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【まとめ】2024年 日本劇場公開の映画(1月編)

 この記事は2024年1月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2024年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

雪山の絆

Netflix

公 開 日  :1月4日

ジャンル:スリラー、ドラマ

監 督 :J・A・バヨナ

キャスト:エンゾ・ボグリンシク、アグスティン・パルデッラ、マティアス・レカルト、エステバン・ビリャルティ、ディエゴ・ベゲェッツィ 他

 

概要

 1972年、45人の乗客を乗せた飛行機が不慮の事故でアンデス山脈に墜落し、雪山に遭難してしまった人々が生き延びて生還を果たしたという奇跡の実話を映画化したサバイバル・ドラマ。第96回アカデミー賞にて、国際長編映画賞とメイクアップ・ヘアスタイリング賞にノミネートされた。

 

あらすじ

 1972年。ラグビー選手団を乗せた飛行機が不慮の事故でアンデス山脈に墜落。通信機器は全て破壊され、救援を要請する手段がない。救援の飛行機が到着するまで寒さと天候に見舞われる雪山で生き延びることを決心する彼等だったが、機内に残された物資は日を重ねるごとに当然ながら減っていく。寒さ。悪天候。自然の脅威。食糧難。絶望的な状況で彼等は互いを鼓舞しながら救助を待っていたが、やがて神に反する究極の選択を迫られることになる…。

 

感想

 目に飛び込んでくる光景全てが過酷。墜落時のシークエンス。自然色に囲まれたロケーション。冷気に襲われる肌寒さ。明らかに物資が不足しているサバイバル生活の様式。そして、生きる為に実行した究極の選択…。過酷な光景の連続に戦慄と疲労感を覚えるインパクト大な作品。

 遭難する前から過酷。墜落前の冒頭で男子たちがキャッキャッと青春を謳歌している柔らかい雰囲気の時から下半身が見えるぐらい全裸が映り込み、「これは墜落時に結構攻めるぞ…」と覚悟を決めたら案の定…ではなく案外にも程があるほど極限である。墜落時に次々と破損していく機内のシークエンス。機内の破損が原因で次々と起きる人体へのダメージ。メインパートである雪山生活が始まる前から強烈なインパクトを与える。

 遭難後は墜落時とは別味の過酷な光景ばかりが広がる。第一に、ロケーションが白い雪・黒い地・青い空(夜間時は黒い空)の自然色3つのみで構成されており、人の営みが消滅した色で孤立感がある。第二に、遭難先が雪山ゆえに冷気が襲い、ブルブルと凍える演技をする俳優陣が上手すぎて観てる側も肌に寒気を覚える。プラスして、墜落時に負傷して意識が遠のく人物は凍える動作がままならない状態であり、そのギャップで運命の分かれ目を感じる。第三に、飢えを凌ぐサバイバル生活。登山家のように山中で寝泊まりする事を想定した物資ではないから、発想の転換および藁に縋る凌ぎ方に驚愕する。最後に、皆で究極の選択をする事が本作で1番過酷なポイント。どうして、冒頭で乗客たちの全裸を見せたのかは、この選択のためにあると思う。冒頭で全裸を見せたからこそ、唐突感が消滅して自然な流れを生んでいる。この選択をする前は「皆で生き延びよう」と気持ちが一致していた乗客たちの意見が二分し、誰もが葛藤に苛まれてる様相が本作で1番の過酷ポイントであり白眉。極限状態からの脱出と倫理観の保持が鬩ぎ合い、自分自身が遭難したら、どちらを選択するのか突き付ける威力がある。

 ストーリーの繋ぎが若干ながら退屈。映像は逐一、臨場感の塊ではあるが、ストーリーを実話通りに時系列順に消化していった感が否めない。過酷なサバイバル・シーンを見せることに力を入れたばかりに、シーン間の繋ぎにシームレス性が欠けている。ストーリーの展開に地続き感がない。1ヶ月以上に渡るサバイバル生活なのにザク切り感がある。なので、次に何が起こるかという緊張感が薄い。それゆえ、間延びを感じるし、143分の尺も相まって体感時間が更に長くて疲れる。ただ、そこは実話だし、景色が変わらない場所に留まっていると時間の経過が遅いゆえに疲労が蓄積するし、これはこれでアリだと思ってる。なので、私自身は鑑賞者も遭難した乗客たちと同じ時間の長さと疲労感を与えるよう設計したと勝手に考えている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

笑いのカイブツ

(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会

公 開 日  :1月5日

ジャンル:ドラマ

監 督 :滝本憲吾

キャスト:岡山天音菅田将暉、仲野太賀、片岡礼子松本穂香、板橋駿谷 他

 

概要

 伝説のハガキ職人と呼ばれた作家ツチヤタカユキさんが自身の半生を綴った同名小説の実写映画化。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 何をするにも不器用で人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿し、その番組で面白かった者に与えられる称号「レジェンド」の獲得することを生き甲斐にしていた。狂ったようにネタを考え続けて6年が経った後、自作のネタを携えて訪れたお笑い劇場で、その才能が認められて作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他社と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去る。自暴自棄になりながらも笑いを諦めきれずに、ラジオ番組にネタを投稿する”ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺から声がかかる。ツチヤは構成作家を目指し、上京を決意するが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 狂気がもたらす成果。狂気がもたらす社交性の欠落と理解者の存在。狂気の沙汰が生む結果と代償を描いた怪作を思わせて、尖った者と尖った者を取り巻く人間関係の普遍性を提示した秀作。そして何よりも、主人公ツチヤ役の岡山天音さんが狂気の燻りと発火で空気の張りをコントロールする狂演を見せつける。
 本作で描かれるのは、人間関係を捨て、笑いに全振りして得られた成果と信頼。加えて、その代償として失われた、社交性を会得する機会。時間の使い方や努力値の振り方によって、常人を凌駕する技能や創造性を得られるが、引き換えに、誰もが人生で積み上げてきた常識や一般的教養を得られず、尖った人間または天才や奇才へと育つ。そんな者たちは少数派であり、一般的な時間の使い方や努力値の振り方をした凡人から存在を弾かれる。北野唯我さんの著書『天才を殺す凡人』でもある通り、どれだけ共感できるかを感情の主体とする凡人にとって、常識を得ずに創造性を主体とする主人公ツチヤを弾くのは当然の原理である。だが同時に、ツチヤの創造性に共感を示して受け入れる者もおり、尖った者は決して孤独でないことを示している。本作のツチヤ以外の登場人物は、ツチヤを弾く者たち、ツチヤを受け入れる者たちといった2つに分けられる。ツチヤの創造性に共感するか共感しないかで構図を作り、尖った才能を持つ者を取り巻く人間関係の普遍性を提示した作品である。加えて、ツチヤに似た境遇を持つ者に「辛い思いをしてるのは君じゃないよ」や「少ない人数だけど、理解者が出てくるよ」と救済になっている。例え、本作が多くの方々から共感を得られずとも、十分な役割を果たす。

 ツチヤを演じる岡山天音さんの狂演が素晴らしい。『セッション』のマイルズ・テラーや『BLUE』の松山ケンイチさんに続く、結果を欲して時間を大量投下していく狂気が迸る。かといって常に狂気を帯びたり発したりするのではなく、平凡に流れゆく風景の中で狂気が燻っては発火するという静かな強弱で表現している。他人とコミュケーションが取れない役柄であり、他人との会話中(上手く言葉を発せなくて、もはや会話らしきもの)では狂気が引っ込んでいるが、沸点に達するとピキピキッと燻りを見せてはピシャッと発火して空気の張りを変え、観る者は岡山さんに引き込まれる。
 風景と不釣り合いな劇伴がマッチ。平凡な風景の中、ツチヤの脳内で放出されるアドレナリンやグチャグチャした感情を感じ取れる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

エクスペンダブルズ ニューブラッド

(C)2022 Ex4 Productions, Inc.

公 開 日  :1月5日

ジャンル:アクション

監 督 :スコット・ウォー

キャスト:ジェイソン・ステイサムシルベスター・スタローン、50セント、ミーガン・フォックスドルフ・ラングレントニー・ジャー、イコ・ウワイス、ランディ・クートゥア、レビ・トラン、アンディ・ガルシア

 

概要

 アクション映画界のレジェンドであるシルベスター・スタローンが監督・脚本・主演でスタートし、毎度、豪華なアクションスターたちが集結する『エクスペンダブルズ』シリーズの4作目。本作ではシルベスター・スタローンジェイソン・ステイサムドルフ・ラングレンランディ・クートゥアらお馴染みのメンバーに加え、新たなに50セント、ミーガン・フォックストニー・ジャー、イコ・ウワイス、アンディ・ガルシアら世界各国のアクションスターが参戦する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 自らを”消耗品”と名乗る最強無敵の傭兵軍団エクスペンダブルズを率いるバーニー・ロスは、CIAから下された新たなミッションに挑むため、かつての相棒であるリー・クリスマスの元を訪ねる。

 バーニーとともに再び組むことを決意したリーがアジトに足を運ぶと、そこにはかつての仲間だけでなく、新たなメンバーが顔を揃えていた。

 新戦力を迎えて生まれ変わったエクスペンダブルズが挑む今回のミッションは、テロリストが所有する核兵器を奪還すること。もし、失敗すれば第三次世界大戦が勃発しかねない危険なミッションに挑む彼らだったが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 構造は1作目で築いた土台に2作目と3作目で披露したモノを投入したシリーズの合体型。銃撃、斬撃、体術、爆撃の乱打による景気のよさは相変わらず。だが、新しく投入した下ネタやブラック・ユーモアといった軟派なネタの数々が、本シリーズの硬派を侵食したのは賛否両論。
 開幕直後からフルスロットルで銃撃、斬撃、体術、そして爆撃を乱打するは2作目からの系譜。スニーキングからのステルス・アクション披露は3作目の系譜。常にアクション・シーンに向かいながら会話を進め、展開の途切れを完全消滅させる超速シームレス展開は3作目の系譜にし、移動時間や作戦地を減らして超爆速シームレスにテンポ・アップ。肝心のアクションについては、銃撃、斬撃、体術、爆撃を魅せるのは相変わらずだが、本作は物量に重視したジャンキーなアクションではなく、敵の人数を減らしてワンシーンおよびワンカットを大切に、敵1人1人を丁寧にキルして魅せるスリムなアクションが中心。シリーズの肉体を結集させては脂肪を削ぎ落とし、スキッとしたアクション映画となった。

 アクションの撮り方について、「カメラ近づきすぎ・画面ブレすぎ・カット割多すぎ」の3大問題は1作目および3作目よりは改善している。場面に沸き出る敵の数が減り、1人1人を着実に倒す見せ方が功を奏している。だが、その分、派手さがなくなり、3作目のラスト・バトルのようにココ1番盛り上がる熱量はない。
 アクション以外の作風が変化。1作目からシルベスター・スタローン兄貴やジェイソン・ステイサム兄貴といったアクション界隈の兄貴による硬派なR15指定作品だったが、本作は下ネタ及びブラック・ユーモアが入り混じる軟派なR15指定作品へと一気にシフトした。この乗り換えはシリーズ・ファンにとっては賛否両論が生まれるのも無理はない。下ネタ及びブラック・ユーモアが混入してしまい、硬派な兄貴たちによる硬派なアクションに魅入っていたファンにとっては落胆レベルだと想像できる。個人的にシリーズ作の作風が変化することに抵抗はないが、本作は単体作品として捉えても下ネタ及びブラック・ユーモアの部分は首を傾げる。下ネタはR15指定を要するモノが映ったり、女体を強調するシーンが映ったりするが、物語に何も関係なくて必要性を感じない。(そういえば、『トランスフォーマー』でもミーガン・フォックスは女体を強調するシーンがあったな。こういう役回りをミーガン・フォックスは望んでいるのか?)硬派な意味で男臭いシリーズであったが、性的な意味での男臭さに舵を切ってまで見せる必要があったのか?ブラック・ユーモアに関して、完全に笑えないことをブラック・ユーモアに昇華させている。程度の見極めがなっておらず、『デッドプール』や『キングスマン』などのブラック・ユーモア満載のアクション映画のセンスから格段に落ちる。むしろ、人権問題に発展する。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

コンクリートユートピア

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :1月5日

ジャンル:スリラー

監 督 :オム・テファ

キャスト:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ 他

 

概要

 第48回トロント国際映画祭で「『パラサイト 半地下の家族』に続く傑作」と高く評価され、第96回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表に選出されたスリラー・ドラマ。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 世界を襲った未曽有の大災害により一瞬で廃墟と化した韓国のソウル。唯一崩落しなかったアパートは、生存者たちで溢れかえっていた。無法地帯となったいま、アパート内でも不法侵入や殺傷、放火が発生。危機を感じた住民たちは主導者を立て、居住者以外を追放し、住民のためのルールを作って”ユートピア”を築き上げることに。住民代表となったのは、902号室のヨンタク。職業不明で冴えないその男は、権力者として君臨したことで次第に狂気を露にする。そんなヨンタクに傾倒していくミンソンと不信感を抱くミョンファ。極限の状況下でヨンタクの支配が頂点に達したとき、思いもよらない争いが勃発する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 命の危機に追い込まれて芽が出る人間の醜悪…ではなく本能が様々なケースでポコポコ浮き彫りになる。『パラサイト 半地下の家族』的な階級社会の対立から生まれくる暴力。『ミスト』のように、ここぞとばかりに神の意思を信仰する人間の意思。『福田村事件』同様、1人の意思が皆に伝播する同調圧力の怖さ。群集心理や生存本能を風刺した名作たちを集約し、それらを続きが気になるストーリーに仕立て上げ、韓国映画らしく少々のブラック・コメディを加えた傑作エンタメ。名作たち同様、極限状態の人間は良心を捨て切ることを選んでしまうが、それでも良心を持ち続けようと思わせる。

 惜しい点としてはコメディの挿入。決して面白くないわけではないが、オスカーに韓国代表として出品して世界に送り出すならば、抜いた方がウケが良かったかも。世界的にウケた『パラサイト 半地下の家族』は、まだ生計を立てて明日も生きれる状態であるからコメディが馴染むけど、本作は明日をも知れぬ命ゆえに馴染みづらい。韓国映画の鑑賞経験がない方ほど「えっ?なんでギャグかましたの?」と疑問が沸いて、映画の世界から引き剥がされると思う。なので、世界ウケを目指すならコメディを外した方が良かったかもと勝手に考えた。その場合、韓国内でウケるかは分からないけど。
 アパート住民の代表役を務めたイ・ビョンホンによる演技の振り幅が素晴らしい。初見時、完全にスターのオーラを雲散霧消して冴えない男を演じ切っており、そこから狂気に転じていくグラデーションが見事。冴えない男からアパート1の権力者へと移り変わり、極限状態で権勢を持ってしまった人間を体現していた。
 夫婦役を演じたパク・ソジュンとパク・ボヨンが対比として素晴らしい。良心を捨て、妻を守ろうとする家長精神の夫。良心を捨てず、皆で生き残りを目指す妻。極限状態に陥った人間の行動パターンを対比的に体現していた。また、良心を捨てた夫は生きるために具体的な行動を起こすのに対し、良心を保った妻は皆で生きるために具体的な行動を起こしてないというバランスがリアリティ高くてニクい。キム・ソニョンが演じた婦人会長も口だけ動かして他人を動かすという組織に居たら嫌な奴の典型例を体現していた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

カラオケ行こ!

(C)2024「カラオケ行こ!」製作委員会

公 開 日  :1月12日

ジャンル:漫画実写化、コメディ、ドラマ

監 督 :山本敦弘

キャスト:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、坂井真紀、北村一輝

 

概要

 歌が上手くなりたいヤクザと変声期に悩む合唱部所属の中学生が歌を通して交流する漫画『カラオケ行こ!』の実写映画化。

 

あらすじ

 合唱部部長の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。狂児には組のカラオケ大会が控えており、その大会で最下位になった者が受ける恐ろしい罰ゲームを免れるため、歌が上手くなりたいとのことだった。ちなみに、勝負曲はX JAPANの『紅』。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うのだが、いつしか2人の関係には変化が訪れていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 綾野剛さん演じるヤクザの他人に対するバグった距離の詰め方で物語を進めていく手法を皮切りに強引な展開づくりが多く目立つ。だが、コメディにもドラマにも程よく舵を切れる静かな空気感をキープし、全てのシーンにおいて綾野剛さんと中学生を演じる齋藤潤さんのマンパワーが発揮されている。空気の張りがプシュッと抜けてくようなコメディに笑えるし、真面目なドラマ部分は静かな熱が帯びる。とはいえ、これは歌でいうAメロやBメロのようなものであり、最後は歌の終盤にあるサビがあり、ボルテージを高めて感極まる。ペース配分が良い作品。

 主人公である綾野剛さんと齋藤潤さんが素晴らしい。綾野さんは『ヤクザと家族』で演じた漢気一貫と枯れた哀愁が漂う真面目なヤクザから一変して、他人にベタベタと擦り寄りながらも面倒見の良さを持ち合わせた、親近感が沸くキャラクターだった。また、歌唱シーンを通して数種類のイケボを堪能できる。齋藤さんは、静かな空気感を常とする劇中にて、短いセリフの数々をピシャッと発するだけで存在感を表していた。そして、声変わりの葛藤の先に大きな感動を与えてくれる。本作は綾野さんと齋藤さんのマンパワーで彩られている。

 ストーリーに関して、ヤクザと中学生の関係性に「これでいいのか?」と疑問。中学生からヤクザには歌の歌い方などをギブしてるけど、ヤクザから中学生には特にギブはない。中学生の意思に関係なくヤクザの界隈に引っ張り込み、中学生および中学生の関係者を捏ねくり回してるようにしか見えない。対等な対人関係にはギブ&テイクが必要だと思うけど、本作のヤクザと中学生からはあまり感じなかった。本人たちは納得してるけど、傍から見れば友人関係というより搾取の構造に近いように思える。打算的な見方かもしれないけど。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

ある閉ざされた雪山の山荘で

(C)2024映画「ある閉ざされた雪の山荘で」製作委員会 (C)東野圭吾講談社 前へ 次へ

公 開 日  :1月12日

ジャンル:ミステリー、サスペンス

監 督 :飯塚健

キャスト:重岡大毅中条あやみ岡山天音西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵間宮祥太朗

 

概要

 1992年に刊行され、累計発行部数1億部を突破した東野圭吾さんの同名のベストセラー小説の実写映画化。発刊時からミステリーファンを唸らせ、作品の内容的に長らく映像化は困難とされてきたが、豪華キャスト&スタッフが集結し、満を持して実現を果たした。

 主人公を演じるのは、本作が映画単独初主演となる重岡大毅さんをはじめ、中条あやみさん、岡山天音さん、西野七瀬さん、堀田真由さん、戸塚純貴さん、森川葵さん、間宮祥太朗さんといった実力派俳優陣が勢ぞろい。監督を務めるのは、『ステップ』や『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』などヒット作を数多く手がけ、舞台演出でも活躍する飯塚健監督。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 新作舞台の最終選考に残った7人の役者。そんな彼らに最終オーディションの招待状が届く。最終オーディションは、某所にある別荘を「大雪で閉ざされた山荘」に見立て、別荘内で連続殺人事件が起こるという架空のシチュエーションの中で4日間の合宿を行って配役を決めるという内容だった。別荘に集合した7人の役者はオーディションの意図やシナリオを汲み取って生活を始めるが、出口のない空間で1人、また1人と役者の誰かが消えていく。果たしてこれは、演出上のフィクションなのか?それとも、本当の連続殺人なのか?彼らを待ち受ける衝撃の結末とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 東野圭吾さんの原作小説として、トリックや事件の真相は太鼓判。天地をひっくり返すほどの発想に度肝を抜かれる。だが、演出全般が狡くて推理モノとしての醍醐味は皆無。観客自身が推理する隙が少なく、意欲さえも沸かない。本作を観終えた後に判明するのは、原作発刊から10年以上も映像化不可能と謳われ続けた所以である。

 『ガリレオ』シリーズや『新参者』シリーズを手掛けた推理小説家・東野圭吾さんの小説が原作だけあって、トリックの斬新性は太鼓判。観る者に真相を勘繰らせないミスリードな展開で誘導し、最後に急転直下で天地をひっくり返すほどの衝撃を走らせる。さらには、事件の背景を収束して綺麗な結びを置いていく。原作未読だから詳細は知らないけど、原作刊行時の年代的に東野さんの初期作品を彷彿させる。オチと設定を整備し、そのオチと設定の範囲内で自由奔放かつエンタメ値の高いミスリードを何個も用いて読者を誘導。そして、物語の沼にハマった読者を踊らせ、最終局面で伏線を回収して天地をひっくり返す。東野さんらしい勝ちパターンを導入し、本作のトリックは約束された勝利がある。やはり、東野さんの発想力には驚かされる。本作を観て、原作が発行1億部を叩き出したことに納得する。だが結局のところ、「原作が凄い」という感想が真っ先に浮かぶ出来栄えなので、映像作品としては大いに難がある。

 演出が狡い。本作の悪い点を総括すると、この一言に尽きる。悪い意味で推理モノにおける定石の逆を走っている。なぜなら、容疑者となる登場人物たちが誰1人として怪しそうに感じないからである。一応、不審な動きをしたり、誰かが他人を怪しんだりするのだが、全く演出を施さず、次々と記号的に消化している。おそらく、そうすることで登場人物の見え方が均等になって誰1人も悪目立ちがなくなり、「全員が怪しく見えるだろ?ドヤッ」になることを狙ったかと思われる。だが、結果は逆。それによって、観る者に「この人は怪しそうだな。この人は犯人じゃないな」と考えさせたり、「えっ!?あの人は犯人じゃなかったの!?じゃあ誰なの?」と右往左往させたりするといった推理モノとしての醍醐味が消滅し、むしろ誰1人として怪しく見ようとする意欲が沸かない。観客は俯瞰的に事件の顛末を傍観することが主体となる。おそらく本作は、原作小説の文章をそのまま行動とセリフに落とし込んだだけのように見える。小説なら読者の想像力に頼ってミスリードを促せられるけど、映像作品ならば演出で引きつけないと観客はライドしづらい。本作はトリック的に難しいけど、演出に力を入れて視覚情報によるミスリードで観客を誘導した方が良かったと思う。まあ、それが上手く出来ないから、長年に渡って映像化不可能と謳われ続けたのだろうけど。

 同性愛者のことを「あっち系」と言って笑いを取るのはシンプルに差別。本作の公開はLGBTが謳われ続けて久しい2024年だから看過できない。

 どうでもいいことだけど、間宮祥太朗さんが『バイオハザード4』のレオンと似てるジャケットを着ていて笑った。間宮さんはアメリカ人にも見える顔立ちだから、髪を黒に染めたレオンに見えた(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計11個

 

アクアマン 失われた王国

(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & (C)DC

公 開 日  :1月12日

ジャンル:アメコミ、SF

監 督 :ジェームズ・ワン

キャスト:ジェイソン・モモアパトリック・ウィルソン、アンバー・バード、ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世、ニコール・キッドマンドルフ・ラングレン、ランドール・パーク 他

 

概要

 2018年に公開された『アクアマン』の続編。前作同様、監督はジェームズ・ワンで主演はジェイソン・モモア。また、本作は2013年の『マン・オブ・スティール』から続いたアメコミ映画シリーズ「DCエクステンデット・ユニバース」の最終作となる。

 

あらすじ

 はるか昔、南極の氷河の奥深くに封印された「失われた王国」。その地には、世界を滅亡させる力を持つ古代兵器ブラック・トライデントも封印されて眠っていた。だが、ある日、アトランティスの王アクアマンに父を殺されたブラック・マンタがブラック・トライデントを見つけ出し、邪悪な力を解き放ってしまう。世界の危機を知ったアクアマンは仲間たちと共に立ち向かう。果たして、かつてない脅威から海と地上の世界を守れるのか?

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 広大な海と陸を怒涛のライド感と疾走感で駆け抜ける、アドレナリン全開アクション・アドベンチャー映画『アクアマン』の続編。失われたのは王国よりも、前作の持ち味だった。全てがパワーダウンし、ジェームズ・ワン監督作らしからぬ平々凡々なSF映画となってしまった。ジェームズ・ワン続投で良かったのか…。

 前作の持ち味が大幅に消滅。軽快なカメラワークと多彩な攻撃方法を披露するアクション。敵味方の大群で画面を埋め尽くす壮大な絵面。『アンチャーテッド』のように多彩なギミックを完備したアドベンチャー要素。スムーズ過ぎるにも程があるシーンの繋ぎ方。それら全てが退化し、平々凡々なSF映画と化してしまった。アクションは一辺倒な質に加え、量が小盛り。大群が埋め尽くすほどのスケール大な絵面は皆無であり、海中生物を引き寄せるアクアマンの能力が若干ながら腐ってる。アドベンチャー要素も、ギミックがワンアクションでクリア出来てしまうほどシンプル過ぎて踏破していく楽しさが質量共に前作より下回る。シーンの繋ぎ方も、前作のようなマッチカット及び前作のお家芸だった「会話中に敵をぶっ込む戦法」を大幅に封印しており、シーンの切り替えが平常運転すぎて前作のようなライド感の持続に全く工夫がない。だが、物語が進むうち、ようやく前作の持ち味を取り戻す…と思いきや映画は終幕。スタートダッシュから全開だった前作と比べ、盛り上がりは大きく欠ける。アドレナリンの放出量は前作の半分にも満たない。さらには、演出及び映像が作品名を牽引するパワーを失ったことにより、ストーリー本体にパワーが無いことが露呈するという負の連鎖が発生している。

 いくら天才ヒットメーカーのジェームズ・ワンとはいえ、別の方に監督を変えて製作に回るor別の方を呼んで2人体制で監督をするかのどちらかを選んで良かったような気がする。なぜなら、ジェームズ・ワンは0から1を生み出し、その1を作品内で100まで引き上げ、原点にして頂点を作ることが多いから。なので、ジェームズ・ワン以外の頭脳を用いてアイディアの開拓を図った方が良かったと思う。『SAW』シリーズや『死霊館』シリーズのように。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

ニューヨーク・オールド・アパートメント

(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

公 開 日  :1月12日

ジャンル:ドラマ

監 督 :マーク・ウィルキンス

キャスト:マルチェロ・デュラン、アドリアーノ・デュラン、マガリ・ソリエル、タラ・サラー、サイモン・ケザー 他

 

概要

 オランダの作家アーノン・バーグが執筆した小説『De heilige Antonio』を基に、ニューヨークの片隅に暮らす不法移民の一家を描いたヒューマン・ドラマ。

 

あらすじ

 祖国ペルーを捨て、ニューヨークの片隅で暮らす不法移民のデュラン一家。母のラファエラはウェイトレスをしており、息子のポールとディトは語学学校に通いながら配達員として家計を支えていた。お金の問題に加え、不法移民として市民権もなく何の力もない自分たちを「透明人間」と呼び、一家は息を潜めて生きていた。

 ある日、ポールとティトは学校にて、神秘的な魅力を持つ美女・クリスティンと出会い、恋に落ちる。一方、母のラファエラは、レストランの客である白人男性と恋に落ち、その男性からチキンフード店を経営することになる。それぞれが恋に落ち、辟易していた毎日に希望を見出したかのように思えた。だが、ニューヨークという大都会で出会う人々の欲望と心の闇が次々と露になり、母子3人は重苦しい事態に直面する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 「不法移民=この国に本当は居ない人→透明人間」という位置付けから、不法移民は弱者として不当な扱いを受けることが母と息子2人それぞれのケースから制度の視点ではなく生活面から見て分かる。国家が定めた法的な扱いの前に、先住民たちによる差別だったり利用する手駒にしたりと制度の前に闘いは始まっていることを実感する。それを踏まえた上で、恋に落ちて人間らしく生きれると希望が見えた矢先、外道な人間の闇に落とされていく成り行きは非常に痛切。移民のしがらみを消そうとするほど、別のしがらみが膨らむ葛藤の作り方が上手くて胸が締め付けられる。だが、あかの他人と恋で繋がったり切れたりしても、ずっと縁が繋がって切れない家族の存在を一周回って感じるのが本作の醍醐味。母子それぞれの恋から家族の絆へと良き結び付きを見せた良作。

 息子2人の役を演技未経験の双子が演じたのが項を奏した。演技っぽくない挙動が、移民の立場に置かれた生々しさを物語るリアリティにプラスとなっていた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

Lift リフト

Netflix

公 開 日  :1月12日

ジャンル:アクション

監 督 :F・ゲイリー・グレイ

キャスト:ケビン・ハート、ググ・バサ=ロー、ビンセント・ドノフリオ、ポール・アンダーソン 他

 

概要

 2024年1月12日よりNETFLIXにて独占配信されているクライム・エンタメ。

 

あらすじ

 仲間を率いて泥棒稼業を行っているサイラス。犯罪者集団なのに、なんとインターポールから免罪と引き換えに盗みのミッションを依頼される。そのミッションはフライトに飛び立つ旅客機から金塊を悪人の手へ渡る前に奪取すること。サイラスは仲間とインタポール捜査官アビーと共に綿密な計画を練り、離陸現場へと向かう。

 

感想

 なんか惜しい作品。絶好のロケ地。ノリノリなBGM。空想科学のメカ。迫力満点のVFX。チームモノとして素材は揃っている。だが、素材の繋げ方でいまひとつ楽しさが振るわなかった。空想科学メカが何でもあり過ぎるレベルで解決策を見出しており、ストーリーに流れがない。そのため、観る者の興味が引く前に話が進んでしまっている。作戦準備のシーンが9割ほど登場人物がセリフを言うだけで完結しており、画に動きがない。ストーリーが大きく動く前の肝心なフェイズなのに、セリフを言ってるだけでは観る気力が落ちる。チームモノとしても、登場人物が1人1役しか渡されないため、少し動いたら御役目御免の人物が何名かいる。1人2役ぐらいにして、人数を減らした方がキャラ立ちしたと思う。一芸だけの役割では画面に映すことも物語に絡ませることも、ままならない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

ゴールデンカムイ

(C)野田サトル集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

公 開 日  :1月19日

ジャンル:漫画実写化、アクション

監 督 :久保茂昭

キャスト:山崎賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、矢本悠馬玉木宏舘ひろし

 

概要

 週刊ヤングジャンプにて2014年8月から2022年4月まで連載していた野田サトルさんの大人気漫画『ゴールデンカムイ』の実写映画化。北の大地を舞台に、莫大なアイヌ埋蔵金を巡る一攫千金ミステリーと、一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちによる埋蔵金争奪のサバイバル・アクションが繰り広げられる作品。制作プロダクションは『キングダム』シリーズを手掛けたCREDEUS。監督を務めるのは『High&LOW』シリーズの久保茂昭さん。主演は『キングダム』シリーズや『今際の国のアリス』の山崎賢人さん。脚本および音楽も『キングダム』シリーズの黒岩勉さんが務める。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 舞台は気高き北の大地・北海道。時代は、激動の明治末期。

 日露戦争において鬼神のごとき戦いぶりに「不死身の杉元」と異名を付けられた軍人・杉元佐一は、ある目的のために大金を手に入れるべく、北海道で砂金採りに明け暮れていた。そこで杉元は、アイヌ民族から強奪された莫大な近海の存在を知る。金塊を奪ったのは「のっぺら坊」と呼ばれる男であり、捕まる直前に金塊をとある場所に隠し、その在り処を記した刺青を24人の囚人の身体に彫り、彼らを脱獄させた。囚人の刺青は全員で一つの暗号になるという。早速、金塊の在り処を掴もうと動き出した杉元だったが、山中にて野生のヒグマに襲われる。絶体絶命の危機の中、アシリパと名乗るアイヌの少女から救われる。聞く話によると、アシリパの父親は金塊を奪った男に殺されていた。父の仇を討ちたいアシリパは、金塊探しを共にしたいと願い出て、2人は仲間となって旅を始める。同時に、大日本帝国軍「第七師団」の鶴見篤四郎中尉、戊辰戦争で戦死したとされていた新撰組の「鬼の副長」こと土方歳三も金塊探しに身を乗り出していた。杉元&アシリパVS第七師団VS土方歳三。三つ巴の争奪戦が幕を上げる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 全編が見せ場。本格的なサバイバル・ロジックと重い一撃をベースとした、生き残るためのアクションの数々。迫力満点に動き回る動物たち。狩猟とアイヌ文化の知識の数々。漫画実写化作品での好演に定評がある山崎賢人さん、山田杏奈さん、玉木宏さん、舘ひろしさんのキャラクター性。それら全てが、意匠を凝らした美術が囲う空間および積雪のある寒冷地の下で毎シーンに渡って繰り出され、楽しさが持続するエンタメとなっている。

 衣装の出来が素晴らしい。実在した衣装を基にしたのもあって実写の風景に浮いておらず、作品の世界観に浸らせてくれる。ただ、山に行ったり激しい戦闘をしたはずなのに、汚れ1つ付着しないのは少し不自然だった。

 ロケ地に関して、どうしても街に作り物感がある。そのため、メインとなる街と雪山に地続き感がない。ただ、アイヌの集落は雪山に建設されているため、地続きを感じられる。

 本作は漫画の実写映画化の良い成功例。多くの漫画実写化映画は、コミックス1巻からキリの良いところまで映像化またはコミックス1巻から最終巻まで掻い摘んで映像化し、起承転結を決めて単体作品として完結させるのが基本的。だが、本作は起承転結を決めず、毎シーンが動きのある見せ場。ロジックが立った、重厚感のあるアクション。キャスト陣が魅せる登場人物のキャラ立ち。自然に馴染み込ませたギャグ的な掛け合い。狩猟やアイヌ文化の知識の数々。楽しさが尽きない。むしろ、週刊連載の漫画を実写映画化するにあたり、これが正解だったのかも。なぜなら週刊連載は、毎週に渡って読者の反応を気にする以上、第1話から最終話までの流れに意図して起承転結をつけるのは難しい。そのため、各話ごとに楽しさを注ぎ込まないといけない。つまり、映画化にあたって、2時間の尺を原作から抜き出して起承転結で繋ぎ合わせるより、起承転結を決めずに原作の面白さを順次、全編に渡って換骨奪胎していけば作品が面白くなる…という法則が見えた気がした。原作未読ゆえに漫画の『ゴールデンカムイ』がどんな感じなのかは知らないけど…。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

僕らの世界が交わるまで

(C)2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.

公 開 日  :1月19日

ジャンル:ドラマ

監 督 :ジェシー・アイゼンバーグ

キャスト:ジュリアン・ムーア、フィン・ウルフハード、アリーシャ・ボー、ジェイ・O・サンダース、ビリー・ブルック、エレオノール・ヘンドリックス 他

 

概要

 『ソーシャル・ネットワーク』で主演を務めた人気俳優ジェシー・アイゼンバーグの監督デビュー作。脚本もジェシーが完全オリジナルで執筆。ちぐはぐに擦れ違う母親と息子のドタバタな人間模様をユニークな笑いで届け、今の時代を鋭く切り取ったドラマに仕上げている。さらにはエマ・ストーンがプロデュースを務める。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母・エヴリンと、ネットのライブ配信で人気の高校生ジギー。社会奉仕に身を捧げる母親と、自分のフォロワーのことしか頭にないZ世代的な息子は、いまやお互いのことが分かり合えずにいた。しかし、彼らの日常にちょっとした変化が訪れる。それは、各々ないものねだりの相手に惹かれ、空回りの迷走を続ける親子そっくりの姿だった。親子間のジェネレーション・ギャップや、理想と現実の食い違い。誰にとっても身近なテーマを描く中で、母と息子、それぞれの失敗を経て辿り着くお互いへの想いとは?

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 2020年代あたりの親子像を写した凄く現代的な作品。物心ついた時にはネットに接続されてコンテンツが溢れかえっていた子供と、時代の過渡期ゆえにネットやコンテンツに触れるか触れないかの選択肢があった親という現実世界のジェネレーション・ギャップを劇映画に落とし込んでいる。10〜30代の方々は息子に共感を覚え、40代以降の方々は母親に共感を覚えるはず。その共感を持った先にある本作の幕切れの延長線上にて、子は親を知りて、親は子を知りて、タイトル通りに親子の世界が交わって理解し合う人間関係の構築を促す希望が込められている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

哀れなるものたち

(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :1月26日

ジャンル:ファンタジー

監 督 :ヨルゴス・ランティモス

キャスト:エマ・ストーンマーク・ラファロ、ウィレム・ディフォー、ラミー・ユセフ 他

 

概要

 『女王陛下のお気に入り』で映画賞を席巻したヨルゴス・ランティモス監督が、再びエマ・ストーンとタッグを組んで贈る冒険物語。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門では最高賞の金獅子賞を受賞。

 ※映画パンフレットより引用および抜粋

 

あらすじ

 自ら命を絶った不幸な若き女性ベラは、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手によって、奇跡的に復活する。ゴッドウィンの庇護のもと大切に育てられるベラだったが、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放蕩者の弁護士ダンカン・ウェダバーンの誘惑で、ヨーロッパ横断の旅に出る。

 ※映画パンフレットより引用および抜粋

 

感想

 近代ヨーロッパと未来を融合させた絵面と小気味よい劇伴が流れる中、エマ・ストーン演じる主人公が世界を渡り、性や人々との交流を通じて経験値を蓄積して変化する様はシンプルに主人公の冒険譚及び成長譚であり、純粋なエンタメとして面白い。作品の構造を度外視して、一目見て直感的に楽しめる。とはいえ、本作で伝えたいことはシンプルに提示されている。身体は大人でも頭脳は子供である女性という主人公の人物設計を活かして、これまでの人類の歴史で女性が受けてきた扱いや生き方を羅列し、無知なる主人公に教え込ませると同時に観る者にも教えてくれる。女性に対する父性や男性性を描き、権利を持てなかった女性の歴史を解剖している。それをフリにし、無知ゆえに純粋な主人公を通して、女性にも権利を主張する強いフェミニズムを感じる作品となっている。

 どうでもいいことだけど、本作のエマ・ストーンは、時折なんとなく市川実日子さんに似てる気がした。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計20個

 

サイレント・ラブ

(C)2024「サイレントラブ」製作委員会

公 開 日  :1月26日

ジャンル:ラブ・ロマンス

監 督 :内田英治

キャスト:山田涼介、浜辺美波野村周平吉村界人、SWAY、古田新太

 

概要

 『ミッドナイトスワン』の内田英治さんが原案・脚本・監督を務めたラブ・ロマンス映画。主演を務めるのは山田涼介さんと浜辺美波さん。音楽を担当するのは久石譲さん。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 とある事件により声を捨て、毎日をただ生きているだけの青年・蒼。ある日、不慮の事故で視力を失って絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女を全てから護ろうとする。だが声を出せない蒼にとって、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 久石譲さんが手掛けた楽曲が素晴らしく、主人公2人の純粋な心に相まって、その音色に清廉さを覚える。そして何よりも山田涼介さん・浜辺美波さん・野村周平さんを映した輝かしく美しいショットの1つ1つに釘付けとなる。本作の良いところは、その2点のみ。それ以外はない。ショットについては正確に言うと、物語にヘンテコな箇所が数多くあり、ショットの美しさが逆に珍奇な絵面を作り出して仇となっていることもチラホラ。また、登場人物たちの心情を感じ取らせるショットが少なく、登場人物たちに全く愛着と共感が沸かないし、行動原理が読めない。

 声を失うことと視力を失うことの設定が物語に活きてない。声と視力と同時に失ったものがあって葛藤を覚えるはずなのに、全く描かれない。浜辺美波さん演じるキャラも「視力を失ってピアノが上手く弾けない」と口にするだけであり、視力を失う前と後の技量の違いが全く分からない。喋れない人間と目が見えない人間による特殊なコミュニケーションを映したいだけの域に止まっている。

 山田涼介さん演じるキャラが貧困層浜辺美波さん演じるキャラが富裕層として貧富の差を描いているが、得意のショットで全く映してない。「自分たちは住む世界が違うんだ」と口にするだけで終わり。映像で語ってくれないので「え?この作品、貧富の差を言及して社会の縮図を投影してたの?知らんわ〜」となる。

 登場人物全員が思い込みと決め付けが多く、誰も彼もが他人に自分の行動と価値観を押し付けている。

 浜辺美波さん演じるキャラが、どれぐらい視力を失ったのか分からなかった。歩くのは覚束ないが、他人と会話する時は他人の目とピントが合っている。時々、視力を失っている設定を忘れる。

 全体的に美しいショットを撮りたい願望が先行し、登場人物の感情表現がお座なりになっている。そのため、登場人物の心境が物語を通して、全く数珠繋ぎになっていない。劇中で出来事が多発するけど、感情と心境の蓄積がないから観ていて全く心が揺さぶられない。「なんか出来事が起こったぞ」や「こういうショットを撮りたかったんだな」と俯瞰的な見方しか出来ない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計9個

 

カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし

(C)KADOKAWA

公 開 日  :1月26日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :宮川麻里奈

キャスト:角野栄子

 

概要

 『魔女の宅急便』の作者として知られる児童文学作家・角野栄子さんの日常を4年に渡って密着したドキュメンタリー。内容はNHK Eテレにて放送された同名タイトルを新たに撮影し、再編集したものである。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 鎌倉の自宅で「いちご色」の壁や本棚に囲まれ、カラフルなファッションと個性的な眼鏡がトレードマークの児童文学作家の角野栄子さん。そのユーモアと想像力で260冊を超える作品を生み出し、代表作『魔女の宅急便』では数多くの受賞を獲得してロングセラー、さらには「児童文学のノーベル賞」と称される国際アンデルセン賞に日本人としては3人目の受賞を飾り、華やかな作家活動を送っていた。その一方、5歳で母を亡くして戦争を体験したり、24歳の時に夫と共にブラジルへ渡り、35歳で作家デビューするなど、波乱万丈な人生を歩みながら、持ち前の冒険心と好奇心で幾多の苦難を乗り越えてきた。「想像力こそ、人間が持つ一番の魔法」と語る角野栄子さんとは何者なのか?88歳のキュートな魔女が、老いや衰えさえも逆手にとって今もなお、夢いっぱいな物語を生み出す秘訣とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 角野さんが持つ、目に見えるもの全てからインスピレーションを受けて物語を作り上げてしまう感性と創造力に、観てる我々も日々の生活に彩りをもたらすヒントを持ち帰れる作品。同じものでも違うように見えてくる感性を与える体験は三宅唱監督作のようである。

 角野さんが作家になる以前のブラジル移住時代といったルーツにも迫り、ブラジル人のルイジンニョ少年と過ごした日々が、今日までの執筆活動の原動力となっていることが、ありのまま映されるドキュメンタリーならではの真実性と感動をもって伝わってくる。角野栄子さんを構築している成分がよく分かる。

 全編に渡って角野さんがチャーミング。年齢を感じさせないし、想像の世界に居る少女のようであった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

コット、はじまりの夏

(C)Insceal 2022

公 開 日  :1月26日

ジャンル:ドラマ

監 督 :コルム・バレード

キャスト:キャサリン・クリンチ、キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、マイケル・パトリック 他

 

概要

 ドキュメンタリー作品を中心に数々の受賞を果たしてきたコルム・バレードの長編デビュー作。1981年のアイルランドを舞台に、9歳の少女コットの成長とはじまりを描いたヒューマン・ドラマ。本作はアイルランド語映画としては歴代最高の興行収入を記録したほか、第72回ベルリン国際映画祭ではグランプリ、第95回アカデミー賞ではアイルランド語映画初の国際長編映画賞をノミネートした。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中でひとり静かに9歳の少女コットは、妊娠した母親が出産するまでの夏休みを遠い親戚夫婦のキンセラ家のもとで過ごすことになった。寡黙なコットを優しく迎え入れるアイリンに神を梳かしてもらったり、口下手で不器用ながらアイリンを気遣う夫のショーンと子牛の世話を手伝ったり、2人の温かな愛情をたっぷりと受け、はじめは戸惑っていたコットの心境にも変化が訪れる。緑豊かな農場での暮らしに、今まで経験したことのなかった生きる喜びに包まれ、自分の居場所を見出すコット。いつしか本当の家族のようにかけがえのない時間を3人で重ねていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 子牛は母乳を飲まずとも粉ミルクで育てられる。同様に、直系血族ではない人間が世話をせずとも子供は育っていける。何度も語り継がれているテーマだけど、本作は真に迫る威力があった。言葉少なめで、内に秘めた及び内から漏れた態度で心情を伝えてくれるキャスト陣。光量の当たり加減が絶妙すぎて透き通った、美しい自然の風景。自然体と美しさで画面が彩られており、血の繋がりが不要であることに希望を見出せる。何よりも主人公コットが、郵便ポストまで全速力で走るという日課が号泣必至の感動に繋がる演出とシークエンスはエモーショナル過ぎる。観る者の心を必ず打つ。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

バッドランド・ハンターズ

Netflix

公 開 日  :1月26日

ジャンル:スリラー、アクション

監 督 :ホ・ミョンヘン

キャスト:マ・ドンソク、イ・ヒジュン、イ・ジュニョン、ノ・ジョンウィ 他

 

概要

 2024年1月5日に日本で劇場公開されたイ・ビョンホン主演の『コンクリートユートピア』と同じ世界観を用いたスリラー作品。『コンクリートユートピア』はスリラー・ドラマだったが、本作はサバイバル・アクションに重きを置いている。主演はアクション俳優として根強い人気を誇るマ・ドンソク。

 

あらすじ

 世界を襲った未曽有の大災害により一瞬で廃墟と化した韓国のソウル。大災害から生き延びた巨漢の男ナムサンと青年ジワンは狩りで食料を獲得したり、村に集まる人々と物々交換したりしながら生活していた。

 ある日、村に遠方に位置するアパートで暮らす者たちが訪れる。ナムサンや村人たちの間では、アパートは生きるために必要なものが完備されており、楽園だと噂されていた。アパートに暮らす者たちは「有望な若者の未来を確保するため、10代の子供がいる家庭にアパートの暮らしを提供したい」というのが村を訪問をした理由であり、ナムサンとジワンと親しくしている少女スナにアパート暮らしを持ち掛けてきた。承諾したスナは祖母と一緒にアパートへ出立する。同時に、狩りに出かけていたナムサンとジワンは得体の知れない者たちから襲撃を受ける。その者たちはスナを連れ出したアパート暮らしの連中であり、スナの身の危険を感じたナムサンとジワンもアパートへと出立する。

 

感想

 本作も『コンクリートユートピア』と同様、極限状態に陥った人間が良心を放棄して狂気に染まる様を描き、それに対して如何なる時も良心を捨てないようにと心意気を語る作品になっている。だが、アプローチは全く違う。『コンクリートユートピア』は心理的および精神的に描いていたのに対し、本作は物理的およびSFを用いて描いている。『コンクリートユートピア』の人間たちの生存本能は『ミスト』や『福田村事件』に近い心理描写だったが、本作で描かれる生存本能はゲームや漫画の設定に近い。ノリ的には「俺は人間を辞めるぞー!ジョジョー!!」である。これだけの振れ幅が可能であれば、『コンクリートユートピア』をパターンA、本作をパターンBとして、今後も新たなパターンで世界観の膨らみが期待できる。

 『コンクリートユートピア』がドラマ主体だったのに対し、本作の主体はアクション。アクションに関しては、相変わらずマ・ドンソクが登場するだけあって圧巻の無双アクション。刃物でブッタ斬る。銃をブッ放す。拳でブン殴る。人体欠損に容赦がなく、逐一、マ・ドンソクがド派手に決めて爽快。しかし、カット割が多過ぎ&カメラがブレ過ぎという問題のダブルパンチで見づらい。それなのに、アクションの芸が細かい。せっかく芸を成したアクションがカット割の多さとカメラのブレにより、視認しづらくて見栄えがパワーダウン。演出と編集がミスマッチを起こしている。おそらく、本作のアクションを十二分に楽しむには、『NARUTO』のうちは一族のように写輪眼を開眼させて目で追いかける力を身につけるしかないだろう(笑)

 悪い点としては、マ・ドンソク演じる主人公が何者なのか全く説明がない点が挙げられる。本作のマ・ドンソクはアクションもコメディも平常運転である。それゆえ、本作を鑑賞する方が、マ・ドンソクがどのようなアクションを繰り出すのか&どのようなコメディ披露するのかを知ってる前提になっている。つまり、マ・ドンソクを知らない者にとって本作の主人公は「説明なくて、よく分からんけど、なんか強い人」にしか見えない。あまりにも配慮が不足。結局、『コンクリートユートピア』と同じ世界の作品なのに、「いつものマ・ドンソク映画」になっている。せめて、ソウル崩壊前に強さを明確に提示できる背景が必要だったと思われる。実は『エターナルズ』の一員だったとか、警察で強行犯係に所属していたとか(笑)

 『コンクリートユートピア』を鑑賞した者にとって、本作で登場するアパートやアパートに関する噂話にはニヤニヤを隠せない(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

ポップスが最高に輝いた夜

Netflix

公 開 日  :1月29日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :バオ・グエン

キャスト:ライオネル・リッチー、ブルース・スプリングティーン、ヒューイ・ルース、シンディ・ローパー

 

概要

 1985年、アフリカで発生していた飢餓や貧困問題を支援するため、アメリカの名だたるアーティストたちがレコーディングに参加して生まれたキャンペーン・ソング「We Are The World」に関するドキュメンタリー。レコーディング当日の映像の他、制作に携わったスタッフやライオネル・リッチーをはじめとするアーティストによるレコーディング前の準備やレコーディング当日の心境をインタビューで語るなどの新たな情報を網羅。どのように名曲が誕生したのか改めて知ることが出来る。

 

あらすじ

 特になし。

 

感想

 誰もが一度は聴いたり歌ったり、YouTubeにアップされたMVを鑑賞した名曲のエピソードを知れる作品。過密スケジュールなアーティストたちを集結させる大変さ。実力者が一堂に歌う中、その実力者たちの歌い方を導いたアーティスト。実はレコーディングに苦戦したアーティスト。互いを有名人視するアーティストたちの可愛さ。何よりも曲の歌詞の意味にある「私たちは1つ」の通り、我の強いアーティストたちを1つにしたレコーディング中の信条に名曲誕生のパワーを感じる。

 本作を通し、世界に音楽を届ける1つの方法を知ったことに加え、次世代のアーティストに方法を伝えるような作品に思えた。本作の公開は2024年で「We Are The World」のリリースは1985年であり、既にいくつもの製作秘話が語り継がれてきた。だが、情報化社会が発展した2024年に改めて語り直すことで、今後、音楽によるチャリティ活動を立ち上げる際の指標になるのではないかと音楽素人ながらも感じたところであった。それでも、大勢のスタッフやアーティストを取り揃えるのは至難の業だけど。

 レコーディング中、曲のMVと重なる映像が多々あり、MVが好きな方にとってはテンション爆上げポイント。何度も繰り返し歌ってる最中、MVと本作の映像がシンクロすると同時に原曲の歌声が飛んでくるのは歓喜の極みである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

【まとめ】2023年 日本劇場公開の映画(12月編)

 この記事は2023年12月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

ナポレオン

© 2023 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

公 開 日  :12月1日

ジャンル:伝記、ドラマ

監 督 :リドリー・スコット

キャスト:ホアキン・フェニックス、バネッサ・カービー、タハール・ラヒム 他

 

概要

 巨匠リドリー・スコット監督と『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが『グラディエーター』以来23年ぶりにタッグを組み、フランス英雄ナポレオンの人物像を新たに解釈した歴史スペクタクル。ナポレオンの妻ジョゼフィーヌ役には『ミッション:インポッシブル』シリーズでホワイト・ウィドゥを演じたバネッサ・カービー、脚本は『ゲティ家の身代金』でもリドリー・スコットとタッグを組んだデヴィッド・スカルパなど、超一流のキャストとフィルムメーカーが集結した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り、着実な昇進で頭角を現していく軍人ナポレオン。完全無欠な男の姿に軍部や国民は支持を示すが、家庭内では1人の男として最愛の妻ジョゼフィーヌと愛憎の二面性を帯びた夫婦生活を送っていた。やがてナポレオンは皇帝にまで上り詰めて更なる権力を手にし、軍を指揮していく。だが、いつしかフランスを守るための戦いが、諸外国を侵略するための戦いに変化していき、勝利を重ねる英雄となる一方で何万人もの戦死者を生み出していく。巨大なる権力を握りしめ、愛と憎しみが入り混じる夫婦生活を送ったナポレオンの生涯が綴られる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 フランスの英雄ナポレオンの台頭から最期に渡る激動の生涯を通して人物像を語る歴史スペクタクル。

 当時の栄華を示す、煌びやかな衣装・装飾品・建物の内装。数百人以上の兵士が隊列を組み、砲撃が轟くダイナミックな戦場。権力・戦場・愛する者のしがらみで心境が移ろいながらも妻に愛を捧げるナポレオンを好演したホアキン・フェニックス。ナポレオンと愛憎による静かな戦争を繰り広げ、特別な存在となる妻ジョゼフィーヌを好演したバネッサ・カービー。豪勢な美術、大迫力の合戦、キャスト陣の好演といった一流の素材を取り揃え、その場の雰囲気にピッタリなBGMを逐一導入し、見事な編集力でナポレオンの生涯をまとめ上げて人物像を浮かび上げている。本作ではナポレオンを世間的に評される英雄および戦上手として見上げる存在に描かず、「一時代を築いたカリスマも、感情を持つ1人の男だった」といった哀愁や親近感が沸いてくる。偉人ナポレオンの物語というよりも、人間ナポレオンの物語と本作を表するのが正確である。英雄や天才と称された者と言えども、同じ人間に変わりはないと思わせてくれる。凡人から一線先の立場に追いやられる偉人の見方を180度変えてくれる作品。

 ホアキン・フェニックスが素晴らしい。開幕直後からナポレオンを凡庸な人間であることを体現している。1発目の合戦シーンから、軍の役職に見合った威厳を放出しながらも「こいつ今まで運で生き残ってきただろ」と思わせる及腰な立ち回りを見せてくれる。砲撃の指示を出した後、誰よりも真っ先に耳を塞ぐ手つきの早さは、まさにそう。そんな男が権力の倍々ゲームにハマってから見え張りを膨らませていくグラデーションも見事。また、妻を演じたバネッサとの息を合わせた愛憎劇も素晴らしい。権力の渇望と愛の欲求を満たすため、共依存となる様は特別な関係性として奥深い。

 合戦シーンが素晴らしい。広大な土地の中に数千人の演者を動員し、最大11台のカメラで撮影した戦場は圧巻。何百人から成る隊列を整えて動き回る兵士たち。轟く大砲の砲撃音と着弾音。飛び散る血飛沫と部位欠損。それらが入り乱れる戦場は臨場感の塊である。ナポレオンの人間性に重きを置いた作品なのに一切の妥協がない。良質なドラマを見れる上、大迫力の戦闘も見ることが出来るのは実にリドリー・スコット監督作らしい。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

バッド・デイ・ドライブ

(C)2022 STUDIOCANAL SAS - TF1 FILMS PRODUCTION SAS, ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :12月1日

ジャンル:サスペンス

監 督 :ニムロッド・アーントル

キャスト:リーアム・ニーソン、ジャック・チャンピオン、リリー・アスペル、エンベス・デイビッツ、ノーマ・ドゥメズウェニ、マシュー・モディーン

 

概要

 スペイン映画『暴走車 ランナウェイ・カー』のハリウッド・リメイク。主演は本作で映画出演101本目となるアクション俳優のリーアム・ニーソン。いつも凄腕キャラが演じてきたリーアムだが、本作では全くスキルのない一般人を演じる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 いつもと変わらぬベルリンの朝。金融ビジネスマンのマットは、子供たちを学校に送り届けるため、自慢の新車のシートに腰を下ろした。運転を始めると着信があり、声の主は「その車に爆弾を仕掛けた。降りてはいけない。通報してもいけない。これから伝える指示に従わなければ爆破する」と告げる。犯人の正体、要求、目的のすべてが不明のまま。戸惑いながらもドライブを続けるマットの運命は…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 シチュエーションが良い作品。

 まずは、爆弾の設定。車の椅子に座ることで作動し、立った瞬間に即爆破。さらに、警察に通報した瞬間にも即爆破。さらに、命令通り行動しなければ即爆破。破ることの出来ない制約が3つも用意されることは、それだけ死のスイッチが在ることであり、緊張感が膨れ上がる。また、雁字搦めの状況を作り出して閉塞感を生んでいる。身動きも制約されたことにより、観る者に「この状況から、どうするの?」と展開を一切、予想させない話運びが可能となり、ひたすら展開を目で追わせる構成に仕上がっている。

 次に、犯人。声のみで一切、姿を現さない。そして、何よりも目的が一切、分からない。犯人像を形成するピースが存在せず、観る者に推理する余地を全く与えない。「お前は一体、何者だ」と疑問を抱く主人公の心情に観る者も同化させられる。それにも関わらず、犯人に繋がる伏線を実は張っている点が抜かりない。

 総論すると、爆破のルールと見えない犯人が良いシチュエーションを作り上げている。3つもある制約が緊張感、そして身動きの取れなさを生み出し、「この状況から、どうするのか?」と観る者の期待を膨らませる。犯人の姿形や目的が不明なことにより、推理させる意識を与えない。身動きの取れなさと犯人の分からなさが、先の読めない(というか読ませない)展開づくりを担っている。それにより、観る者は本作で勃発する事態を夢中で追いかけることになる。しかも、その中で家族物語にも話を広げたり、将来的に問題となる金銭による格差やコンプレックスといった社会的側面を提示させたりと、サスペンス以外にもシームレスにテーマを繋ぐ手際の良さがある。これらの繋ぎ方も、先の読めない展開づくりによる効用であろう。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

映画 窓ぎわのトットちゃん

(C)黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会

公 開 日  :12月8日

ジャンル:アニメ

監 督 :八鍬新之介

キャスト:大野りりあな、小栗旬、杏、滝沢カレン役所広司

 

概要

 第二次世界大戦が終わる少し前の激動の時代を背景に、黒柳徹子さんの幼少期を自伝的に描いた小説『窓ぎわのトットちゃん』がアニメーションとなって映画化。監督は『映画 ドラえもん』シリーズを手掛けた八鍬新之介さん。制作は『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』を手掛けてきたシンエイ動画トットちゃんを始めとしたキャラクターデザインを金子志津枝さんが担当する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 舞台は第二次世界大戦の影が忍び寄る昭和時代の東京。好奇心が旺盛すぎるうえに落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃん。その後、自由が丘にある「トモエ学園」という学校に新しく通うことになった。校長の小林先生はトットちゃんに「君は、本当は、いい子なんだよ」と声をかけ、トットちゃんの好奇心が向くまま自由な学校生活を送らせる。こうして、トットちゃんの元気いっぱい、すべてが初めてだらけの日々が始まる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 服も建物も明らかに昭和の装いなのに、主人公のトットちゃんを初めとする登場人物たちやトットちゃんが通う学校の方針は現代より先を進んでいるように見えた。戦時中の軍隊の名残りを引きずる現代の教育ではトットちゃんのような好奇心旺盛で落ち着きの無い個性的な子供は俗に言う"普通の子供"になるよう矯正される。だが本作では、黒柳さんの両親や恩師は個性を封殺することはしない。その結果、トットちゃんは伸び伸びと生活し、好奇心旺盛すぎるのは自主性の裏返しであり、落ち着きの無さは行動力の高さの裏返しであると感じたところだった。同時に、本作で描かれる自由自在に動き回るトットちゃんたちの姿を常とする光景は、はぐれ者を良しとしない統率的な現代教育では失われたものだと思った。そういった意味で2023年に劇場公開する意義があった。本作の物語は、トットちゃんが自由自在に生きれたから体験できた事であり、その体験が私達に感動をもたらしており、登場人物たちに感謝の思いが募る。また本作の後半では忍び寄る戦争に対する子供たちのリアクションが描かれており、その様相を見れば2度と戦争を起こしたくない気持ちが沸き立つ。本作は過去の教育と戦争を持って、子供たちに明るい未来を繋げていく作品だと思った。

 絵に関しては人間の皮膚に所々、赤みを帯びてるのがリアル。

 黒柳徹子さん自身がナレーションを務めたことで真実の物語として没入感がある。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

公 開 日  :12月8日

ジャンル:青春、戦争

監 督 :成田洋一

キャスト:福原遥、水上恒司、伊藤健太郎、嶋崎斗亜、出口夏希松坂慶子

 

概要

 SNSを中心に「とにかく泣ける」と話題になり、累計発行部数90万部を突破した汐見夏衛さんによる同名小説の実写映画化。主演はNHKドラマ『舞いあがれ!』で主人公を務めた福原遥さんと、『中学聖日記』で鮮烈なデビューを果たした水上恒司さん。主題歌は福山雅治さんが務め、本作のために新曲『想望』を書き下ろし、映画のラストを彩る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合。ある日、進路を巡って母親の幸恵とぶつかり家出をし、近所の防空壕跡に逃げ込む。だが、落雷の音と共に目を開けると、1945年の6月つまり第二次世界大戦下の日本へタイムスリップしていた。百合が戦時中の町を彷徨っていると、偶然通りかかった軍人の彰が救いの手を差し伸べ、なんとか住処を手に入れる。その後も彰と関わり合い、百合は段々と彰に惹かれていく。しかし、彰は特攻隊員であり、数日のうちに戦地へ飛び立つ運命だった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 これでいいのか…。タイムスリップ後の町並みが、どう見ても映画村らしきセットでスケールが極小。タイムスリップしたことに妙に納得が早すぎる主人公。あきらかに身なりが違う上に戦時中の知識もない主人公を速攻で受け入れる町の人々。特攻隊員たちのノリが明らかにキラキラ青春映画のそれであり、戦争を扱う上で若干ながら不謹慎。(特に伊藤健太郎さんが顕著。事故を起こした後に『冬薔薇』で挽回したから、こんな役しないで(笑))主人公が恋する特攻隊員による主人公への距離の詰め方がバグっており、水上恒司さん以外が実行した場合はキモ男に認定される。近年の邦画特有の説明台詞はもちろんのこと、独り言で感情を説明するのも完備。あまりにも投げやり。映画としての完成度は、ちょっと…。

 とはいえ、ティーン向け映画に設計して若者に反戦を伝えたことは良き試み。現代人の主人公が戦時中にタイムスリップして本場の特攻隊と遭遇し、主人公と一緒に戦時下の狂気と命の尊さを知る事が出来るようにはなっている。作品としての完成度は低いけど、戦争を体験した日本人が少なくなっている今、戦争の悲劇を忘れないために新作として映画館で上映することには意義がある。まあ、それなら他の戦争映画をリバイバル上映してくれよと思いもするけどね。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計9個

 

ウォンカとチョコレート工場のはじまり

(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

公 開 日  :12月8日

ジャンル:ミュージカル、ファンタジー

監 督 :ポール・キング

キャスト:ティモシー・シャラメヒュー・グラント、キャラー・レイン、キーガン=マイケル・キー、パターソン・ジョセフ 他

 

概要

 ジョニー・デップ主演で大ヒットした『チャーリーとチョコレート工場』に登場した工場長ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を建設する以前の頃を描いた前日譚。ジョニー・デップが演じたウィリー・ウォンカを本作ではティモシー・シャラメが演じる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 誰もが味わったことがない「魔法のチョコレート」を作り上げる職人ウィリー・ウォンカ。彼は亡き母と約束した「チョコレート店を開く」という夢を叶えるため、一流チョコ職人が集まる街を訪れた。ウォンカが作る魔法のチョコレートは街の人たちを虜にし、ウォンカの才能は確実に知れ渡った。だが、街の”チョコレート組合”に所属する3名の職人がウォンカの才能に嫉妬し、ウォンカを街から追い出そうと画策する。さらには、ウォンカのチョコレートを盗むウンパルンパというオレンジ色の顔をした小人が現れる。果たして、ウォンカは無事にチョコレート店を開くことができるのか?

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 チャーリーとチョコレート工場』(以下、前作)の予習は不要。1つのミュージカル・ファンタジーとして楽しめる作品。あと、邦題に騙されないで。前作に登場した工場を建設する物語ではない。

 スタイルは前作と打って変わった。前作は工場内に設置された空想科学によるアトラクション体験と、その合間に挿入されるミュージカルを楽しむスタイルだった。対して本作はバリバリのミュージカル・ドラマ。ウォンカが作る魔法のお菓子が少ない&工場というデカいフィールドが使えない以上、次から次へとキャラクターたちを歌わせては踊らさせる話運びに設計したのは賢明。前作は「この異空間な工場で次は何のギミックが発動するのか?」というワクワク感が観る者の目を引きつけていたが、それを本作では使えない以上、ミュージカルが引力となる。多人数によるキレキレのダンス。後のウォンカの片鱗を彷彿させるVFXと美術。グイグイ動くカメラワーク。バシバシかつシームレスに移り変わるカット。そして、チョコレート。多くを兼ね備え、前作以上に躍動感あふれるミュージカルを隙あらば連打し、視覚と聴覚、時には味覚や触覚を大いに刺激して観る者の目を離さない作品となった。見事、スタイル・チェンジに成功してる。ただ、日本語吹き替え版だと、吹き替え後の歌詞と俳優陣の口の形が明らかにズレている箇所が見受けられる。しょうがないけどね。

 ジョニー・デップからティモシー・シャラメに変わっても、ウィリー・ウォンカがちゃんとウィリー・ウォンカしてる。前作にあった、言葉を発して後すぐさま訂正を入れてくる独特な喋り方が健在。ジョニー・デップ特有の話術かと思ったが、ティモシーにも継承されてウォンカのキャラクター像を維持している。前作になかった点としては、チョコレートに対する熱意が確かに感じられること。亡き母親とのヒューマン・ドラマを絡め、初期衝動やオリジンを描いたことでウォンカのキャラクター像が深まった。そして、工場を建設する説得力になっている。ただ、前作にあった、他人に対する無情な仕打ちは見受けられず、何処で闇落ちするのだろうと気になるところである。

 ウンパルンパを演じたヒュー・グラントが相変わらず、面白おじちゃまを好演してる。2023年は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、『オペレーション・フォーチュン』と続いてユーモラスな存在感を放っている。(どれも似たような感じだろとか言うな(笑))前作で多種多様なウンパルンパを器用に演じたディープ・ロイと打って変わり、ちょこまか動き回ったり難易度が低そうなダンスを披露したりと、ヒュー・グラントの面白おじちゃまにピッタリなキャラクターとなっている。

 名女優オリビア・コールマンにも着目。童話にで目にかかる、ふてぶてしい意地悪クソババアを演じている。賞レースを席巻する女優がここまでやってくれるとは誰もが夢に思わなかっただろう(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

市子

(C)2023 映画「市子」製作委員会

公 開 日  :12月8日

ジャンル:ミステリー、ドラマ

監 督 :戸田彬弘

キャスト:杉咲花若葉竜也森永悠希、倉悠貴、中田青渚、渡辺大知、宇野祥平中村ゆり

 

概要

 監督を務めた戸田彬弘さんが主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品にして、サンモールスタジオ選定賞2015にて最優秀脚本賞を受賞した『川辺市子』の実写映画化。

 痛ましいほどの過酷な家庭環境で育ちながらも、「生きること」を諦めなかった主人公・川辺市子を演じるのは杉咲花さん。抗えない境遇に翻弄された彼女の壮絶な反省を凄まじい熱量で体現。芝居を超えて役を生き抜く姿を鮮烈に観る者の心に焼き付ける。共演者は若葉竜也さん、森永悠希さん、渡辺大知さん、宇野祥平さん、中村ゆりさんたちが名を連ね、市子の底知れない人物像や過去が第三者の目線から描かれていく。どのような環境下であっても、自分の”存在”と向き合い続けたひとりの女性の生き様が、観る者の心を打ちのめす衝撃作。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 川辺市子は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズを受けた翌日に、突然と失踪。途方に暮れる長谷川の元に訪れたのは、市子を捜しているという刑事・後藤。後藤は、長谷川の目の前に写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか?」と尋ねる。市子の行方を追って、昔の友人や幼馴染、高校時代の同級生と、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていく長谷川は、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。果たして、「川辺市子」とは何者なのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 失踪した市子が本当は全くの別人かもしれないというスタートは『ある男』的。真相に近づくほど社会的側面が浮き上がるのは『さがす』的。失踪した女性の得体の知れなさに呑み込まれていく感覚は『ゴーン・ガール』的。ミステリーの体で風呂敷を広げ、畳む際に人間から生まれた暗部が付着する系良作たちの混合体。故に本作も良作だった。

 杉咲花さん演じる市子の真相に触れる手札の切り方や後出しジャンケンが巧妙。手が届かなそうな痒い所を掻けたと思いきや、また痒みを催し、ずっとムズムズを残して市子の謎にのめり込ませる。ちゃんと痒い所をピンポイントで掻けるのは後半になってから。それまでの時系列操作や小出しの情報が良き塩梅。誰もが食い入るように市子の真相に吸い込ませていく。

 何と言っても、本作を大きく牽引したのは市子役の杉咲花さん。表情やセリフ、そして行動の見せ方が市子は何者なのかという核心に触れられそうで触れられないムズムズを植え付ける。また、目力が強い。眼光がギラギラしてるのではなく、『死刑にいたる病』の阿部サダヲさんのように空虚な黒目であり、その目が渦を巻く穴に見えて観る者は吸い込まれていく。劇中で「市子とは…」という謎は解けるのに、観終わっても「市子とは…」と脳内で反芻してしまう。杉咲花さんが市子を演じたのではなく、市子という人間が確実に居た。そう思わせるほどリアリティの高い演技だった。若葉竜也さん、宇野祥平さん、中田青渚さんは安定した存在感を残していた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

VORTEX ヴォルテックス

(C)2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - WILD BUNCH INTERNATIONAL - LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM ARTEMIS PRODUCTIONS - SRAB FILMS - LES FILMS VELVET - KALLOUCHE CINÉMA Visa d’exploitation N° 155 193

公 開 日  :12月8日

ジャンル:ー

監 督 :ギャスパー・ノエ

キャスト:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ、キリアン・デレ 他

 

概要

 新作のたびに実験的な試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた鬼才ギャスパー・ノエが、「病」と「死」をテーマに自身の経験から、誰もが目をそむけたくなる死ぬことの現実を真正面から冷徹に描いた新境地。

 主演は80歳にして初主演を果たしたホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントと、『ママと娼婦』の娼婦役で鮮烈な映画デビューを飾り伝説的な女優となったフランソワーズ・ルブラン。演技とは思えないふたりの奇跡の名園に魔を奪われずにはいられない。スプリットスクリーンの画面分割によって、老夫婦の日常が2つの視点から同時進行で映し出されていく。心通わぬ家族、不測の出来事、やがて訪れる死。我々は、暴力なき恐怖の渦に吸い込まれ、”死ぬまで”を追体験する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 映画評論家である夫と元精神科医認知症を患う妻。離れて暮らす息子は2人を心配しながらも、家を訪れ金を無心する。心臓に持病を抱える夫は、日に日に重くなる妻の認知症に悩まされ、やがて、日常生活に支障をきたすようになる。そして、ふたりに人生最期の時が近づいていた…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 心臓病を患う夫。認知症を患う妻。着実に死出の旅立ちへと向かう2人を2分割のスプリット・スクリーンで捉えた「死」の映画。

 死ぬとは孤独である。自分の死には、家族だろうと他人は介在せず、誰もが孤独に死出の旅立ちを迎える。それは誰もが平等に訪れる。本作は、老いて死ぬとは何たるかを観る者に知らしめる驚愕のデス・シミュレーションである。作品の完成度として傑作ではあるが、覚悟を要する。

 老夫婦を演じたダリオ・アルジェントとフランソワーズ・ルブラン、そして2人の息子を演じたアレックス・ルッツの演技が素晴らしい。本作の台本に台詞はほぼ存在せず、カメラがワンカット長回しで撮り続ける中、それぞれが即興で作り上げており、本当に実在するような家族に仕立て上げている。

 本作は2つの意味で楽しくない作品である。(酷評ではない。)
 1つ目の楽しくない意味は、観てて辛くなること。本作は、老夫婦の死にゆく姿を2時間以上の尺を十分に使って「死の孤独」を冷徹に映している。自身の心臓病と妻の認知症に悩まされ、人生1度きりの死を華々しく遂げられそうにない夫。認知症により、死の距離感はおろか死の概念さえも消滅してしまったかのように死に向かう妻。死に対する意識の有無で夫婦といえども異なる死の向かい方を描き、「あなたの死に方も、こうなるかもよ」と静かに突き付けてくる。そして、死ぬことは孤独であることも提示している。本作は、ほぼ全てが2分割のスプリット・スクリーンで展開される。登場人物1人1人をカメラで追わせることで、いくら家族で一緒に時間を過ごそうとも結局は自分の時間を生きて死ぬだけという孤独を追随させている。加えて、劇中の物語において、夫は意識が働く上での周囲との孤独、妻は認知症による無意識での傍から見た孤独をそれぞれ用意し、老いたる者としての孤独も描かれている。「老いて死に向かうとは、こういうことだ」と将来の自分を見てるようで辛くなる内容である。だが、死は誰にも平等に訪れるため、向き合いは避けられない。身体の自由が効くうちに、やりたいことは今のうちにやっておこうと思った。
 2つ目の楽しくない意味は、ストーリーに劇的な展開がなく淡々としており、些か退屈になってしまうことである。現実世界と同等の日常会話を長回しで映すため、画の動きが少ない。同じ絵面を眺め続けて飽きてくる。でも、本作は楽しさを全面に出す作品ではないので問題はない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

終わらない週末

Netflix

公 開 日  :12月8日

ジャンル:スリラー

監 督 :サム・エスメイル

キャスト:ジュリア・ロバーツマハーシャラ・アリイーサン・ホーク、マイハラ、ケビン・ベーコン、ファラ・マッケンジー、チャーリー・エバンス 他

 

概要

 特になし

 

あらすじ

 休暇中、別荘を借りてバカンスに訪れた一家。だが、突如として謎の事象および電波障害が発生し、携帯電話やパソコンが機能不全に陥る。しかも、その電波障害がサイバー攻撃らしく、実感はないがアメリカが”何か”に攻撃されているらしい。不安となる一家のもとに、別荘の持ち主である父子が訪問してくるが…。

 

感想

 一家揃って休暇日を別荘でゆっくり過ごそう!そう意気込んでいた家族の前に得体の知れない"何か"が着実に侵略していくリアル志向スリラー映画。

 全ての電波が遮断され、登場人物たちが"何か"の情報収集が出来ない&視聴者に"何か"の情報を全く与えない設定が極限の緊張感を作っている。"何か"が近づいている。その"何か"が何かを起こしている。そして、"何か"は着実に何かへ向かっている。でも、"何か"の全容は掴めず、事象だけが現れる。あまりの情報量の少なさに「日常を奪うものが現実に起きたら、こんな感じになるのか…」と不穏なまま極限状態に陥っていく体験をする事が出来る。

 "何か"による事象が発生するタイミングが全く読めない。現実世界の災害やテロのように不意打ちで襲い、耳を突き刺す音響・今にも世界に激震が走りそうな劇伴・壁をも越えていく縦横無尽なカメラワークを用いて不安感を大いに煽って身震いを起こさせる。また、発生する事象が現実世界で見たことないけど、現実世界でも起こせそうな事象ばかりで逆に嫌悪感を帯びている。特に聴覚に対する嫌悪感は大きい。

 どんな事象に見舞われても、いけしゃあしゃあな登場人物たちが逆にリアル。案外、こういう事象が現実に起きた際はエンタメ作品のように緊張しっぱなしではない。事象が収まった後は会話を重ね、また事象が起きた際に緊張と不安の世界に戻されていく。現実世界でも同様のサイクルが劇中で行われている。

 観終わった後、無性に地下室を作りたくなる映画でもある。さては住宅会社の陰謀だな(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

屋根裏のラジャー

(C)2023 Ponoc

公 開 日  :12月15日

ジャンル:アニメ、ファンタジー

監 督 :百瀬義行

キャスト:寺田心鈴木梨央安藤サクラ仲里依紗杉咲花山田孝之高畑淳子寺尾聰イッセー尾形

 

概要

 長編第一作『メアリと魔女の花』が150の国と地域で公開され、世界で高い評価を獲得したスタジオ・オポノックが、イギリスの詩人兼作家のA.F.ハロルドの小説『ぼくが消えないうちに』を基に映画化した新たな長編アニメ。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 子供たちの想像が生み出す、誰にも見えない空想の友達「イマジナリ」。その1人であるラジャーは少女アマンダの想像が生んだ少年だった。そんなイマジナリには逃れられない運命があった。それは、子供たちに忘れられると存在が消えていくことだった。驚愕の真実を知って失意に陥ったラジャーだったが、道中で出会ったイマジナリのジンザンの導きにより、かつて人間たちに忘れ去られたイマジナリたちが身を寄せ合って暮らす街に辿り着く。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 圧巻の映像体験。いや、"想像"体験。想像という概念を十二分に活かし切っている。想像ゆえに狭い建物の一室から想像上の広大な街や自然の世界を創造でき、想像ゆえに想像上の生き物・建物・自然の生命が芽生えて動き出す光景は躍動感に溢れている。無限大に生まれてくる想像の産物を楽しめる。また、現実の世界が形を変えて想像の世界に移行するシームレスな切り替わりはアニメならでは。アニメのパワーを感じる。

 私自身、もう子供ではないから計り知れないが、子供と大人で見方が大きく変わる作品だと思う。作品の設定自体、想像力を膨らませ続ける子供と現実を知っていくうちに想像力を失った大人といった対比があり、各々の視点を丁寧かつ感覚的に描いている。それゆえ、子供たちは想像上の世界や生き物を創造する劇中の子供たちに、大人たちは想像を忘れてしまった劇中の大人たちに共感が傾くと思う。現代の子供たちが想像上の世界を創造してるかは知らないし、大人である私自身も子供時代に想像上の世界を創造していたかは不明だけど。

 とはいえ、子供も大人も共通して受け取れるのは、想像上の世界は決して自分を裏切らないことである。今この瞬間に世界があっても、大人になって世界の存在すら認知してなくとも、想像は誰もの如何なる時に裏切らない癒しを与えてくれることを提示し、想像の普遍性を伝えている。現在、想像上の世界を認識してるか認識してないかの違いはあれど、本作は、人間の機能として想像力を持つ誰もの物語になっている。

 若干、気になったのは「人間がイマジナリを忘れる→イマジナリが消滅する」という設定。消滅の兆しが発動してから消滅するまでのタイムリミットが不明であり、消滅の危機が訪れても全く焦りを感じない。タイムリミットがなくてもいいから、完全消滅する細かな条件があった方が良かったと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ウィッシュ

(C)2023 Disney. All Rights Reserved.

公 開 日  :12月15日

ジャンル:アニメ、ミュージカル

監 督 :クリス・バック、ファウン・ビーラスンソーン

キャスト:アリアナ・デボーズ、クリス・パイン、アラン・テュディック、生田絵梨花(日本語吹き替え)、福山雅治(日本語吹き替え)、山寺宏一(日本語吹き替え) 他

 

概要

 ウォルト・ディズニー・カンパニーが創立100周年を迎え、その記念として『アナと雪の女王』のスタッフ陣が手掛けたミュージカル・アニメ。ディズニー作品が描き続けてきた”願いの力”を真正面からテーマとして描く集大成的な作品。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 どんな願いでも叶えてくれる魔法の王国・ロサス。その国で暮らす少女アーシャは、100歳を迎える祖父の願いが叶えられることを待ちわびていた。だがアーシャは、ロサスの王・マグニフィコが魔法の力で国民の願いを管理しており、誰の願いを叶えるか、その願いは国にとって有益なのかを独断で決めており、多くの願いが叶えられないという衝撃的な事実を知ってしまう。みんなの願いを取り戻したい。そう決心したアーシャの目の前に、魔法を使える”願い星”のスターが助けに現れる。さらには相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャはマグニフィコに立ち向かう。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 躍動感に満ちたミュージカル・シーン。画面を自由自在に動き、煌びやかに彩る魔法の演出。大義名分が整備され、一理に適った悪役。多くの魅力が詰まって作品に浸れる一方、物語には疑問符が…。

 ミュージカル・シーンは大人数の振りと歌声が入り混じったり、キラキラした魔法の演出が施されたりと、視覚と聴覚を大いに刺激して楽しませてくれる。

 魔法で国民の夢を奪う悪役マグニフィコ王が良い。夢に対する思想がリアル。現実世界の大人同様、夢を叶えることの過酷さを理解しており、年を重ねた人ほど共感を抱く。そのため、先天性な根っからの悪ではなく、後天性な悪となっており、夢を奪う行為が一種の救済に思えるようになっている。現実を知ってきた大人の写し鏡のようなキャラである。それにより、奪ったの利用法を決める理由も納得を生んでいる。その他にも、ミュージカル・シーンでは意気揚々と歌って踊る姿が気持ちいい。あと、魔法を使う為かマーベルのドクター・ストレンジに似てる(笑)髪型も近いし、毛色がツートンカラーなのも共通点。その顔で腕を大きく振るって魔法を操る姿は、まさにドクター・ストレンジ(笑)なんなら、自身の胸先三寸で夢を叶えてくれる姿勢は『スパイダーマンNWH』のドクター・ストレンジを思わせたり(笑)

 楽しいシーンやキャラはあるのだが、本作の物語は数々の疑問符が沸く。

 広告や宣伝において本作は「国王から奪われた夢を取り戻す」という触れ込みをしている。間違いではないのだが、正確に言えば「国民は一定の年齢を越えたら国王に叶えたい願いを預け、国王が認めてくれば夢を叶えられる」となっており、国民たちは「国王から選ばれたら夢を叶えてくれるんだー。キャッホー」と不満を募らせている様子はない。むしろ、他力本願で夢を叶えてもらうことに疑問を持ってない。100歳になる主人公の祖父ですら疑問を持たず、「ワシの夢が叶うのは、まだかのぅ〜」と待ちの姿勢である。そのため、いざ主人公が国王から国民の夢を取り戻すとなってもノリにくい。「夢を預けられるって嫌だな」や「国王という他人が夢の実現の可否を決めるの嫌だな」という雰囲気づくりが整えられないので勢いがつかない。そもそも、国民全員が自力で夢を叶えようとしなかったことに対して反省をせずに王様を悪者扱いしてる。しかも、先述の通り国王ことマグニフィコが夢を預かる大義名分が整備されて牙城を成しており、それに対する主人公側の大義名分に突き崩すインパクトがない。その上、その大義名分を掲げた勧善懲悪モノになっている。自分なりに夢と向き合って国を治めようとしたマグニフィコに対して国民側が一切の調和を図らない。長年、マグニフィコを側で支えてきた妻でさえ夫の意志を汲み取らない。そもそも、マグニフィコから夢を叶えてもらった人もいるため、恩を仇で返している。互いに「自分の夢は自力で叶えよう」と持っていけば妥結が出来たはずなのに。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計12個

 

枯れ葉

© Eurospace 2023

公 開 日  :12月15日

ジャンル:ラブ・ロマンス

監 督 :アキ・カウリスマキ

キャスト:アルマ・ポウスティ、ユッシ・バタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイブ 他

 

概要

 2017年、『希望のかなた』のプロモーション中に監督引退宣言をしたアキ・カウリスマキが6年ぶりに帰還して作り上げたラブ・ストーリー

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 舞台はヘルシンキ。家族を亡くして独りで暮らしてアンサはスーパーで働いていたが、理不尽な理由からリストラされる。アンナと同じく家族のいないホラッパは、工事現場でなんとか生計を立てたいたが、酒に頼る生活を送っていた。ある夜、ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たして、ふたりの愛の行方は…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 洗練された匠の業を感じ取る作品。ライトトーンおよび脱色したような色調を組み合わせた室内の内装および登場人物の服装クリーンで雰囲気を醸成し、ベスト・ポジションを徹底した精緻な画づくり。少ないセリフだけでユーモアと恋の波打ちを伝えるシャープな物語。俳優陣の小さな動きだけでユーモアと恋の波打ちを魅せる全てがベストバウトな演技および演出。劇中の空気感を代弁するかのように絶妙なタイミングで流れる楽曲の数々。相手を一目見て始まる古典的なラブ・ストーリーなのに、一級品に研ぎ澄まされた匠の業が最後まで観る者の感性を引きつけ、味わい深さを残していく。他のカウリスマキ監督作は未見である私だが、カウリスマキの凄さが分かったような気がする。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

エストロ その音楽と愛と

Netflix

公 開 日  :12月20日

ジャンル:ドラマ

監 督 :ブラッドリー・クーパー

キャスト:ブラッドリー・クーパーキャリー・マリガン、マヤ・ホーク、ギデオン・グリック 他

 

概要

 ブラッドリー・クーパー監督作の2作目。実在の世界的な作曲家にして指揮者であるレナード・バーンスタインの人生を基にしたヒューマン・ドラマ。ブラッドリー・クーパー自身がレナードを演じ、レナードの妻にして女優であるフェリシアキャリー・マリガンが演じる。プロデューサーにはマーティン・スコセッシスティーブン・スピルバーグが名を連ねる。

 

あらすじ

 特になし。

 

感想

 夫婦それぞれが別々の業界に所属しても生じる夫婦格差とそれに伴う夫婦なのに孤独感を抱いてしまう苦悩が伝わり、いかに成功を収めた業界人とはいえ誰でも同様に人間関係で苦慮することを実感する。

 レナードを演じたブラッドリー・クーパーのメイクが素晴らしい。髪型はもちろんのこと、鼻までも本人に寄せている。『アメリカン・スナイパー』のクリス・カイルの時もだけど、ブラッドリーの顔面は応用力が高い。

 そんな小並感ある感想はこれぐらい。

 正直、本作は面白いとも興味深いとも思えない。なぜなら、脚本と用意したシーンが悪い。シーンが変わる度にストーリーが前に進み過ぎてる。前のシーンまで何も脈略がない出来事が突如として多発する。脈略がない以上、出来事の原因もよく分からないままだし、結果だけセリフで聞かされても観客は物語に乗りづらい。前のシーンまで何の脈絡や人物の素振りがないのに、「◯◯に苦悩してる」なんて言葉にされたところで登場人物の心情に観客が追い付けるわけがない。そのおかけで、ストーリーが壊滅に近い状態で面白みがない。ブラッドリーをレナードそっくりに仕立て上げ、名優キャリー・マリガンを妻役に起用したことが全く活かされてない。宝の持ち腐れ。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

PERFECT DAYS

(C)2023 MASTER MIND Ltd.

公 開 日  :12月23日

ジャンル:ドラマ

監 督 :ヴィム・ベンダース

キャスト:役所広司柄本時生、アオイヤマダ、仲野有紗石川さゆり田中泯三浦友和

 

概要

 ウォルト・ディズニー・カンパニーが創立100周年を迎え、その記念として『アナと雪の女王』のスタッフ陣が手掛けたミュージカル・アニメ。ディズニー作品が描き続けてきた”願いの力”を真正面からテーマとして描く集大成的な作品。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 東京渋谷でトイレ清掃員として働く平山は、静かに淡々とした日々を生きてきた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いていた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、平山は毎日を新しい日として生きていた。そんな平山の日々に思いがけない出来事が起きる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 毎日のルーティンを守って生きるトイレ清掃員の日常を映したヒューマン・ドラマ。

 自分の意識で行うルーティンゆえに変わらないこと。自分の意識外およびルーティン外ゆえに気づく些細な変わり事。変わらずに提供される楽しさと変わっていくことで刺激を受ける楽しさ。2つの異なる楽しさを日々味わっていくのがルーティンに生きることの醍醐味だと分かる作品。本作の監督を務めたヴィム・ヴェンダースキネマ旬報のインタビューでコメントした「映画は生きる上での理想像をみつける手助けである」の持論の通り、毎日を楽しく生きる理想の生活スタイルの1つを十二分に提示している。

 役所広司さんの映し方が秀逸。1つ1つの所作を様々なアングルで映すことで1つ1つの所作に奥行きが生まれ、人間の営みを感じさせる。時折、役所広司さんの1人称を映すことで、観客は役所広司さん演じる主人公の世界と同化する。セリフが少ないのに、今を生きる人間としての存在感を際立たせている。

 「トイレ清掃員という汚れ仕事なのに、出てくるトイレがキレイ過ぎる。便器に汚物が一欠片も付着おらず、リアリティに欠ける」とのレビューもあり、私自身も「確かに」と頷く。だが、本作の主人公はトイレ掃除を汚れ仕事と思っておらず、楽しく取り組んでいるように見受けられ、主人公自身にとってトイレはキラキラ光る聖地ゆえに便器を汚す必要性はなかったと思われる。それに、もし「汚れ仕事でも頑張るよ!」を信条に掲げるならば、嫌々ながらもトイレ清掃員を続ける主人公の同僚役の柄本時生さんを主人公にした成長譚になってたはず。なので、トイレがキレイなのも「これもこれで有りだろう」と思ってる。

 田中泯さん演じるホームレスの存在が歯痒い。主人公が田中泯さんを見て「今日も相変わらずだなー」と微笑んでる姿が上から目線に見えなくもない。せめて会話を交わして、ホームレスが自身の生き方を肯定する発言をしていればと思った。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

脱・東京芸人

(C)2023「脱・東京芸人」製作委員会

公 開 日  :12月23日

ジャンル:ドキュメンタリー

監 督 :安達澄子

キャスト:本坊元児、水口清一郎 他

 

概要

 吉本興業が2011年より、地方創生を目的として始めた「あなたの街に住みますプロジェクト」。そのプロジェクトの一環として、お笑いコンビ「ソラシド」の本坊元児さんが2018年10月に山形県へ移住。縁もゆかりもない土地に移住して奮闘する中、コロナ禍が始まったころの2020年3月に本坊さんは畑付きの古民家を「月100円」の家賃で借り、独学で始めた農作業の悪戦苦闘の様子をYouTubeで配信し始め、全国的に注目される。本作では、そんな本坊さんに密着し、お笑いと農業に向き合って生きている姿を追ったドキュメンタリー映画となっている。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 特になし。

 

感想

 コロナ禍でお笑いの仕事が減って不安が蔓延する最中、未知なる土地で未経験の農業に挑む度胸に感銘。無の状態から道を切り開いていく本坊さんが素敵。途方もない苦労や絶望的な状況を笑い話にしたり、自分に関わる誰もがプラスになることを念頭に考えたりと、本坊さんの人柄に触れられる。そんな本坊さんに対し、誠心誠意を込めてサポートするスタッフ、芸人仲間の方々、山形県西川町の方々に温かみを覚える。多くの方々に囲まれる光景を見て、本坊さんの積み重ねてきた人徳を感じたドキュメンタリーだった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個