション・アニメ。

 レオンとコシーニャは監督のほかに脚本、美術、撮影、アニメーションなどを務めた。撮影場所はチリ国立美術館など10か所以上の美術館やギャラリーで行った。実寸大の部屋のセットを組み、ミニチュアではない等身大の人形や絵画をミックスして制作。さらには、制作過程や制作途中の映像をエキシビションの一環として観客に公開する手法で映画を完成させた。企画段階を含めると完成までに5年の歳月を費やしている。ワールドプレミアとなった第68回ベルリン国際映画祭ではカリガリ映画賞を、第42回アヌシー国際アニメーション映画祭では審査員賞を受賞するなど世界各国で数々の賞を受賞している。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。「助け合って幸せに」をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、集落で飼っていたブタを逃がしてしまったマリアは、厳しいお仕置きに耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間。森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 立体と平面が入り混じる未知の映像体験。登場人物と物品が立体で生成されたモノでも平面で描画されてモノでも世界観が反発せず、地続きで成立しているのは革新的で芸術的。しかも、物語が全編ワンカット風。場面転換の際にカット割を用いることなく、その場で立体物を生成したり平面に描画したりする光景には息を呑む。もはや、場面"転換"ではなく場面"生成"の領域。物語を観ながらストップ・モーション・アニメの世界を生成する職人技を堪能することが出来る。ここまでくると、ある意味ドキュメンタリー映画である。

 物語は難解だが、根幹にあるのは支配構造の継承。支配下で育った者は支配する生活しか出来ず、やがて支配下の者から反発を受ける。まるで、親から虐待を受けて育った子供が大人になって結婚して産んだ我が子に対して虐待し、ある日突然、我が子から反発を喰らう構図である。「支配には支配」という観点から、本作を敢えて支配的コミューン「コロニア・ディグニダ」が制作したプロパガンダ・ビデオとして位置付けたのも納得がいく。「支配を経験したら支配のない生活は出来ず、1番待遇が良い支配生活をしたいならウチへおいでよ」といった宣伝になっており、支配生活を断ち切るには支配を受けてない第三者の介入と助言が必要であると思わせる。

 ※上記の感想は劇場パンフレットを大いに参考にしました。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

Gメン

(C)2023「Gメン」製作委員会 (C)小沢としお秋田書店)2015

公 開 日  :8月25日

ジャンル:漫画実写化、青春

監 督 :瑠東東一郎

キャスト:岸優太、竜星涼恒松祐里矢本悠馬森本慎太郎りんたろー。高良健吾大東駿介吉岡里帆尾上松也田中圭

 

概要

 週刊少年チャンピオンで連載していた小沢としおさんの同名漫画が連載終了から約5年の時を経て実写化。友情・喧嘩・恋といった男子高校生特有の青春という青春が全て詰まった学園漫画が、最旬の豪華キャスト陣によって爽快なドラマとしてスクリーンを彩る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ”彼女出来る率120%”のモテモテ男子校である武華高校に転校してきた1年生の門松勝太。しかし、勝太が入ったクラスはヤンキーとオタクといった問題児だらけが集結した校内最底辺クラスのG組だった。だが、そんなクラスメイトたちと「彼女を作る!」という目的ひとつで一致団結。友情と恋の日々に青春を謳歌していく勝太だったが、街に蔓延る凶悪な半グレ集団である天王会の魔の手が迫る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 ポップコーン・ムービーとして最高。ハマれば定期的に観たくなる。

  次から次へと恋・友情・喧嘩に関わるイベントが怒涛の勢いで発生し、その都度に豪華キャスト陣の軽快な掛け合いと痛快なアクションが光る。岸優太さんの身体に回転をかけて攻撃する喧嘩アクションがカッコいい。竜星涼さんのモテ男子キャラとお馬鹿キャラの振り幅とギャップに引き込まれる。矢本悠馬さんのプロレス・ネタと流暢にギャグを大量生産するトーク・スキルが心地よい。恒松祐里さんのツンデレぶりに萌える。吉岡里帆さんの自意識過剰に叫びまくり、もはやネタを披露する女性お笑い芸人のような姿に爆笑する。高良健吾さんと田中圭さんがどう見ても高校生に見えないけど、貫禄が放出されてる。キャスト陣の演技や存在感が作品に息を吹き込み、逐一、シーンが楽しさで彩られている。楽しいシーンが次々と積み重なり、120分の尺を感じさせない。疾走感があり過ぎるにも程がある快作。ただ、本作のギャグで乗れない方は最後まで乗ることは難しいだろう。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

春に散る

(C)2023映画「春に散る」製作委員会

公 開 日  :8月25日

ジャンル:ドラマ

監 督 :瀬々敬久

キャスト:佐藤浩市横浜流星、橋本環奈、坂東龍汰片岡鶴太郎哀川翔窪田正孝山口智子

 

概要

 ノンフィクション作家である沢木耕太郎さんが執筆して人気を博した同名のボクシング小説を、監督に『糸』・『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久さん、主演を2世代トップ俳優である佐藤浩市さんと横浜流星さんを迎えて実写映画化。共演に橋本環奈さん、片岡鶴太郎さん、哀川翔さん、そして『ある男』から続けてボクサー役を演じる窪田正孝さんが集結。厳しいトレーニングを乗り越えた俳優たちによる、肉体と魂を燃やし尽くすボクシング・シーンが、リアルを徹底的に追及したからこそ観る者に勇気をくれる。さらに、数々の力強くかつ深淵な感動作を世に送り出してきた瀬々監督が、世代も考え方も異なる人間と人間が、ぶつかり合いながらも愛や絆を見つけようともがく姿を描く。

 未来は決して予測できないことを心に刻まれた私たちに、「今この瞬間を生き切る」ことの真実を見せてくれる、日本映画史上最も胸熱なドラマが誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一。引退を決めたアメリカで事業を興して成功を収めたが、不完全燃焼の心を抱えて帰国。かつて所属した事務を訪れ、かつて広岡に恋心を抱き、今は亡き父から会長の座を継いだ令子に挨拶した広岡は、今はすっかり落ちぶれたという2人のボクシング仲間に会いに行く。そんな広岡の前に不公平な判定負けに怒り、1度はボクシングをやめた黒木翔吾が現れ、広岡の始動を受けたいと懇願され受け入れる。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん1度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく。果たして、それぞれが命をかけて始めた新たな人生の行方は…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

 

感想

 1度ボクシング界から身を引いた男たちが手を取り合い、チャンピオンを目指す胸熱なスポーツ・ドラマ。

 本作において、観る者は傍観者として完全なる第三者で、劇中の横浜流星さん演じる翔吾たちは当事者であり、その間に一定以上のスペースを置き、その距離をキープしたまま物語が進行している。観る者は翔吾たちの真後ろを位置取った見守り役となり、挑戦者としての人生を送っている身内または近しい者を応援するという擬似体験をする事ができる。観てる我々との距離感を保つため、視力が落ちていく翔吾の視点と同化する演出はない。加えて、ボクシングに心血を注いで結果を出した翔吾による「新しい世界が見えた」という発言についても、どんな世界が見えたのかは一切の説明がない。翔吾の見えてる世界は翔吾だけのものとして、他の劇中人物にもどんな景色か伝えてないし、観客にも映像効果を用いて見せることはない。翔吾の目だけに留め、安易に伝達しなかったのはリアリティ・ラインの線引きを心得ている。

 観る者と劇中人物の距離を空けたことで、翔吾と佐藤浩市さん演じる広岡のスローガンである「今を生きる」という刹那的な考えも程よい加減で理屈が通らない論理となり、当人たちだけが納得するモノと化している。身体の限界が迫っていることを将来的に考えたら、一般的にはボクシングを辞める決断をするのが通常である。だが、それを度外視してボクシングを続ける決断は、一般人から見れば自ら進んで身体を壊す行為である。でも、劇中で広岡が喋るセリフにもあったが、人間は採算が取れないと理解しながらも行動してしまう矛盾を帯びており、「実際に人間の動機って、理屈が通ってないこと多いし、言語化できないことも多いよ」ということを表現している。大抵の作品は劇中人物たちに無理矢理にでも共感や感情移入を試みて観る者との距離を詰めるけど、本作は詰めることなく一定以上の距離感を保ち、観る者は劇中人物が下した決意を只々、真後ろから見守るリアルな応援体験を徹底している。

 ボクシング・シーンは迫力満点。グローブが打ち付ける鋭く乾いた音が常に響き渡る。何度ダウンしても立ち上がっては相手に喰らい付いていく横浜流星さん・坂東龍汰さん・窪田正孝さんの熱気と執念は鳥肌モノ。横浜さんのボクシングは野生的な強さの説得力があり、窪田正孝さんは『ある男』でボクサー役をした経験とそもそもボクシング・ジムに通って作り上げたフォームが強さとボス役を務める説得力になっていた。また、最後に勝敗が立場を分けても、互いを認め合う姿勢は清々しいまでのスポーツマン・シップだった。欲を言えば、スロー・モーションの演出は不要だった。横浜さん・坂東さん・窪田さんのガチンコな打ち合いが十分に臨場感を与えているため、スロー・モーションが入ると安っぽくなった感じは否めない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個