この記事は2023年10月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)
「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。
各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍
- 公開日(日本の劇場で公開された日)
- ジャンル
- 監督
- キャスト
- 概要
- あらすじ
- 感想
加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。
- 脚本・ストーリー
- 演出・映像
- 登場人物・演技
- 設定・世界観
⭐は最大で5つです。
それでは、早速いきましょう💨
- アンダーカレント
- アナログ
- 白鍵と黒鍵の間に
- バレリーナ
- Fair Play フェアプレー
- キリエのうた
- ゆとりですがなにか インターナショナル
- 月
- オペレーション・フォーチュン
- 死霊館のシスター 呪いの秘密
- ザ・カンファレンス
- ザ・クリエイター 創造者
- お前の罪を自白しろ
- 愛にイナズマ
- ドミノ
- ペイン・ハスラーズ
アンダーカレント
公 開 日 :10月6日
ジャンル:ドラマ
監 督 :今泉力哉
キャスト:真木よう子、井浦新、中村久美、江口のりこ、康すおん、内田理央、永山瑛太、リリー・フランキー 他
概要
2005年に発行されるや「まるで1本の映画のようだ!」と、国内外から熱狂的な支持を得た豊田徹也さんの伝説の漫画が待望の実写映画化。『愛がなんだ』・『街の上で』・『ちひろさん』などを手掛けた稀代の映画監督・今泉力哉さんのもと、真木よう子さんや井浦新さんといった豪華キャストが集い、音楽はカンヌ国際映画祭最高賞受賞作『万引き家族』の細野晴臣さんが担当する。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
銭湯の主人・かなえは、夫・悟が突然と失踪してショックのあまり銭湯を休業する。夫が帰らぬまま、なんとか銭湯の営業を再開した矢先、堀と名乗る謎の男が銭湯組合を通じて現れ、「働きたい」と申し出てる。かなえは了承し、堀は住み込みで働くことになり、かなえと堀の不思議な共同生活が始まる。同時期、かなえは友人の菅野に紹介された胡散臭い探偵・山崎に悟の行方を掴むよう調査の依頼をする。山崎の調査が進むにつれて夫の知られざる事実が次々と発覚し、悟・かなえ、そして堀の3人が心の底に沈めていた想いが、徐々に浮かび上がってくる。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
哲学的かつ普遍的で人生学のような作品。誰しも嘘をつくことがある。誰しも真実を伝えないことがある。そうして、築いた嘘と欠けた真実で形成されたものが事実と見なされ、その事実モドキを誰もが真偽を確かめずに受け止めている。どれぐらい嘘を築くか。どれぐらい真実を隠すか。それらの匙加減で形成されたものを作り手側と受け手側の双方の立場で人間は思い悩んでいる。言葉にすると普遍的なことだけど、「そういえば人間って、そうだよな。そうやって生きているんだよな」と改めて思わせる。それ故、本作の最後に発する振り絞った台詞は、当事者でない我々もジーンとさせる。
今泉監督作らしく、ワンカットで長回しの会話シーンが本作でも健在。言葉のキャッチボールに本物感が帯びている。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計18個
アナログ
公 開 日 :10月6日
ジャンル:ラブ・ロマンス
監 督 :タカハタ秀太
キャスト:二宮和也、波瑠、桐谷健太、浜野謙太、板谷由夏、高橋惠子、リリー・フランキー 他
概要
ビートたけしさんが書き上げた同名の恋愛小説の実写映画化。主演を二宮和也さん、ヒロインを波瑠さんが演じる。
あらすじ
手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの悟。携帯を持たない謎めいた女性、みゆき。2人は喫茶店「ピアノ」で偶然出会い、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、同じ場所で会う」と約束する。それから2人は出会いを重ねて交流を深めていくが、思わぬ事態を辿ることになる。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
着実に距離が縮まっていく男女2人が奥ゆかしく微笑ましい。そして、幸福に包まれた日常に走る衝撃と、初志貫徹の純愛。「アナログ」のタイトルの通り、文明の利器を本作では極力、取り払っている。それ故、人間が古来から持ち続け、これからも失うこともない「感情」というものを浮き彫りにしている。文明の発展が進み、ますますデジタル化していく中、決してデジタル化して味わう事が出来ないのは「人間の感情」であることを知らしめる。AI技術が各業界に波及し、デジタルに囲まれる前に本作を世に送り出したのは凄く意義がある。
二宮和也さんの演技が素晴らしい。ヘタレな若者キャラまたは何かに葛藤して邦画の約束事で叫ぶ若者キャラが多いキャリアだったが、本作では中堅社員として年齢相応。更には模型と描画の制作に夜通しで熱中したり、波瑠さん演じる女性に対して一緒の空間を過ごしたいだけの純愛は少年のようである。大人と少年を併存させた人物像を形成していた。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計16個
白鍵と黒鍵の間に
公 開 日 :10月6日
ジャンル:ドラマ
監 督 :冨永昌敬
キャスト:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、クリスタル・ケイ、松丸契、川瀬陽太、佐野史郎、松尾貴史、高橋和也 他
概要
現役のジャズミュージシャンで、エッセイストとしても才能を発揮する南博さんのエッセイである『白鍵と黒鍵の間にージャズピアニスト・エレジー銀座編』の実写映画化。原作は、南博さんがピアニストとしてキャバレーや高級クラブを渡り歩いた青春の日々を綴った回想録だが、共同脚本を手掛けた冨永昌敬さんと高橋知由さんが大胆にアレンジ。南博さんがモデルの主人公を”南”と”博”という2人の人物に分けて、3年におよぶタイムラインがメビウスの輪のように繋がる一夜へと誘い、観る者を翻弄する作品となった。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
昭和63年の年の瀬。夜の街・銀座では、ジャズピアニスト志望の博が場末のキャバレーでピアノを弾いていた。博はふらりと現れた謎の男にリクエストされて、”あの曲”こと「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏するが、その曲が大きな災いを招くとは知る由もなかった。この街で”あの曲”をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長だけであり、演奏を許されているのは会長お気に入りの敏腕ピアニストである南だけだった。博と南の運命はもつれ合い、先輩ピアニストの千香子、銀座のクラブバンドを仕切るバンマス。三木、アメリカ人のジャズ・シンガーのリサ、サックス奏者のK助を巻き込みながら、予測不可能な一夜を迎えることに…。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
池松壮亮さんが駆け出しで前のめりな博と確かな腕前にもたれて惰性で弾き続ける南の二役を演じ分け、池松壮亮さん同士で追いかけ合いをしてるような不思議な空間は劇映画の妙である。さらには、常に心地よいジャズの音色が流れ、クリスタル・ケイさんの歌声が挿入されていく劇中世界は耳を気持ちよくさせる。まるで、良い音楽を流してくれる店内に入ったかのようになる。そんな世界観の中、「お前の現在も過去も未来も俺と同じ」と言わんばかりに、夢を追う者が辿る足跡の共通点が夢を追うことの普遍性となって感覚的に見えてくる。夢を追うことは予期せぬ体験の連続である。
何よりもピアノを弾く池松さんの手つきが軽やか。ピアニストの役とはいえ、ここまでやるのか…。
物語が抽象的かつ感覚的な雰囲気であり、明確な展開を提示せずに駆け抜けていくため、「一体、何を見せられているのだろう?何処に楽しみやテーマ性を見つければ良いのだろう?」となるので本作は賛否が分かれそう。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計14個
バレリーナ
公 開 日 :10月6日
ジャンル:アクション、ドラマ
監 督 :イ・チョンヒョン
キャスト:チョン・ジョンソ、キム・ジフン、パク・ユリム 他
概要
特になし。
あらすじ
戦闘スキルに秀でた元警護員のオクジュ。ある日、親友のミニに呼ばれて彼女の自宅を訪ねてみると、自殺を図って死んでいた。部屋にあったミニの置手紙を読んでみると、自殺に追い込んだ人物がいると判明。オクジュは親友の無念を晴らすために復讐へ赴く。
感想
テクノな音楽が流れ、ライトが照らされるロケーションの中で、多人数で次々と目の前に現れる男たちを蹴散らしていく光景は『ジョン・ウィック』的。女性を性的なモノとして扱う男たちに制裁を与える、やり過ぎなカウンターは『プロミシング・ヤング・ウーマン』的。なので、本作はキリング・アクション映画でもあり、フェミニズム映画でもある。
親友という愛情を向けた者の死が原因で復讐を実行する流れは、愛犬の死で復讐を実行する『ジョン・ウィック』と同様である。だが本作は、愛情を向けた者の死をアクションするためのトリガーとしての役割だけでなく、回想シーンを用いてドラマとして描いている。しかし、親友との思い出を数個並べただけで形式を整えただけの出来栄えであり、全く心が動かされない。それ故、主人公が感じる苛立ちに全く共感が出来ず、アクションにドラマがライドしてない。『ジョン・ウィック』と違ってドラマを描いた以上、そのドラマをアクションに乗せる必要があるし、ドラマは際立たせる必要がある。だが、ドラマが形式的になってしまった以上、物語は薄いし、とりあえずアクションしてるだけの作品になってしまっている。少なくとも、親友がどんな目に遭ったのかを直接的に描写すれば観客側にフラストレーションを溜められたはず。
アクションは悪くない。主人公の鋭い体捌きと射撃の腕前をキレ味鋭く映している。1対1ではカメラがグイッグイッとスライドし、多人数戦では長回しで魅せてくれる。だが、前述の通り、ドラマをしっかり語って尺を割く以上、約90分の尺では打席が少ない。『ジョン・ウィック』がシリーズ通して質量ともに進化してきた現状において、本作の必要性は薄い。
総論すると、女性によるフェミニズムのドラマも重視した『ジョン・ウィック』。だが、ドラマの中身は薄く、ドラマに割いた尺でアクションは少なく、コレと言ったストロング・ポイントがない。アクションとドラマの両立を上手く果たし切れず、采配ミスをしてしまった作品。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐
星の総数 :計11個
Fair Play フェアプレー
公 開 日 :10月6日
ジャンル:ドラマ
監 督 :クロエ・ドモント
キャスト:フィービー・ディネバー、オールデン・エアエンライク、エディ・マーサン 他
概要
特になし。
あらすじ
競争が過酷な業界であるヘッジファンドの会社で働くエミリーとルーク。2人は同僚であると同時に、「社内の人間と恋愛にやってはならない」という会社の方針を破って秘密裏に付き合っていた。そして、とうとう2人は結婚を決意。幸せの絶頂にいる中、更なる吉報が入る。それは1人の上役が解雇されたことでポストが空き、後任にはルークが就くと噂話が流れてきたのだった。結婚と昇進。2つの祝い事で浮かれるエミリーとルーク。だが昇進したのはルークではなく、エミリーだった。社内で2人の関係は「同僚」から「部下と上司」へ変わった。そして、今まで同僚という同じ立場だからこそ保たれていた均衡状態が崩れ、やがては恋人関係での均衡状態さえも崩壊の一途を辿ることになる…。
感想
ストーリー展開の盛り上げが上手い。社内恋愛禁止という設定もあり、恋人関係および職場関係の軋みが水面下で始まり、段々と水面上に顔を出してビッグウェーブとなる。後半になればなるほど各々の思いの平行線が長くも太くもなり、対立構造が形を成してくる。その構造には「男性のプライド問題」・「女性による男性差別」・「有能と無能の問題」といった新手または古来からの社会問題が盛り込まれ、観る者に反面教師として提示してくる。女性も昇進できる時制となり、性別の垣根を越えてフェアな世の中になった。だが同時に、その反動で新たなアンフェアが生まれた。「フェアプレー」という本作の皮肉混じりなタイトルを噛み締め、これからを生きる現代人への自戒を促す作品。
本作では、女性の地位向上に伴う反動で起きる問題が以下の通り描写されている。
まず、男性のプライド問題。本作では恋人の男女のうち、「女性」が昇進したことによって関係性が崩れている。劇中でも語っているが、この昇進が「男性」だったら関係性を巡る問題が起きない。男女平等や女性の地位向上が謳われて久しい時制だが、結局のところ、女性が昇進することでプライドにヒビが入ったと勝手に勘違いする男性が何処の職場でも存在し、男性側が女性の社会進出を受け止め切れないことが新たな問題なのである。これに関しては、男性側がプライドを放棄するしかなく、そうすれば本作のような悲劇は起こらなかったと見て、本作を反面教師として位置付けるのが妥当だと思う。
続いて、女性による男性差別問題。これに関しては男性優位による女性差別からの物理的な逆差別と言ってもいい。男女平等と女性の地位向上が謳われる前(今もだが)は、職場での立場において男性が上で女性が下という構造は問題視されなかった。恋人間の立ち位置でも男性が上で立女性が下でも同様に問題視されなかった。だが、その構造が崩れたことにより、立場を逆転させた女性が男性に見切りを付けて切り捨てることが生まれてしまった。よくあるパターンとして、女性がパートナー男性の地位や収入を超えた時に別れることを視野に入れてしまう現象である。この新たな男性差別が始まることにより、厄介な事は前述にある「男性のプライド問題」を呼び起こすことである。女性の見下しが男性のプライドを刺激してしまう。または男性優位から女性優位への悪い逆転が起こる。なので、男女平等や女性の地位向上とはいえ、何をやってもいいわけではない。本作の終盤あたりでも、それがよく出てる。女性が強く出ればいい話ではない。その点も本作は反面教師である。
最後に、有能と無能の問題。本作では男女間だけでなく、同性間でも起こる問題も本作に含まれている。それは「有能と無能」の問題であり、無能な者が有能な者に対して働く行為が描写されている。本作では恋人同士の2人のうち、女性が昇進して男性が平社員止まりということで、女性が有能で男性が無能としての位置付けである。まず、シンプルに考えて無能な者は有能な者に対して仕事に直結するアドバイスをすることはない。では何をするのかと言うと、仕事以外のアドバイスをするのである。仕事の力量が劣っている以上、仕事以外でなんとか優勢を保とうするのである。あとは、シンプルに無能な者は実力に結び付かない努力を始める。そして、その勘違いの努力で得たものをアドバイスしてしまうのである。そういった点においても本作は無能な者の思考をリアルに映してしており、その点でも反面教師として機能している。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計18個
キリエのうた
公 開 日 :10月13日
ジャンル:ドラマ
監 督 :岩井俊二
キャスト:アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すず、村上虹郎、北村有起哉 他
概要
『スワロウテイル』・『リリイ・シュシュのすべて』に続く、岩井俊二監督と音楽家・小林武史さんのコンビによる最新作。
主演は、伝説的ガールズ・グループ「BiSH」に在籍し、現在はソロでアーティスト活動を続けるアイナ・ジ・エンドさんであり、本作で映画初主演を果たす。そして、「Six TONEX」の松村北斗さん、黒木華さん、広瀬すずさんといった錚々たるメンバーが脇を固める。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
歌うことでしか声が出せない路上ミュージシャンのキリエ。過去を捨て、名前を変え、キリエのマネージャーを買って出る謎めいた女性のイッコ。姿を消したフィアンセを捜し続ける青年・夏彦。傷ついた人々に寄り添う教師のフミ。石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、出逢いと別れを繰り返す4人の13年にも及ぶ壮大な旅路が語られる。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
物語はシンプルであり、目を引くほどの色はない。だが、アイナ・ジ・エンドさん演じる主人公の幼少期・高校時代・路上ミュージシャンの現在といった3つの時系列に分けられており、それらをバラバラに見せることで登場人物たちの人物像に彩りを与えている。最新の時系列で「登場人物の過去に何があったのか?」と疑問を抱かせた後、過去の時系列に戻って過去を語ることにより、登場人物の人物像というよりも感情と人生が流れ込んで観る者の心を掴ませる。しかも、アイナ・ジ・エンドさんはもちろんのこと、脇を固める松村北斗さん・広瀬すずさん・黒木華さんの名演が登場人物に息を吹き込み、愛着が沸き立って登場人物を愛しく思えてしまう。そのため、3時間の長尺でも悠々と本作に対する興味を保ち、登場人物の行く先を見届けたくなる。
何と言っても本作を牽引してるのはアイナ・ジ・エンドさんの歌声。昭和から令和の名曲カバーや新曲を熱唱し、耳から体をつたって身震いを起こさせる。ただ逆に、アイナ・ジ・エンドさんの歌声が良すぎて、歌わないシーンが長引くと「アイナ・ロス」が発生。しかも、物語がシンプル過ぎる故に歌がないと退屈を生じてしまうことが度々あった。だが逆を言えば、それだけアイナ・ジ・エンドさんの歌声が素晴らしいということである。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計15個
ゆとりですがなにか インターナショナル
公 開 日 :10月13日
ジャンル:コメディ
監 督 :水田伸生
キャスト:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、仲野太賀、吉岡里帆、島崎遥香、木南晴夏、吉田鋼太郎 他
概要
2016年に日本テレビ系列で放送されて大きな話題を呼んだドラマ『ゆとりですがなにか』が、心にゆとりなんて忘れつつある令和の時代に満を持して映画化。日本を代表する岡田将生さん、松坂桃李さん、柳楽優弥さんの超豪華トリオと、水田伸生さん、宮藤官九郎さんといった最強クリエイター陣が再び集結し、昭和・平成・令和…バブル・団塊ジュニア・ミレニアル・さとり・Z…あらゆる世代、そして世界に贈る新たなコメディ映画を爆誕させる。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
野心がない。競争意識がない。協調性がない。そう揶揄されてきた、ゆとり世代。そんな彼らも30代半ばを迎え、それぞれ人生の岐路に立たされていた。夫婦仲はイマイチ、家業の酒屋も契約打ち切り寸前の坂間正和。いまだに女性経験ゼロの小学校教師・山路一豊。事業に失敗し、中国から帰ってきたフリーター・道上まりぶ。そんな彼らの前に、Z世代の登場・働き方改革・コンプライアンス・多様性・グローバル化といった想像を超える新時代の波が押し寄せ、3人の人生は予想外の展開を迎える。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
TVドラマ未見。登場人物の説明が一切ないため、人間関係の把握に時間を要した。特に岡田将生さん演じる主人公の家族が多すぎて、夫婦関係や親子関係に困惑した。なので、TVドラマ未見の方はスタートで置いてけぼりを喰らう可能性がある。とはいえ、物語が進めば大体の人間関係は掴める。それに、正確に把握しなくとも物語を十分に楽しめる。
タイトルに「ゆとり」が付いてるわりには「ゆとり世代」に関する事柄が特段、目立っているわけではない。とはいえ、豪華キャスト陣の掛け合いが、とにかく面白いの一言に尽きる。流れゆくセリフの合間に挟まるユーモアが永久にクスクスと笑わせてくれる。また、長回しのシーンが多く、数分の間で各登場人物の喜怒哀楽が切り替わる掛け合いは舞台劇を観てるかのような楽しさがある。主演3人に関して、岡田将生さんと松坂桃李さんは情けないキャラ、柳楽優弥さんは奇人キャラが板についてる。
物語の中身について、TVドラマの映画化にしては珍しくハッキリとした起承転結がない。終始、何かが悪目立ちすることなく、緩やかなペースで脱力系な笑いを届け、登場人物たちの微妙な日常の変化が楽しめる。あと、ゆとり世代ということで、平成元年付近で生まれた方には馴染みのあるワードが飛び交い、ゆとり世代にとっては少しだけノスタルジーを感じ取る事が出来る。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計13個
月
公 開 日 :10月13日
ジャンル:ドラマ
監 督 :石田裕也
キャスト:宮沢りえ、磯村勇斗、板谷由夏、鶴見辰吾、原日出子、二階堂ふみ、オダギリジョー 他
概要
実際の障害者殺傷事件を題材に、小説家の辺見庸さんが執筆した同名小説の実写映画化。
本作は『新聞記者』や『空白』を手掛けてきた「スターサンズ」の故・河村光庸さんが最も挑戦したかった作品だった。オファーを受けた石井裕也監督は、実際に起きた障害者殺傷事件ということもあり、並々ならぬ覚悟を持って挑戦。出演者に宮沢りえさん、磯村勇斗さん、二階堂ふみさん、オダギリジョーさんといった名優たちを揃え、力作を誕生させた。だが同時に本作は、社会と個人が”見て見ぬふり”をしてきた世間の暗部を突き付け、鑑賞するにも覚悟を要する衝撃作となった。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
アニメづくりの夫・昌平と暮らす元作家の堂島洋子は、深い森の奥にある重度障害者施設の非正規職員として働き始める。洋子は、その職場で、作家志望で自身が執筆する小説の題材にするために働く陽子や絵を描くことが上手な”さとくん”と呼ばれる同僚たちと一緒に入所者の世話をしていく。だが同時に、他の職員たちが入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにして憤りを感じていた。それは、さとくんも一緒だった。しかし、彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて凄惨な事件を呼び起こす。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
暗闇の夜道を照らす月光の如く、多くの人々が見ず・知らず・聞かず・言わず・伝えずに蓋をしてきた障害者施設に沈澱する暗部にスポットライトを照射し、人間の暗部を明るみにする衝撃作。障害者のぞんざいな扱い。削られる精神。命の選別。誰もが触れたくない、否、誰もが触れようとせずに汚いもの扱いにしてる光景ばかりが目に飛び込む映像体験を喰らわせる。そして、障害者施設が隠蔽する暗部、不平等で生まれ落ちる人間の暗部を観る者の脳へ植え付けて本作が提示する社会問題を考えさせられる。いや、考えさせられるというより「自分は何が出来るか?」と意志を動かす強制力がある。誰もが触れたくない問題を提示してる以上、どのような行動を起こすべきかを弾き出すのは余りにも難し過ぎる。まずは、障害者の分野に詳しい方から見解や対策を頂戴したいところである。それぐらい難度が高く、安易に答えを出せるものではない。本作は巨大なテーマを集約して掲げた力作である。
脚本が凄まじい。本作で伝えたい社会と人間の暗部をキッチリと登場人物のセリフに落とし込んで言語化している。若干、説教くさかったり、話し言葉から離れ過ぎたり、伝えたいことの持って行き方が展開的に不自然だったりと強引な箇所が所々あるけど、観る者の脳に本作で描く社会問題を植え付けて刺激させる。あまりの言語化の高さに脚本が欲しいor原作小説を読みたくなるレベルである。文字媒体として手元に置く価値があるほど、本作のセリフは社会問題を要約している。
主要キャスト4名が素晴らしい。夫婦役を務めた宮沢りえさんとオダギリジョーさんの好演。闇を抱えた職員を演じた磯村勇斗さんと二階堂ふみさんの怪演。主人公は宮沢りえさんだが、誰もが主役級であり、本作で伝えたいことを体現している。宮沢りえさん演じる主人公による命の生死を決める葛藤と、命の選別を行おうとする者と自身が合わせ鏡になる葛藤。磯村勇斗さん演じる犯人の経過から見て取れる、置かれた環境の影響力。二階堂ふみさん演じる職員の憤慨から見て取れる、人生ガチャ。全員から社会に根付く暗部を脳に植え付けられて刺激される。また本作では「誰もが真実を求めようとしない」をテーマに掲げているのに対して、主要キャスト4人が作家・作家志望者・アニメーター・絵描きといった虚構を作り上げる者たちである。よって、「誰もが真実を求めようとしない」が一層と強調されている。
本作は全編通して、意志表示に関する事が多い物語である。主人公夫婦に訪れる、命の生死を選択する意志。犯人が最後まで犯行を完遂する意志。犯人による殺す殺さないの基準が意志の有無。それらの意志を見せ、観る者に今後の意志表示を促している。
虫・糞・食べたご飯の残骸といった不快に感じるものを見せる描写を合間に挟み、本作で描く社会問題について「誰もが目を背けたがるもの」ということを強調している。抜かりない。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計19個
オペレーション・フォーチュン
公 開 日 :10月13日
ジャンル:アクション
監 督 :ガイ・リッチー
キャスト:ジェイソン・ステイサム、オーブリー・プラザ、バグジー・マローン、ジョシュ・ハートネット、ケイリー・エルヴィス、ヒュー・グラント 他
概要
アクション俳優ジェイソン・ステイサムが『キャッシュトラック』に続いてガイ・リッチーとタッグを組んで製作されたスパイ・アクション。
あらすじ
英国諜報局MI6御用達の敏腕エージェントことオーソン・フォーチュン。休暇中の身にも関わらず、新たなミッションが下される。その内容は、100億ドルで闇取引されている”ハンドル”と呼ばれるブツの追跡および回収だった。フォーチュンはMI6のコーディネーター・ネイサン、クセ強の天才ハッカー・サラ、新米スナイパーのJJというメンツを集めて足跡チームを編成して行動を開始する。途中、能天気なハリウッドスターのダニーを無理矢理に任務へ巻き込み、ハンドルに関係する者たちへ接近していく。そして、ハンドルに隠された巨大な陰謀が明らかになっていく。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
プチ旅行気分にさせてくれる豪勢なロケ地の数々。各地で実行される軽妙なブリーフィングと潜入のシークエンス。ステイサム兄貴による豪腕かつド派手なアクション。そして、何よりガイ・リッチー監督作として、キャラクターたちがコミカルでクセ者揃い。その場に合わせたノリや各々のキャラクターが持つ独自の価値観が見えてくるユーモラスなセリフの掛け合いにクスクス笑える。人によってはスベッているように見えるが、演じている俳優陣が楽しそうだから軽快。世界の命運を左右する大事(おおごと)なのに、お笑いエンタメと化している。
直近のガイ・リッチー監督作と比較すると、良くも悪くも"見やすい"。キャラクターがクセ者揃いと言っても前々作の『ジェントルメン』程ではない。(あの作品は全員がワル故に何でも出来るから、あまり比較にならないのだが。)『ジェントルメン』のようにぶっ飛んだ行動や脇道に脱線する面白さは少ない。その分、キャラクターの言動がストーリーにほぼ直結してサクサク進んでくれる。また、『ジェントルメン』や前作の『キャッシュトラック』で強力な機能となっていた「時系列の操作による後出しジャンケン」が鳴りを潜めた。時系列を前後させて肝心な箇所を隠したり後出ししてゴチャゴチャすることによって、敢えて生まれていた"見づらい"面白さは本作には、ほぼ皆無。その分、リアルタイムで進行するストーリーを追えばいいから見やすい。ガイ・リッチー監督作のクセの強さが苦手な方は見やすいと思う。逆に「最近の作品と構成は同じだろう」と期待するリッチー・ファンは肩透かしを喰らう可能性がある。とはいえ、クオリティは及第点。俗に言う"丁度良い面白さ"な作品。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計14個
死霊館のシスター 呪いの秘密
公 開 日 :10月13日
ジャンル:ホラー
監 督 :マイケル・チャベス
キャスト:タイッサ・ファーミガ、ジョナス・ブロケ、ストーム・リード、アナ・ポップルウェル、ケイトリン・ローズ・ダウニー、ボニー・アーロンズ 他
概要
『死霊館』シリーズおよび『アナベル』シリーズから連なる「死霊館のユニバース」の最新作にして、2018年に公開された『死霊館のシスター』のその後を描いた続編。ユニバース10周年の節目として、シリーズの生みの親であり第1作目の『死霊館』と第2作目の『死霊館 エンフィールド事件』を監督を務めたジェームズ・ワンが製作を手掛ける。メガホンを取るのは「死霊館ユニバース」にて『ラ・ヨローナ~泣く女~』と『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』でも監督を務めたマイケル・チャベス。前作で主人公アイリーンを演じたタイッサ・ファーミガと仲間のモリースを演じたジョナス・ブロケが続投。さらに、『死霊館 エンフィールド事件』から代々、悪魔ヴァラクを演じてきたボニー・アーロンズもヴァラク役で出演する。
あらすじ
1956年、フランスで起こった神父殺人事件をきっかけに、世界で悪が蔓延した。ある特殊な能力を持つシスター・アイリーンは教会の要請を受け、悪の根本となっている事件の調査をすることになった。人々を悪から救うため、命の危険をかえりみずに魔の手が忍び寄る現地へ向かう。そして、ついに悪の元凶である悪魔”シスター、ヴァラク”と対峙する。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
(体感的に)数分に1度、劇中人物と観る者に恐怖をジャンプスケアに乗せてダイレクト・アタック。劇中、視覚的には暗闇、聴覚的には静寂に包まれており、薄暗さとほぼ無音の状況下で、いつどのタイミングで襲ってくるか分からない恐怖演出は一流のお化け屋敷を伝い歩きするのと同等である。また、悪魔との直接的な対峙にはボルテージを上昇させる派手な音と襲撃がやり過ぎなレベルでバンバン飛び交う。『死霊館』シリーズの生みの親であるジェームズ・ワンが監督を務めた時の作品のような楽しさがカムバックしてきた。 このように面白さを並ばせると良い事づくしに思える本作だが、逆にマイナスの側面も生み出しており、諸刃の剣となっている。
劇中、9割ぐらいのシーンが薄暗くて、見づらい時がある。映画館で観れば、照明を落としたシアター内の暗さとマッチして、暗い事による恐怖の相乗効果を出しているが、悪魔が襲ってきた時や不自然に物が動いた時に何が起こったのか見えないことが度々ある。ジャンプスケアの音は聴こえるのに、暗さで隠れて「え!何々っ!?」と恐怖が疑問形になる(笑)あと、暗さが寝室並みであり、人によっては眠気を誘われる。
序盤から終盤に行き着くまでのジャンプスケアがワンパターン。「ほぼ無音レベルの沈黙が高まる→身構える→「いつ来るんだ…いつ来るんだ…」という緊張が溜まった時に、ワーッ!」しかやってない。好きな人にとっては良いかもしれないが、中盤ぐらいからは食傷気味になる。「いや、いつまで、このパターンするんねん。ワーッ」と飽き飽きしながら驚くことになる(笑)ストーリーがシンプルだからか、演出で色を付けたかったのかと思う。とはいえ、ワンパターンで固め過ぎ(笑)
前日譚に当たる『死霊館のシスター』を観ずに本作から観ても楽しめる。悪魔の調査に向かうといったシンプルな物語であるし、『死霊館のシスター』で起きた事件とその結果を簡潔に教えてくれるし、そもそも『死霊館のシスター』自体が複雑な物語ではない。そもそも、『死霊館』シリーズ自体、何処から観始めても基本的にオッケーであるし。ただ、本作と前日譚に登場したアイリーンとモリースの関係性は、前日譚を観た方が深く理解できる。あと、アイリーンとモリースの良さは、ベタに恋仲に落とすことなく、共に悪魔と闘った同志という間柄からズレないのが良き計らいだと思う。
総論すると、暗闇と無音で恐怖の雰囲気を作り、いつ襲撃されるか分からない緊張感で身構えさせた上で、突如としてジャンプスケアが襲う、お化け屋敷型ホラー。とはいえ、暗闇による視界の悪さとワンパターンなジャンプスケアを生み出しており、良さが悪さにもなった出来栄えである。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計14個
ザ・カンファレンス
公 開 日 :10月13日
ジャンル:ホラー
監 督 :パトリック・エークルンド
キャスト:カティア・ウィンター、アダム・ルンドゲレン、エバ・メランデル 他
概要
Netflixで配信されたスウェーデン発のスラッシャー・ホラー。
あらすじ
舞台は街外れに位置するコテージ。自治体職員たちによるプロジェクト・チームが「能力開発研修」と称して、泊まり込みでミーティングやレクレーションに取り組んでいた。彼等は外部から見た限りではチーム面に問題なさそうだが、内部では人間関係に亀裂が生じていた。仕事の本質を見抜けない者が居たり、自己の利益だけを考えてチーム全体の利益を考えなかったりする者が居たりと水面下で対立しており、研修中でも衝突が起きていた。そんな矢先、彼等のコテージに正体不明の殺人鬼が乱入してくる。
感想
能力とは何か、チームワークとは何かを示す教訓的な作品。能力とは本質を見抜くことであり、チームワークとは皆の利益を考えることである。殺人鬼が襲撃する前の前半にて自治体職員たちは研修を行うのだが、その場で本質を見抜けるかや全体の利益を考えられるかで人物像がグループ分けされる。それが殺人鬼の襲撃時において生死の分かれ目となっている。実際の組織において、本質を見抜けない者や自己の利益に陥る者は、それをやっても基本的に命を獲られない以上、野放しにされて横行が続く。だが、生死を分ける極限状態になったら話は別。それを分からせる為に本作はスラッシャー・ホラーとして殺人鬼を登場させて極限状態を敷き、本質を見抜けなかったり自己の利益だけを考えたりすることは「絶対にダメだ」という意を込めて、それに当てはまった者たちを血祭りにして浄化している。ただ、それだけが死の条件ではなく、他人の為に命を張ってしまうことも死ぬという現実も見せている。また、イカダ作りバトルにおいて、自己の利益だけを求める者は、どうしても競争に強くて表向きには結果を出してしまう皮肉が効いてる。総じて本作は、本質とチームワークを考えない者たちを提示して成敗している。
殺人鬼の襲撃シーンがユーモアに富んでいる。長回しでアクション映画風にしたりマッチカットで場面を連続で切り替えたりと殺人大喜利だけでなく演出面がバラエティ豊かである。その上で、しっかりと痛覚を刺激させる。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計14個
ザ・クリエイター 創造者
公 開 日 :10月20日
ジャンル:SF
監 督 :ギャレス・エドワーズ
キャスト:ジョン・デビッド・ワシントン、ジェンマ・チャン、渡辺謙、スタージル・シンプソン、マデリン・ユナ・ボイルズ、アリソン・ジャネイ 他
概要
驚異のビジュアル・世界観で描かれるSF大作。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で監督を務めたギャレス・エドワーズが監督および脚本を務める。
あらすじ
舞台はAIの技術が進歩した2060年代。人間を守るために作られたはずのAIが核を爆発させた。その爆発により世界はAI撲滅派とAI共存派に分かれ、戦争が勃発していた。AI撲滅派国家の元特殊部隊のジョシュアは人類を滅ぼす兵器を創り出したAIの創造主「クリエイター」の潜伏先を見つけて暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女アルフィーだった。ジョシュアは”ある理由”からアルフィーを守り抜くと誓うが、やがて衝撃の事実に辿り着く。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
本作で1番目を引くのは鮮やかなVFXの手際。AI役を演じたキャストにメカが馴染み、耳の代わりにある野球ボールぐらいの空洞から向こうの景色が見える。また、舞台が2060~2070年代と近未来であっても2020年代と街並みはほぼ変わらない中、明らかに見た目が金属性であるAIロボであっても風景に溶け込んでいる。それぐらいビジュアルの匙加減が良き塩梅。SF大作になるとグリーンバックや地球にあるとは思えない幻想的な場所がメインとなり撮影の名残りが見えないが、本作は2020年代とあまり変わらない風景の中にAIが存在して「ロケ地×VFX」として名残りが見えてくる。ロケ地に馴染みを感じやすく、親近感が沸いてくる。
本作のVFXで1番スケールを与えるのは宇宙に浮かぶアメリカ軍の移動基地ノマド。横に伸びたシャープなデザインから地表を青い光を照らし、狙いを定めて爆撃するシークエンスはSF好きの心を盛大にくすぐる。
物語としては、感情を持ったAIを理解して共存することやAIを戦争で乱用するといった、将来におけるAI社会への願望を観る者に訴えている。偶然にも同年にNetflixで配信開始となったアニメ『プルートウ』のメッセージ性に近い。流石に『プルートウ』の方が尺がある分、内容の濃さは劣っている。
物語の導入がイマイチ。本作の世界観・登場人物・専門用語の説明にインパクトがない。そのため、上映開始から5分ぐらいは、主人公を含む登場人物がどういった立場で何をしているのか全容を把握できないまま次々と物語が進行してる感がある。視覚から得たものを脳内で噛み砕いて整理するといった手間がかかる。ここで整理できないと置いてけぼりを喰らい、物語にライドすることが出来なくなる。そう考えると、SF大作の『スター・ウォーズ』が最初にあらすじを紹介してるのは最強の一手だと改めて思う。
そして、物語の動きもイマイチ。表面的な出来事しかないため登場人物への感情移入が蓄積されず、感動的な演出を施しても観る側の心を動かすには力不足。導入部分は説明不足が目立ったが、それ以降は逆に説明的なセリフが多かった印象がある。視覚に映る以上に情報を与えてくれるセリフが少なかった。もはや、セリフを消してサイレント映画にして、画の力を押し出したら感動が深まるのではと勘繰ってしまった。主人公夫婦による愛の再確認、主人公とAI少女による擬似親子、AIとの共存と見せたいことは分かるのだが、いかんせん表面上の形にしか留まっておらず、第三者である観客の心を動かすには力が足りなかった。
総論すると、人間やロケ地にフィットしたVFXの鮮やかな手際は申し分ないが、物語は観客の心を動かすにはパワー不足だったSF作品。VFXの出来は万人が拍手するが、物語の密度は人を選ぶ。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計15個
お前の罪を自白しろ
公 開 日 :10月20日
ジャンル:サスペンス
監 督 :水田伸生
キャスト:中島健人、堤真一、池田エライザ、山崎育三郎、中島歩、美波、三浦誠己、尾美としのり、尾野真千子、金田明夫、角野卓三 他
概要
真保裕一さんが執筆した同名小説の実写映画化。
あらすじ
政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司は建築会社を設立するも倒産し、やむなく政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。
そんなある日、一家の長女・麻由美の幼い娘が誘拐された。犯人からの要求は身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫だった。そして、清治郎が抱えてきたものは、決して明かすことが許されない国家を揺るがすほどの罪だった。果たして、晄司はタイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか?
※公式サイトより引用および抜粋
感想
家族の生命と政治家の生命を天秤に掛けたサスペンス(…のはず)。話運びがスピーディで、次から次へとストーリーを転がしてくれる(…はず)。そして物語の先には、国家と民意の摩擦は国と人が生き続ける限り、永遠の課題であることを伝えている(…はず)。だが、本作で監督を務めた水田伸生さんの演出が作品とマッチしていない。そのため、良い点を挙げようとしても印象が弱く、本作の良さやテーマを文章化しても語尾に括弧書きで「…はず」と付けざるを得ない。
なぜ、監督にコメディ色の強い水田監督を起用したのか意図が不明。水田監督にはサスペンスが合ってないと思う。水田監督の過去作で記憶に新しいのは『アイアムまきもと』や『ゆとりですがなにか インターナショナル』。それらの作品では登場人物が2人以上入る距離でカメラを長く回し、俳優陣の喜怒哀楽を切り替える演技をワンカットで収めて抑揚を生み、コメディとして笑いを取る面白さがあった。だが、本作は真面目なサスペンスで俳優陣の喜怒哀楽を瞬時に切り替える必要がない。にも関わらず、ず~っと登場人物が2人以上入る距離をベースとし、サスペンス故に真面目な表情だけを映した同じような絵面をず~っと観続けることになる。真相や犯人に近づいていく物語である以上、展開力はあるのに、同じ絵面ばかりではエッジがないし進展してる感も得られない。せめて、カメラの距離を伸縮して欲しい。また、物語が大きな展開になった時は、俳優陣をドアップしたり少しオーバーな演技をしてケレン味を出してエッジを効かせて欲しい。おそらく、国家絡みのテーマで社会派に仕立て上げようとしたのだけど、ミステリー要素があるためエンタメ性のアップは必須である。
中島健人さんをはじめとする豪華キャスト陣の演技力は申し分ない。そういえば、女性関係がだらしない役がメチャクチャ多い中島歩さんが珍しいことに真面目な兄貴役をやっている(笑)
犯人役の俳優が犯人だと判明する前から思いっきり浮いてる。配役的に犯人であることを自白しているようなもの(笑)
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計12個
愛にイナズマ
公 開 日 :10月27日
ジャンル:コメディ、ドラマ
監 督 :石井裕也
キャスト:松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、仲野太賀、MEGUMI、三浦貴大、増岡徹、佐藤浩市 他
概要
『舟を編む』や『茜色に焼かれる』で監督を務めた石井裕也監督が、アフターコロナの日本を舞台にしてオリジナル脚本で作り上げたコメディ・ドラマ。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
幼い頃から映画監督を夢見ていた折村花子、26歳。ついに念願の監督デビューが決まり、脚本を書き上げて撮影を控えていた。だが、プロデューサーや助監督から若造扱いをされ、折り合いに四苦八苦する毎日を過ごしていた。そんな時、立ち寄ったバーで、空気が読めない風変わりな青年・舘正夫と出会い、2人は意気投合して交流を始める。だが、映画の撮影開始を目前に思わぬ事態が発生する。その事態で起きた悲劇の悔しさをバネにし、花子と正夫は折村家の実態をドキュメンタリー映画として撮影することを企てる。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
石井裕也監督作として同年同月に公開された『月』と同様、誰もが見てないものを映す作品。『月』は社会問題を照射したが、本作は人間そのものを写し取る。対人関係の中で誰もが本音が建前で隠したり、嘘で真実を隠したり、真偽が鬩ぎ合っている。そもそも、相手に何一つ伝えなかったり、自分の価値観の範疇に留めて相手を拒絶したり、対人関係には断絶があることを提示している。だが、その断絶はカメラを使えば取り払えるという嘘のような解決策を示し、本音や真実を伝えることで真の人間関係を構築することの心地よさを観る者に提供してくれる。本作の前半は断絶ばかりの対人関係にフラストレーションが溜まるが、それを後半で雲散霧消させて代わりに確かな満足感を産出する。鑑賞後が非常に気持ちの良い作品である。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計18個
ドミノ
公 開 日 :10月27日
ジャンル:ミステリー
監 督 :ロバート・ロドリゲス
キャスト:ベン・アフレック、アリシー・ブラガ、J・D・パルド、ハラ・フィンリー、ウィリアム・フィクナー 他
概要
ロバート・ロドリゲスが構想に20年も費やしたミステリー。次々に、はまっていくどんでん返しのドミノの連鎖。ラストに待ち受けるのは、想像の3周先を行く驚愕のラスト。必ず、もう1度観たくなる、世紀のアンリアル・エンターテインメント。
※公式サイトより引用および抜粋
あらすじ
オースティン警察の刑事ダニー・ロークは、先日、最愛のひとり娘ミニーが行方不明となり、その精神的なショックからカウンセリングに通っていた。ようやく仕事に復帰すると、相棒のニックスから「とある銀行の貸金庫が強盗から狙われている」というタレコミが入ったことを聞く。ダニーはニックスと共に現場の銀行へ駆けつけて配備に着くと、銀行の外に怪しげな男を見つける。すると、その男が奇妙な行動を取り始めたため、ダニーは追跡を始める。そして、男を追った先に信じ難い出来事に遭遇する。
※公式サイトより引用および抜粋
感想
どんでん返し作品のニューフェイス。鑑賞前に、あらすじを読まない方がいい。
ジャンルが見えない幕開け。現実世界から異空間へとシームレスに接続する映像体験。過剰に連打する場面転換。異空間の中に隠された仕掛け。その先にあるヒューマン・ドラマ。『The Witch魔女』のようにジャンル不明で物語が進み、突如としてジャンルが提示された後はクリストファー・ノーランが作りそうな作品へと姿形を現す。そして、何重にも渡る仕掛けと幾人もの願望が交錯していき、人間たちによる壮大な物語だったと知る事になる。 監督であるロバート・ロドリゲスが構想に20年も費やしたが、ビッシリと密度が詰め込まれた情報過多な作品ではない。94分の尺で直感的に理解したり直感的に疑問を持ったり出来て見やすい。設定や物語を注ぎ込むのではなく、角を取って必要最低限に収めたライトな作品となっている。
本作のキモは場面転換の連打。多少は強引な力技の連続だが、ストーリー進行にスピード感を生んでいる。また、初見では場面転換の連打に「また、これかよ」とツッコミを入れたり、強引な入れ込みに雑味を覚えたりするが、最後まで行くと塩梅に納得する。むしろ、雑に入れていくことで本作の仕掛けとして辻褄が合っている。加えて、場面転換が生み出すスピードが観る者の意識を視覚情報に向けさせ、本作の大仕掛けを想像させないようカモフラージュしている。スピードが成せる業である。そして、ちゃんと演出が面白い。とはいえ、見づらいシーンは見づらい。
本作のMVP俳優は主人公に追われる謎の男を演じたウィリアム・フィクナー。主人公どころか観客にも何者なのか情報を与えず、ひたすらミステリアスであり神出鬼没な登場を繰り返す行動は観客も主人公と一緒に目で追ってしまう。いろいろな意味もあって、本作がウィリアム・フィクナーの新たな代表作になることを願う。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐⭐
星の総数 :計16個
ペイン・ハスラーズ
公 開 日 :10月27日
ジャンル:ドラマ
監 督 :デビッド・イェーツ
キャスト:エミリー・ブラント、クリス・エヴァンス、キャサリン・オハラ、クロエ・コールマン、ブライアン・ダーシー・ジェームズ、アンディ・ガルシア 他
概要
アメリカで実際に起きた製薬会社の不祥事を書き留めたエヴァン・ヒューズの記事『ザ・ペイン・ハスラーズ』と小説『ザ・ハード・セール』を基に映画化したクライム・ドラマ。
あらすじ
夫と離婚し、一人娘を養うためにストリップ・クラブで働く無一文のシングル・マザーのライザ。ある日、製薬会社に勤めるピートがクラブの客人としてライザの前に現れる。話術が得意なライザはピートから気に入られ、製薬会社で働くことになる。一人娘のため、大金を稼いで成り上がるため、ライザは奮闘していく。しかし、やがては会社の邪悪な陰謀に身を投じていくことになる。
感想
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の真面目バージョン的な作品。「薬を売って儲けるぜ!イエーッ!」と景気よく豪遊に金を使うテンションは同様。最盛期に登り詰めてから凋落する下り坂も同様。とはいえ、ガン患者の鎮静剤というセンシティブな題材を扱っている以上、物語の収束は真面目。栄枯盛衰として終わるのではなく、不正に薬を売り付け、金儲けという劇薬の中毒にハマった主人公による自責を描いている。金は人を変えることや人に悲劇をもたらすことを当事者自身の口から反省として伝えることで説得力がある。そして、鎮静剤を求める患者たちの痛みを利用してきた身から転換し、真に他人の痛みを理解して自戒する姿勢は設定の妙が相まって心に響く。病気の症状に対しての処方は薬だが、他者の心に対しての処方は良心なのだと思う。
⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像 :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観 :⭐⭐⭐
星の総数 :計14個