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【まとめ】2023年 日本劇場公開の映画(1月編)

 この記事は2023年1月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

公 開 日  :1月6日

ジャンル:ドラマ

監 督 :成島出

キャスト:役所広司吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、MIYAVI、佐藤浩市

 

概要

 陶器職人の主人公・誠治と、海外で活躍する彼の息子・学、そして主人公が知り合う在日ブラジル人青年・マルコス。リアルな今を生きる3人の関係を軸に、独自の視野から「家族」という普遍的なテーマに挑んだ感動作。

 主人公・神谷誠治を演じるのは役所広司さん。焼き物を本格的に練習して撮影に挑んだ本作では、親の愛を知らずに育ち、不器用だが家族を深く愛する男の複雑な心情を唯一無二の演劇で表現。息子の学を演じるのは吉沢亮さん。マルコス役のサガエルカスさん、彼の恋人エリカ役のワケドファジレさんらはオーディションで選ばれた方々。しかも、実際に日本で暮らすブラジル人。さらなるキャストとして、サムライ・ギタリストと世界的に知られるMIYAVIさん。他には、佐藤浩市さん、松重豊さん等のベテラン俳優陣が絶妙なアンサンブルを見せる。

 現在、約280万人の外国人が暮らしている日本。その中のブラジル人に光を当てた本作は、実際に起きた事件などをヒントに、いながききよたかさんが脚本へ落とし込んだ。監督は『八日目の蝉』や『ソロモンの偽証』を手掛けた名匠・成島出監督。本作ではフィクションとノンフィクションの境界線上のリアリティーを鮮やかに描き出した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 陶器職人の神谷誠治は妻を早くに亡くし、山里で独り暮らしをしていた。ある日、アルジェリアに赴任中の一人息子の学が、ブラジルの難民出身の妻であるナディアを連れて一時帰国した。学は、結婚を機に会社を辞めて父の陶器職人を継ぎたいと申し出る。だが、陶器職人の将来を心配する誠治は息子が後継者となることに反対し、現在の職業であるシステムエンジニアを続けて欲しいと思いを告げる。

 ある夜、誠治の家に隣町に住む在日ブラジル人青年が傷を負って逃げ込んできた。青年の名はマルコス。マルコスは在日ブラジル人を執拗に弄ぶ半グレ集団・榎本グループに目を付けられていた。大事には至らなかったが、やがて、神谷家と在日ブラジル人たちは大きな悲劇に巻き込まれていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 ブラジル人を家族に迎えた陶器職人の一家。一歩踏み違えば危機に陥る在日ブラジル人たち。在日ブラジル人を弄ぶ半グレ集団。多岐に渡る視点から人々を描き、国籍を越えて人の和が紡がれていくヒューマン・ドラマ。

 移民問題の現実を直視し、誰もが同じ空の下で生きていることが国籍を越えて伝わってくる作品。「人種」を見て偏見や思い込みを抱くのではなく、「その人」自身を見て個人を知るといった、硬派で普遍的な心意気が見える。

 役所広司さんの演技が素晴らしい。雰囲気が満点。セリフいらず。妻の死を省みて、他人を思って無謀に切り込んでいく心意気が強くもあるし、何と言っても優しさに溢れている。

 MIYAVIさん演じる半グレ集団を率いる榎本の背景が描写不足。妻子が在日ブラジル人絡みで悲劇に遭ったから在日ブラジル人全般を憎んで弄ぼうとなる思考の到達点はボンヤリ気味。動機として輪郭が曖昧。妻子を非劇に遭わせた在日ブラジル人が極悪人だったり、または極悪人でなくとも日本人に恨みを持って日本人を苦しめていたりすれば、同情が出来た上に国籍間による負の連鎖をもっと際立たせることが出来たと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

ドリーム・ホース

(C)2020 DREAM HORSE FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

公 開 日  :1月6日

ジャンル:伝記、ドラマ

監 督 :ユーロス・リン

キャスト:トニ・コレットダミアン・ルイスオーウェンティール 他

 

概要

 イギリスの小さな寂れた村で競走馬を育てた者たちが起こした奇跡の実話を描いたヒューマン・ドラマ。村が活気を取り戻していくほどのドラマティックな出来事は注目を集め、人々を感動の渦に巻き込んだ。2015年にはドキュメンタリー映画が制作され、今回は主演に『ヘレディタリー継承』のトニ・コレットを迎えて長編映画化。実話からの脚色でも観る者に大きな感動を与え、米レビューサイト『ロッテン・トマト』では2023年1月時点では批評家の支持率が80%越え。観客の支持率が90%越えであり大きな高評価を獲得している。

 

あらすじ

 イギリス・ウェールズ、谷あいの小さな村。夫と二人暮らし、パートと親の介護だけの”何もない人生”を送っていた主婦ジャン。ジャンは馬主経験のあるハワードの話に触発されて競走馬を育てることを思いつき、村のみんなに共同で馬主となることを呼びかける。週10ポンドずつ出しあって組合馬主となった彼らの夢と希望を乗せ、「ドリーム・アライアンス(夢の同盟)」と名付けられた馬は、レースで奮戦し、彼らの人生を変えていくが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 胸の高鳴りを求め、競走馬を育てた村人たちによる感動の実話

 人生に必要なのは活力。その見つけ方は、過去に取り組んだことに近しいものを選択すること。やりたい人達だけで手を組むこと生き甲斐づくりとコミュニティの活性化を示す、地域社会の教科書的な傑作。

 「競走馬を育てよう」と辿り着くロジックが良い。現在進行形で動物を飼っている点と過去にドッグ・レースで成績を収めた点から、今までの経験に近しいものを選べば成功の確率が上がり、モチベが保ちやすい。継続しやすいものや過去の成功体験から適性を見出すのは理にかなっており、誰もが真似るべき。

 主演のトニ・コレットの幅広い表情が良い。生気を失った疲れた顔。活力に溢れた笑顔。競走馬を見守る緊張の顔。顔のパーツがハッキリ分かるほどの驚き顔。競走馬への愛着が伝わり、観る者も我が子を見守るような気持ちにさせる。今作を鑑賞中、観る者は主人公たちと一緒に馬主組合員となる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

恋のいばら

(C)2023「恋のいばら」製作委員会

公 開 日  :1月6日

ジャンル:?

監 督 :城定秀夫

キャスト:松本穂香玉城ティナ渡邊圭祐、中島歩 他

 

概要

 2004年公開の韓国映画『ビヨンド・アワ・ケン カレと彼女と元カノ』の邦画版リメイク。原作同様、1人の男性とその元カノと今カノによる三角関係から芽生える愛憎や嫉妬心を描きとる。監督は『アルプススタンドのはしの方』等、多くの良質な作品を生み出し続ける城定秀夫さんが務める。

 

あらすじ

 図書館に勤務する富田桃は、付き合っていたカメラマンの湯川健太郎にフラれ、ひとつの恋を終えていた。その後、健太郎のインスタを眺めると、新しい恋人らしき人物を目にする。さらには、健太郎のインスタから新恋人らしき女性こと真島莉子のインスタを発見する。桃はインスタを頼りに莉子を特定し、直接会いに行ってしまう。そして、莉子と遭遇した桃は、ある”秘密の共犯”を持ちかける。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 コミカルな雰囲気。スリラー的な展開。実は、ミステリー要素もあったりと多岐ジャンルを併せ持つ人情劇。元カノと今カノが犯罪まがいの行動が着実に実行されていく中、三角関係を愛憎と嫉妬で絡み合わせ、さらには童話の「眠り姫」を用いてストーリーを二転三転させて色濃く3人の感情を写し取る。元カノと今カノは上手く共犯を遂行できるかどうかや同じ男性を愛した者同士が最後に抱く思いの方向性に最後まで目を離すことが出来ない。長回しや手振れドアップ等を駆使した多彩なカメラワークが退屈を与えず、物語の着地点が輪郭を帯びても、最後のワンカットまで油断を与えない。真実に到達することは恐怖と勇気が表裏一体であることを身をもって知る。シスターフッドとしての潔さもある一方、背筋を薄っすらと凍らせる。安定感の塊である城定秀夫監督の作品として、良質なエンタメに仕上がっている。

 中島歩さんが2022年公開作品の『愛なのに』や『よだかの片想い』と同様に「何か自覚が足らん惜しい男性」の役柄で登場する。中島歩さんは性格俳優としてユニバース化が進んでいる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

非常宣言

(C)2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :1月6日

ジャンル:スリラー

監 督 :ハン・ジェリム

キャスト:ソン・ガンホイ・ビョンホンチョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン 他

 

概要

 『パラサイト 半地下の家族』や『ベイビー・ブローカー』など数々の大ヒット作で主演を張ったソン・ガンホと『悪魔をみた』や『G.I.ジョー』シリーズに出演したイ・ビョンホンといった韓国2大トップスターの豪華タッグによるフライト・パニック・スリラー。未曽有のバイオテロに2大俳優が地上と上空で愛する者のために奮闘する姿が描かれる。

 

あらすじ

 娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェヒョクは、空港で謎の若い男に執拗につきまとわれる。しかも、その男が同じ便に搭乗したことを知り、不安がよぎる。ジェヒョクが搭乗したKI1501便はハワイに向けて飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が原因不明の発作を引き起こして死を遂げる。直後に他の乗客たちにも同様の症状が現れ、機内は恐怖とパニックの渦に包まれていく。一方、地上では、妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノは、ネット上に飛行機へのバイオテロを宣言する犯行予告動画がアップされていることを知って捜査を進めていくが、その飛行機に妻が搭乗していることを知り、不安を募らせながらもテロ解決のために動き出す。また、テロの知らせを受けた国土交通大臣のスッキは、緊急着陸のために国内外に交渉を開始する。副操縦士のヒョンスは、乗客の命を守るため奮闘するが、飛行を続けるタイムリミットが迫り、「非常宣言」を発動する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 地上のソン・ガンホ。空中のイ・ビョンホン韓国2大トップスターが舵を取るパニック・フライト・スリラー。 現実に蔓延する某ウイルスの社会風刺あり。他人を思いやるヒューマン要素あり。トム・クルーズ主演の某映画を彷彿させる空中映像あり。ジャンルの欲張りセットであり、最後まで飽きずに楽しめる作品である。

 凄く残念な点は、ウイルスの脅威が序盤でピークを終えること。人々に症状を引き起こして命を奪っていたのに、中盤へ差し掛かる前に鳴りを潜める。そのため、ウイルスに対して恐怖と絶望が沸かない。人が死ぬシーンを多くしたり、死体の山を築いたりするシーンを挿入する等が必要だったと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

そして僕は途方に暮れる

©2022映画「そして僕は途方に暮れる」製作委員会

公 開 日  :1月13日

ジャンル:ドラマ

監 督 :三浦大輔

キャスト:藤ヶ谷太輔前田敦子中尾明慶、毎熊克哉、野村周平原田美枝子豊川悦司

 

概要

 各所から絶賛を浴びたオリジナルの舞台が映画化。脚本・監督を務めるのは、『愛の渦』や『娼年』など、毎回賛否が渦巻く衝撃作を送り出し、各界から注目を集め続けている異才・三浦大輔。主人公を演じるのは、Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔。ばつが悪くなるとすぐに逃げ出してしまうクズ男っぷりを見事に体現。これまでのイメージを大胆に覆し、俳優として新たな魅力を放つ。本作のエンディングでは、1984年に大ヒットを記録した伝説の楽曲「そして僕は途方に暮れる」を大澤誉志幸本人が映画のための新アレンジで歌唱、この物語の余韻を心に刻む。予測不能なストーリー、共感と反感が渦巻く≪現実逃避型≫エンタテインメントが誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一は、長年同棲している恋人・里美と、些細なことで言い合いになって、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。その夜から、知り合いや肉親のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、次々と人間関係を断ち切っていく。逃げ続けたその先で、彼を待ち受けていたものとは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 クズ男が居場所を転々とする逃避行劇逃げ続ける主人公にイラつきを覚える。それは、逃げ出した過去の自分や知人と重なるからだろう。故に大きな共感を抱く。許してきた知人。許された自分。許す・許されるの繰り返しで人間関係が成り立つことを知る一作。

 逃げ癖のあるクズ男を演じた藤ヶ谷さんが素晴らしい。現実世界にいる等身大のダメ人間と化していた。何かデカいやらかしをするのではなく、常に他人の肩に乗って依存して生きるという日常生活や人生の立ち回り全般において、現実世界のダメ人間を並行させた人物像だった。故に共感が大いに沸く。

 他のキャストも良い。ダメ男に振り回される性格女優となった恋人役の前田敦子さん。他人を許す度量を秘めた親友役の中尾明慶さん・先輩役の毎熊克也さん。なぜか人生で1人は出会う、謎に自分をリスペクトしてくる後輩役の野村周平さん。憎くとも弟を傍系血族的な位置に立たせて受け入れる姉役の香里奈さん。とっておきをぶっ込む母親役の原田美枝子さん。クズ男の血筋出まくりな父親役の豊川悦司さん。各々が良い味を出してた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

映画 イチケイのカラス

(C)浅見理都/講談社 (C)2023映画「イチケイのカラス」製作委員会

公 開 日  :1月13日

ジャンル:漫画実写化、ドラマ

監 督 :田中亮

キャスト:竹野内豊黒木華斎藤工向井理、吉田羊、尾上菊之助

 

概要

 講談社「モーニング」で連載された浅見理都さんの同名コミックを原作とするテレビドラマが、時を経てスクリーンにカムバック。監督はテレビシリーズ同様に田中亮監督が務める。主要人物である入間みちお役には竹野内豊さん、坂間千鶴役に黒木華さんは勿論のこと、新たに斎藤工さん・向井理さん・吉田羊さん等の名優たちが登場。劇中で起こる2つの事件より、法律とは何たるかを提示する法廷ドラマの幕が上がる。

 

あらすじ

 入間みちおが東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称:イチケイ)を去って2年。

 岡山に異動したみちおが担当することになったのは、主婦が史上最年少防衛大臣・鵜城英二に包丁を突きつけたという傷害事件。事件の背景には、不審点だらけのイージス艦と貨物船の衝突事故があった。だが、イージス艦の航海内容は全て国家機密で、みちおの伝家の宝刀「職権発動」が通用しない難敵だった…。

 その同時期、入間みちおの犬猿の仲として知られる裁判官・坂間千鶴は、裁判官の「他職経験制度」で弁護士になっていた。配属先は奇しくもみちおの隣町…。そこで出会った人権派弁護士・月本信吾とバディを組み、人々の悩みに寄り添う月本に、次第に惹かれていく…。そんな中、町を支える地元大企業のある疑惑が浮かび上がる…。

 2つの事件に隠された、衝撃の事実。それは決して開けてはならないパンドラの箱だった…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 ドラマ未見でも大丈夫。予告編以上にドラマの掘り下げは少ない。竹野内豊さんと黒木華さん演じるキャラが犬猿の仲である点を抑えればオッケー。

 テーマは法律の二面性。ある人にとっては障害。ある人にとっては救済。それが法律であり、法律が持ち続ける二面性。例え、現行の法律を改正しても新たな法律を制定しても、その二面性は未来永劫において変わらない。だからといって、法律の良し悪しを審判するのではなく、法律の特性として向き合っていくものだと本作を通じて感じ取れる。そして、その向き合いに必要なのが法のスペシャリストとして働く職業の存在だと実感する。本作は黒木華さん演じる弁護士の成長を通し、法律の向き合いを観る者に与える法廷ドラマである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

モリコーネ 映画が愛した音楽家

(C)2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras

公 開 日  :1月13日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :ジュゼッペ・トルナトーレ

キャスト:エンニオ・モリコーネクリント・イーストウッドクエンティン・タランティーノハンス・ジマージョン・ウィリアムズ

 

概要

 2020年7月、91歳で逝去した伝説の映画音楽家エンニオ・モリコーネ。1961年以来、500作品以上という驚異的な数の栄華とTV作品の音楽を手掛け、アカデミー作曲賞には6度ノミネートされ、2015年にクエンティン・タランティーノ監督作品の『ヘイトフル・エイト』で受賞し、2006年には過去の功績を称える名誉賞にも輝いた。

 そんな伝説のマエストロに、弟子であり親友でもある、『ニュー・シネマ・パラダイス』『鑑定士と顔のない依頼人』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、5年以上にわたる密着取材を敢行。モリコーネ自らが自身の半生を回想し、映画音楽の芸術的地位の低さやクラシック音楽への道を進まなかった葛藤と向き合いながら、いかにして音楽家としての誇りを手にするに至ったかが、数多の懐かしい傑作映画の名場面と、ワールド・コンサート・ツアーの心揺さぶる演奏と共に紐解かれていく。さらに、クリント・イーストウッドハンス・ジマーといった総勢70名以上の著名人のインタビューによって、モリコーネの仕事術の秘密が明かされる。生まれ持った才能と閃き。貧しかったために働きながら通った音楽院での地道な努力。新しいムーブメントを取り入れる柔軟なセンス。信念に反することは断固拒否するプライド。著名人たちの証言から、モリコーネの人生そのものが偉業であることが証明されていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 特になし。

 

感想

 トランペット奏者時代からの積み上げ。作品やシーンに適した音を即座に導き出す閃き。努力と才能を合わせた唯一無二の芸術感性が新たな音楽を産出してきたモリコーネの革新的な思考に感銘を受けること間違いナシ。当時は低かった映画音楽の地位を押し上げ、今日の映画人や映画鑑賞者の尊厳はモリコーネが築き上げたと称しても過言ではない。天才であり、革命児であり、音楽愛好家であるモリコーネに感謝とリスペクトを捧げた傑作ドキュメンタリーである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

SHE SAID その名を暴け

(C)Universal Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :1月13日

ジャンル:歴史、ドラマ

監 督 :マリア・シュラーダー

キャスト:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリアシア・クラークン、アンドレ・ブラウアー、アシュレイ・ジャッド

 

概要

 2017年、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた1つの記事が世界中で社会現象を巻き起こした。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『恋に落ちたシェイクスピア』『ロード・オブ・ザ・リング』『英国王のスピーチ』など数々の名作を手掛けた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ・性的暴行事件を告発したその記事は、映画業界のみならず国を超えて性犯罪の被害の声を促し、#MeToo運動を爆発させた。

 ピューリッツアー賞を受賞した調査報道を基に製作された本作には、『それでも夜は明ける』『ムーンライト』の製作陣が集結。巨大権力に挑んだ2人の女性記者を、2度のアカデミー主演女優賞ノミネートの『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャリー・マリガンと『ビッグ・シックぼくたちの大いなる目ざめ』のゾーイ・カザンが演じる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ニューヨーク・タイムズの記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが長年に渡って続けてきたセクハラや性的暴行を取材し始めるうちに、ワインスタインは過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明する。さらに、被害に遭った女性たちは示談に応じており、証言すれば訴えられるため、声をあげられないままでいた。問題の本質は業界の隠蔽構造だと知った記者たちは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。そして、遂に数十年に渡る沈黙が破られ、真実が明らかになっていく…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 無数にある訴えの透明な矢。それを無力化する権威の矛と盾。記者の奮闘と被害者の勇気により、矢は火矢となり、矛と盾は木製と化す様は「Me Too」運動の起爆剤と言え、今作を世に出す意義が十分にある。改めて、他人の人生を掌で握る行為は悪だと感じ取れる。

 劇中の大半は記者視点で取材や人間模様を淡々と写実的に映した雰囲気である。それにより、当事者の顔を映したり、犯行の再現を極力控えたりと配慮されている。また、"見えない闇"を追うことや"声なき声"を聞くことのリアリティが十二分に引き上げられている。さらには、女性記者である主人公2人の家族生活を映すことにより、記者である前に1人の女性であることを際立たせ、被害者女性たちを救済しようとする原動力に説得力が増している。

 ラストカットが良い。映画は終わっても、誰かのMe Too問題の始まりを告げたような現実へのジャンプ力が良い。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

ヒトラーのための虐殺会議

(C)2021 Constantin Television GmbH, ZDF

公 開 日  :1月20日

ジャンル:歴史、戦争

監 督 :マッティ・ゲショネック

キャスト:フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルハイマー、マキシミリアン・ブリュックナー

 

概要

 すべてのドイツ占領下および同盟国から東ヨーロッパの絶滅収容所へのユダヤ人強制送還の始まりとなった「ヴァンゼー会議」。本作は、アドルフ・アイヒマンによって記録された会議の議事録に基づき、80年後の2022年にドイツで製作された。その議事録は、1部のみが残されたホロコーストに関する重要文書。会議の出席者15名がまるでビジネスのように、論争の的になるユダヤ人問題について話し合い、大量虐殺に対して反論する者が誰一人いない異様な光景に戦慄が走る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万人のユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名。移送、強制収容と労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌が80年後のいま、明らかになる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 人道から外れた狂気の議論をケレン味なく淡々と進行していく様が逆に狂気。誰1人として「人種差別をするな!」や「人を殺してはいけない」と発言しない。その上、会議の発言者ではない議事録係の女性さえもユダヤ人殺しに一点の疑問を抱かない。席順と自分の管轄の仕事だけ気にしてる。人種差別や人命軽視という言葉の存在すら知らないかのように、そして、数ある面倒な政治問題の1つを片付けるように議論を重ねていく様には欠如してはならぬ良心を感じさせる。れっきとした反戦映画。

 カメラ・アングルが平坦。演出に緩急がない。そのため、会話劇に起伏がない。もはや、観る映画ではなく聴く映画。ドイツ語が分からなければ、字幕を読む映画。吹き替えにすれば、目を瞑っても話が分かる。それだけ画面の強さはなく、それだけ登場人物の台詞に作品の全てが詰まっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ノースマン 導かれし復讐者

(C)2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :1月20日

ジャンル:ファンタジー

監 督 :ロバート・エガース

キャスト:アレクサンダー・スカルスガルドニコール・キッドマン、クレス・ハング、アニャ・テイラー=ジョイ、イーサン・ホークビョーク

 

概要

 『ウィッチ』、『ライトハウス』で全世界に衝撃を与えた超個性派の天才映画監督ロバート・エガースが手掛ける、北欧を舞台に展開する壮大なスケールのファンタジー巨編。スカンジナビアの神話やアイスランドの英雄物語、ヴァイキング伝説をベースにした復讐譚であり、初のアクションにも挑戦。

 北米では2022年4月に劇場公開されるや5週連続TOP10入りを果たし、米映画批評集計サイト「ロッテントマト」では89%フレッシュを記録。エガース監督にとって、内容面でもスケール面でも新境地を切り開いた作品となった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 9世紀、スカンジナビア地域にある、とある島国。

 若き王子アムレートは、旅から帰還した父オーバンディル王とともに、宮廷の道化ヘイミルの立会いのもと、成人の儀式を執り行っていた。しかし、儀式の直後、叔父フィヨルニルがオーヴァンディルを殺害し、グートルン王妃を連れ去ってしまう。10歳のアムレートは殺された父の復讐と母の救出を誓い、たった一人、ボートで島を脱出する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 父の仇討ち。母の救出。9世紀のアイスランドの地で、人生を狂わせた叔父を殺しに出向く男の復讐劇。 ダークファンタジー風な様式美が付着する世界観の下で、復讐するorしない論を有害にして豪胆に描いた重厚な仕上がりに目を見張る。「復讐の連鎖」という終わりなき摂理を主張する作品が増える中、復讐を完遂して鎖を断つアプローチをすることで、改めて復讐を果たす意味を思い返す作品。

 殺陣をしないアクションは、やはり良い。登場人物たち自身が武器で打ち合うことを最小限にして、一撃必殺を繰り返す太刀筋は重厚にして生々しい。殺陣アクションの最高峰として『るろうに剣心』の存在があるが、その対極を進むのも1つの手。とはいえ、今作のアクションは同系統のリドリー・スコット作品(近年だと『最後の決闘裁判』)に比べれば、演出の強さや臨場感などは格段に劣る。

 ロバート・エガース監督作として、前作の『ライトハウス』や前々作の『ウィッチ』に比較すればエンタメに寄り、かなり観やすい。相変わらず神話等の元ネタの引用が散見されるが、今作は知識ゼロでオッケー。神話用語が出ても物語の流れや意図が掴めるような台詞に落とし込んでいる。前作の『ライトハウスは元ネタを知らないで観た場合は好き嫌いがハッキリ別れる設計だったが、今作は元ネタ知らずとも万人が楽しめる。「元ネタを知る→映画を楽しむ」から「映画を楽しむ→元ネタも知って更に楽しむ」という設計となり、監督の手腕が進化したということでよいのではないでしょうか。

 ブルーレイにある特典映像のインタビューによると、今作は舞台が9世紀と遠い昔であるため、当時の歴史に関する資料がなく、衣装も建築物も断片的にしか残ってないらしい。その断片から衣装と建築物を創作し、撮影場所を選定して9世紀のアイスランドを広げたスタッフたちの力量が凄い。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女

(C)2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

公 開 日  :1月20日

ジャンル:アクション

監 督 :パク・デミン

キャスト:パク・ソダム、ソン・セビョク、キム・ウィソン、チョン・ヒョンジュン、ヨン・ウジン、ヨム・ヘラン、ハン・ヒョンミン 他

 

概要

 世界中の映画賞を席巻した『パラサイト 半地下の家族』で美術家庭教師役を演じて国際的なブレイクを果たしたパク・ソダムが主演を務めるカー・アクション映画。パク・ソダムは、どんな依頼でも完璧にこなすクールな女運び屋・ウナを演じる。そして、ウナと共に逃走を続ける仲となる少年役には、なんと『パラサイト 半地下の家族』でパク・ソダム演じる美術家庭教師の教え子を演じたチョン・ヒョンジュンを抜擢。先生と教え子の関係を演じた2人ならではの息の合った演技を披露し、映画ファンには堪らない再タッグとなった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ワケあり荷物を届ける特殊配送会社「特送」に勤める天才的なドライビング・テクニックを持つ運び屋・ウナは、海外への逃亡を図る賭博ブローカーと、その息子ソウォンを港まで配送する依頼を受けた。しかし、思わぬアクシデントにより、依頼人不在のままソウォンと300億ウォンが入った貸金庫のカギを抱えて、悪徳警官などの複数の組織から追われる羽目に…。命がけの追走劇が始まる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 1番目を引くのはカーアクション。主人公の追手を振り切るドラテクが凄い。ピンチを切り抜ける全ての術が針の穴に糸を通すレベルのテクニックであり、しかもダイナミック。少しズレたら事故に繋がる技しかやってない。車の性能と街の地形を把握し、直感かつ平然と次々に追手を振り切るカーアクションは爽快。

 人間同士の対戦アクションもあるが、並程度。どこかで見たことある動きが多い。ただ、ドライバー(運転手)を題材にしているからドライバー(工具)を武器にするのはシャレてる。

 主人公と依頼人の息子との関係性は、逆『レオン』のライト・バージョンを思わせる。 息子を雑に配慮なく扱う序盤のシーンの数々は、主人公が子供を持ったことがないことを強調しており、その後の関係性の対比に一役買っている。

 気になった点は依頼人の息子が主人公を「おばさん」呼ばわりしていた点。主人公を演じたパク・ソダムが見た目と年齢的におばさんと呼べるほど老けていない。無理がある。「お姉さん」の方が妥当。ハン・ヒョンミン演じる整備士には「お兄さん」と呼んでいたので基準が分からぬ(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

キラーカブトガニ

(C)2021 RAVEN BANNER ENTARTAINMENT INC.

公 開 日  :1月20日

ジャンル:SF

監 督 :ピアース・ペロルゼイマー

キャスト:カート・カーリー、ロバート・クレイグヘッド、アリー・ジェニングス、プライス・ダーフィー 他

 

概要

 『パシフィック・リム』のスタッフが贈る前代未聞のモンスター・パニック映画。監督を務めるのは、これがデビュー作となるピアース・ペロルゼイマーであり、監督の他にも脚本や編集も手掛けた。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 廃炉となった原発が爆破処理されたカリフォルニアのある海辺の町で行方不明事件が続発し、白骨と化した人間たちが発見される。事件を調査していた保安官たちは当初、人食いザメの出現を疑うが、被害者たちを捕食していのたは、なんとカブトガニだった。しかも、放射線を浴びたことで凶暴化していることに加え、大量の群れを率いて町に上陸していた。果たして、町の運命は…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 凶暴なカブトガニが町に上陸して人々を襲うB級SF映画

 想像の斜め上を行くトリッキーな作品。死亡フラグを立てた者たちが次々とカブトガニの餌食となるモンスター・パニック…かと思いきや侮ること勿れ。確かに本作はモンスター・パニック映画としてキモ可愛くて如何にもB級なビジュアルをしたカブトガニ君(なんか見た目的に「君付け」したくなる)たちが人々をグチョグチョにするスプラッター祭りを堪能する事が出来る。だが、本作はハンディキャップを背負った者による英雄譚でもあり、本作の主成分であるカブトガニの使い方を見る見るうちに味変させていく楽しさがある。「カブトガニが人を襲う映画」として想像し得る誰もの予想を爆笑レベルで覆す超怪作である。また、物語の全てをカブトガニで繋いだことでシームレスにジャンルを横断させ、本作の監督および脚本を務めたピアース・ペロルゼイマーのやりたいことを全て集約して解き放っている。まさに「デビュー作には作り手の全てが詰まっている」というジンクスの通り。ペロルゼイマーの次回作は、おそらく本作の派生系となるのであろう。いやでも、次回作も本作同様のノリでいいですぞ(笑)ただ、周囲から除け者にされてる人物を道化で消費することは控えてくださいな。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

レジェンド&バタフライ

(C)2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

公 開 日  :1月27日

ジャンル:歴史、ドラマ

監 督 :長友啓史

キャスト:木村拓哉綾瀬はるか宮沢氷魚伊藤英明中谷美紀斎藤工

 

概要

 「人気NO.1の武将」の名にふさわしく、これまで幾度となく映像化されてきた織田信長の人生を、今までは全く違う新たな視点で描く、総製作費20億円のビッグプロジェクト=『レジェンド&バタフライ』。日本最高峰のキャスト・スタッフが集結し、誰もが知る信長の、誰も知らない「妻・濃姫との30年の軌跡」と「本能寺の変の謎」を圧倒的なスケールで描き切る。最期に待つ予想外の展開と圧巻のクライマックスが誰をも、そして日本中を、新たな時代へと突き動かす。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 政略結婚で結ばれた、格好ばかりの織田信長と密かに信長暗殺を目論む・濃姫は、全く気が合わない水と油の関係。だが、濃姫の父・斎藤道三の死や今川義元の襲撃を共に乗り越えるうちに絆が芽生え、戦乱の日本の世を天下統一することが2人の夢となる。しかし、合戦に次ぐ合戦の中で、心を鬼にした信長は”魔王”へと変貌してゆく。本当の信長を知る濃姫は、何度も引き止めようと心を砕くが、運命は容赦なく”本能寺”へと向かっていく。”魔王”と恐れられた信長と、”蝶”のように自由を求めた濃姫。激動の30年を共に駆け抜けた2人が見ていた、”本当の夢”とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 信長と濃姫の新境地。時代劇に留まらず、ラブストーリーに昇華させた大作。夫婦漫才のような微笑ましさが光る前半。夢と魔道に揺れ、孤独と愛欲が沸き立つ後半。伝説は残した。だが、戦乱に呑まれて自由に翔べなかった。激しさと切なさの余韻が残る夫婦の物語。

 木村拓哉さんが幅広い信長像を披露。ヤンチャでガキ大将じみたヤング信長はコミカルで笑える。一転して、魔王と化したオールド信長はとこん怖い。だが、怖さを前面に出しながら奥底に愛と孤独を抱えてる様を体現している。何年も前に死語となった「キムタクは何をやってもキムタク」を更に払拭した。

 今作では濃姫を武芸達者にしたことで夫の戦局を本格的にサポート出来る体制となっている。大抵の時代劇は家来が手助けするため、妻より家来との絆が印象に残りがち。だが、今作は妻が軍略や政治をサポート。妻との絆に印象が残り、夫婦の一体感が強く印象に残り、夫婦の物語を強固なものとしている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

イニシェリン島の精霊

(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :1月27日

ジャンル:ドラマ

監 督 :マーティン・マクドナー

キャスト:コリン・ファレルブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン

 

概要

 第74回ヴェネチア国際映画祭脚本賞、続く2017年度トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞、さらにフランシス・マクドーマンドに2度目のアカデミー主演女優賞をもたらし、その年に映画ファンを最も興奮と震撼を与えた傑作『スリー・ビルボード』から5年。いまなお演劇界・映画界の最前線に立つ鬼才マーティン・マクドナーの全世界待望の最新作。人の死を予告する精霊バンシーをモチーフに、アイルランドの孤島で描かれる2人の男の友情の終焉から始まるヒューマン・ドラマが展開される。

 映画界での評価が高く、アカデミー賞ゴールデングローブ賞などの映画祭で数々のノミネートと受賞を獲得している。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 舞台は1923年のアイルランド。内戦に揺れる本土から海を渡った先にイニシェリン島と呼ばれる孤島があった。島民全員が顔見知りの小さな島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由は分からない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力を借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上、自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣告をされる。そして、この島に、死を知らせると言い伝えられる”精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 親友という友好関係から絶交という内戦関係へ一転した2人の男たちを取り巻くヒューマン・ドラマ。惰性な日々を貪る男。新たな日々を望む男。空と自然が美しい風景の下で鬩ぎ合う維持と打破の対立構造は、現代を生きる我々の人間関係に通ずる本質がある。傑作。

 コリン・ファレル演じるパードリックは、現代で言えば、人間関係を人生の主軸にした「ズッ友」精神の人間。良く言えば、人間関係を維持できれば、現状の人生は確立してる人間。だが、他人に友情しかギブするものがなく、利害が絡むと切られる側にしかならない。確立と切れ目の橋を渡る立ち位置である。

 ブレンダン・グリーソン演じるコルムは、実力主義格差社会が築かれゆく昨今において、コルムのように自分が進む道に存在意義がない人間は友達や家族だろうと交流を断つ人は増えた。何かを成し遂げる最中、友情や家族に時間を使う暇は惜しくなる。パードリックの妹より詰めが甘い部分も良い痛さを出してる。

 以上が個人的な解釈。私は人生のレールがテーマだと捉えて鑑賞した。他の方々の感想を読むと、違う角度および異なるテーマで解釈されているのが見受けられる。なので、この作品は観る人に近しいテーマが浮き彫りとなり、観る者の写し鏡となる作品である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

あつい胸さわぎ

(C)映画「あつい胸さわぎ」製作委員会

公 開 日  :1月27日

ジャンル:ドラマ

監 督 :まつむらしんご

キャスト:吉田美月喜、常盤貴子、奥平大兼、前田敦子佐藤緋美石原理衣、三浦誠己 他

 

概要

 演劇ユニットiakuの横山拓也さんが作・演出を務め、各所で大きな話題を呼んだ同名の傑作舞台を、上海国際映画祭アジア新人賞を受賞したまつむらしんご監督と2013年の『凶悪』で脚本を担当した髙橋泉さんがタッグを組んで映画化。

 若年性乳がんと恋愛をテーマに、揺れ動く母娘の切実な想いを繊細さとユーモアを持って描き出す。

 母親を演じるのは常盤貴子さん。主人公の娘を演じるのは吉田美月喜さん。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏と、母の昭子は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。

 小説家を目指して念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題「初恋の想いで」の事で頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。その言葉は今でも千夏の胸に”しこり”のように残ったままだ。だが、初恋の相手である川柳光輝と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。

 一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基晴の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内透子にからかわれていた。

 親子して恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。だが、その胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎへと変わっていく…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 タイトルに「胸」が付いてるだけに、その話。肉体的な意味の胸。感情的な意味の胸。2つの話で母娘が折り重なり合い、熱さと切なさを感じる物語。病気を扱ったり、ひとり親家庭だったりと物語の事態は深刻である。だが、子供と大人の関係から改めて2人の大人としての関係で親子になることや、今後の生き方を前向きに結論付けた締めは温かさに満ちている。

 「病気モノ」および「ひとり親家庭モノ」ということで概要的には暗くてシリアスな物語を思わせるが、そのような雰囲気になることはない。恋の始まりを予感させる展開や友人関係も主軸となっており、温かい人情に包まれた物語となっている。病気モノとひとり親家庭モノは常々、「不幸な物語」というかレッテルを貼られがちである。それを払拭し、家族の誰かが病気になったことや両親の片方が居ないまま過ごした家族のありのままを見たような気がする。

 何より本作はセリフの言葉のチョイスが面白い。笑えるところはクスクス笑い、熱さと切なさを表すところは胸に突き刺さる。しかも、元ネタが舞台劇ということもあり、長回しの掛け合いで楽しむことが出来る。

 タイトルに「あつい」が付いてる通り、劇中の舞台が「暑さ」を感じる時期にもなっている点も抜かりない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個