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【まとめ】2024年 日本劇場公開の映画(8月編)

 この記事は2024年8月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2024年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

インサイド・ヘッド

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

公 開 日  :8月1日

ジャンル:アニメ

監 督 :ケルシー・マン

キャスト:小清水亜美大竹しのぶ多部未華子、横溝菜帆、小松由佳落合弘治浦山迅、村上、花澤香菜坂本真綾

 

概要

 2015年に公開された『インサイド・ヘッド』の続編。

 

あらすじ

 少女ライリーを子供の頃から見守ってきたヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの感情たち。ある日、高校入学という人生の転機を控えたライリーの中に、シンパイ、イイナー、ハズカシ、ダリィといった”大人の感情”たちが現れる。「ライリーの将来のために、あなたたちは必要ない」と豪語するシンパイの暴走により、追放されるヨロコビたち。巻き起こる”感情の嵐”の中で自分らしさを失っていくライリーを救うカギは、広大な世界の奥底に眠る”ある記憶”に隠されていた…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 人間の頭の中には5つの感情があるという世界を表現した『インサイド・ヘッド』の続編であり、思春期が訪れることで4つの新たな感情が芽生えるという正統なアップデートを加えてブラッシュアップされた作品。ありのままに生きていた幼少期と打って変わり、他人の目を気にし始める思春期を迎えた子供たちにこそ見て欲しい。本作は他人からウケるために心の奥底へ閉まった自分らしさを取り戻す物語であり、新たに加わった感情たちを用いて、思春期の生きにくさから解放してくれる。青少年の健全な育成に最適な教育的作品へと進化した。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

ツイスターズ

(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.

公 開 日  :8月1日

ジャンル:SF

監 督 :リー・アイザック・チョン

キャスト:デイジーエドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス 他

 

概要

 『ジュラシック・ワールド』の制作陣の下、アカデミー賞で多数の部門にノミネートされた『ミナリ』のリー・アイザック・チョンが監督したディザスター・ムービー。出演は、『ザリガニの鳴くところ』のデイジーエドガー=ジョーンズ、『トップガン マーヴェリック』のグレン・パウエル、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のアンソニー・ラモスといった新鋭たちが集結した。

 

あらすじ

 気象学の天才ケイトはニューヨークで自然災害を予測し、被害を防ぐ仕事に熱中していた。そんな中、故郷オクラホマで史上最大級の巨大竜巻が群れを成して異常発生していることを知る。過去の出来事がきっかけで竜巻に対してトラウマを抱えていたケイトだったが、学生時代の友人ハビから懸命に頼まれ、夏休みの1週間限定で竜巻を倒すために故郷へ戻ることに。そこで出会った知識も性格も正反対の竜巻チェイサーのタイラーたちと、無謀な”竜巻破壊計画”に立ち向かっていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 科学的な説明で視聴者に知識を入れた後、すぐに圧巻の竜巻映像で画面を覆ってくれるのが親切設計。竜巻体験型ムービーとして、スムーズな楽しみが出来る。だが、メインキャラの描き方が上手くない。デイジーエドガー=ジョーンズ演じる主人公のトラウマが転換期を迎えることなく消えてるし、グレン・パウエル演じるキャラクターはクレイジーな時と真面目な時のギャップが全く活きてない。
 竜巻の映像に圧倒される。フォンフォンと鳴る風音と共に、息つく間もない横風が視界を遮っていくのは臨場感がある。人や車を吹っ飛ばしていく怖さはもちろんのこと、さらには建物の壁を容易にペリペリ剥がしていく光景は脅威。ただ、竜巻にトラウマを持たせるほどガチガチな作りではなく、エンタメとしての見せ方になっており視覚的な楽しみが大きい。
 科学の話が分かりやすい。主要人物が竜巻のエキスパートばかりだが、ちゃんと竜巻に無知な人々を登場させたことにより、その人々に対しての解説が視聴者への解説になっている。特に序盤は、主人公たちと同行する新聞記者ベンの存在が大きい。竜巻の知識がないベンが、科学のエキスパートたちへ質問することにより視聴者へ解説される上、そのまま竜巻に突っ込んでくれるため「解説→体験」の流れがスムーズ。知識を得ながら本作の醍醐味を味わえる。視聴者と同等の目線を持つベンの役割は大きかった。
 本作のメインキャラとなるデイジーエドガー=ジョーンズとグレン・パウエル演じるキャラクターの描き方が上手くない。登場人物というのは物語の過程で成長し、最初と最後で変化するものである。だが、本作は成長ではなく、性格が急に変わったようにしか見えなかった。デイジー演じる主人公は竜巻に対してトラウマを持っているはずだが、それほど印象に残らないシーンをいくつか重ねたら勝手に雲散霧消してヒャッホーしてる。パウエルについては、命知らずでクレイジーな性格と、意外にも他人思いの真面目な性格を見せて、視聴者にギャップを与えるつもりのようだったが、出し方が悪かった。クレイジーな性格の中に真面目な性格が垣間見れれば上手くいったけど、物語の序盤から中盤までは10割近くクレイジー、物語の中盤以降はクレイジーが1割で真面目な性格が9割を占めてる。その結果、ギャップというより途中から性格が変わった人にしか見えない。そもそも、キャラクターのギャップというのは最終的に別の一面を見せれば良いだけでは済まされない。それにパウエルは『トップガン マーヴェリック』の終盤で目覚ましいギャップを見せつけることに成功したので、そのラインを越えることは容易いことではない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

赤羽骨子のボディガー

(C)2024「赤羽骨子のボディガード」製作委員会

公 開 日  :8月2日

ジャンル:漫画実写化、アクション、ラブ・コメディ

監 督 :石川淳一

キャスト:ラウール、出口夏希、奥平大兼、髙橋ひかる、遠藤憲一、土屋太鳳、安井順平

 

概要

 漫画家・丹月正光さんが週刊少年マガジンで連載した同名漫画の実写映画化。

 

あらすじ

 とある事情から100億円の懸賞金をかけられた高校生・赤羽骨子は、大勢の殺し屋から狙われていた。骨子に想いを寄せる幼馴染の威吹荒邦は、国家安全保障庁長官の尽宮正人から、秘密裏に骨子を護衛するボディガードに任命する。だが、驚くことにクラスメイト全員がボディガードだった!司令塔の染島澄彦、空手家の棘屋寧、罠師、スナイパー、ハッカー、詐欺師、柔道家、鑑識官、運転手、鍵師、配信者、スプリンター、技師、ギャンブラー、忍者、変装家、調教師、新体操、潜水士、剣士、医師、拷問官などのスペシャリストが揃い踏みしていた。果たして、威吹はクラスメイトたちと力を合わせて骨子を守り切ることができるのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 快作。2023年の邦画と並べるなら『Gメン』的ポジションの作品。全シーン全カットが面白いタイプの映画。アクションとコメディが、開幕数秒から最後の芯までパッキパキに冴え渡り、秒単位で面白さを提供している。そして何より、BGMの挿入や視覚効果といった編集の力が凄くて面白さを格段に引き上げている。面白いことを断続的に届ける本作の出来栄えを見て、編集の力量が如何に大事かを思い知る。
 主人公以外の登場人物全員が何らかのスペシャリストであり、1人1人が個性的。パッキパキにキメる編集の力も相まって、皆が爪痕を残している。だが、編集の上手さが反動にもなっている。というのも、本作は20人以上のスペシャリストが存在し、全員を魅せるとなれば短時間で次々と登場させる必要がある。そのため、短時間でキャラクターを魅せられるかどうかが俳優陣の演技力で左右されており、その差が如実に出ている。しかも、編集の上手さが俳優陣全員へ平等に配布されている以上、逆に演技の誤魔化しが効かない状態になっており、むしろ二次元的な世界観に適合する演技力の差がクッキリ見えてしまう。遠藤憲一さんや土屋太鳳さんといった実力派たちが見事な演技を披露するあまり、若手たちの演技に物足りなさを覚える。また、名のある俳優(長井短さんや中田青渚さんなど)が新人俳優並みの端役にキャスティングされており、宝の持ち腐れが発生している。
 先ほどから編集のことばかり言及しているが、劇中にあるダンス・コンテストでも本作の編集の力が光る。実写映画のダンス・コンテストといえば、主人公チームはダンス経験の有無に関わらず俳優陣がダンスを覚えて披露するけど、主人公以外のチームはちゃんと踊れるダンサーが起用される。そのため、主人公チームと他チームを比較すると練度の差が見た瞬間に分かる。それにより、「相手チームの方がメッチャ上手いじゃんw」とツッコミを入れるほどアンバランスな状況になる。だが、本作は編集の力で解決。出口夏希さん演じるヒロイン以外のチームは踊りがキレッキレで明らかにダンス経験者の練度だけど、チーム全員がカメラに映るような位置をキープしている。対して、ヒロインたちのチームは逆に近間。そして、多彩なカメラのアングルと多彩な照明でMV風な映し方をしている。完全にヒロイン以外とヒロインで映し方を変えている。そのため、比較対象が抹消されてヒロインたちのダンスの練度に対するツッコミは消滅した。(ただ、1人1人のダンスをしっかり見れば、他チームのダンサーたちよりは流石に劣っている。)この手法は良いアイディアだと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記

(C)臼井儀人双葉社・シンエイ・テレビ朝日ADK 2024

公 開 日  :8月9日

ジャンル:アニメ、SF

監 督 :佐々木忍

キャスト:小林由美子ならはしみき森川智之真柴摩利水樹奈々北村匠海、伊藤俊介、戸松遥安元洋貴

 

概要

 劇場版クレヨンしんちゃんシリーズの31作目。

 

あらすじ

 現代に恐竜をよみがえらせた一大テーマパーク”ディノズアイランド”が東京にオープン。誰もが関心を寄せ、世間は恐竜フィーバーとなっていた。

 そのころ、夏休みを過ごすしんのすけは、シロ及びかすかべ防衛隊と共に小さな恐竜”ナナ”と出会う。野原家でナナを引き取りことになり、皆で楽しい夏を満喫していた。だが、ナナには隠された秘密があり、やがて魔の手が忍び寄る。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 人間の言葉を話さない恐竜としんちゃんたちの友情を描いた作品。だが、クレヨンしんちゃんの映画において、その題材を扱うには不向きだった。しんちゃんに非言語コミュニケーションで動物と仲良くなるのは荷が重過ぎた。その役目はドラえもんの世界で、のび太くんがやるべき勤めだ。というのも、前提として人間の主人公と言葉を話せない動物が種を越えて絆を芽生えさせるには非言語コミュニケーションが不可欠であり、言葉を使えない以上は描写に時間を十分に割かなければならない。しかし、クレヨンしんちゃんシリーズでは、非言語コミュニケーションに時間を割くことが出来ない。なぜなら、クレヨンしんちゃんシリーズはギャグアニメだから。ギャグアニメである以上、映画オリジナル・キャラクターが真っ先にやるべき事は、ギャグ全開のクレヨンしんちゃんワールドに溶け込むこと。そして、自身がギャグの一部になったり、登場人物たちがギャグを連発しても浮かない立ち回りをする事である。そのため、しんちゃんと動物による非言語コミュニケーションにタップリと時間を使うことが出来ないのである。したがって、しんちゃんと動物の距離が縮んだり絆が芽生えたりする描写や瞬間を描くことは出来ず、ギャグの連発に掻き消されてしまう。それ故、感動的なシーンを用意しても視聴者の心は付いていかない。ギャグが先行するクレヨンしんちゃんワールドにおいて、しんちゃんと言葉を話せない動物との友情を描くのはミスマッチで無理ゲーだった。せめて、『カスカベボーイズ』や『アッパレ!戦国大合戦』のように「一定時間はギャグを封印する」ことに舵を切っていればな…。やはり、言葉を話せない動物と友情を育むのは、のび太くんの役目だ。ドラえもんはギャグを連発する義務がない以上、のび太くんと動物の非言語コミュニケーションを真面目に描写していく余裕がある。だから、本作はドラえもん向けだったな。本作の企画をクレヨンしんちゃんではなく、ドラえもんに持っていけば良かったのに…。でも、あれか。ドラえもんの制作陣に「本作は恐竜との友情物語です!」と売り込んでも「のび太くんにはピー助が居るので十分です」と断られるか(笑)

 ただ、クレヨンしんちゃん特有のギャグや言葉遊びは健在だった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐

星の総数    :計9個

 

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!

(C)2024「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」製作委員会

公 開 日  :8月9日

ジャンル:青春

監 督 :小林啓一

キャスト:藤吉夏鈴、髙石あかり、久間田琳加、中井友望、鋼啓永、筧美和子高嶋政宏

 

概要

 高校生たちが学園の闇に迫る、痛快青春エンターテインメント。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 文学少女の所結衣は、憧れを抱く覆面作家”緑町このは”が在籍するといわれている名門・私立櫻葉学園高校に入学。文芸コンクールの連覇を果たす、学校一の強豪・文芸部に入部を希望するも、入部テストに落ちてしまう。だが、文芸部の部長である西園寺茉莉が、緑町このはの正体を突き止めれば入部を許可するという条件を提案する。実は、緑町このはの正体を知る者は学校内に誰もおらず、西園寺も誰なのかが気になっていたのだった。結衣は西園寺の提案を承諾。過去に緑町このはのインタビュー記事を掲載したことがある学園非公認の新聞部に潜入し、部長の杉原かさねと恩田春菜のもとで新米記者として活動する。緑町このはの正体を追いながら記者活動に惹かれていく結衣だったが、思いも寄らぬ出来事に遭遇する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 高校の新聞部に入部した少女が、正体不明の覆面作家作家と学校に隠された闇を暴いていく青春痛快エンタメ。

 「ジャーナリズムvs巨大組織」という社会の構図を学校の構図に当て嵌めたアイディア賞。権力が蔓延する校内にて反発するように足掻く新聞部という対決は、一大企業や政治家の暴走を喰い止めようとするジャーナリストたちを見てるようで現実社会そのものだった。主要人物たちが学生なので、親近感を持ちやすい学生さんたちに本作を観て頂き、大人の社会がどんなものかを知って欲しいところである。舞台が学校なだけに「そこまでやらないだろw」とツッコミどころもあるけど、そこはエンタメとして笑えるようになっている。

 『ベイビーわるきゅーれ』のファン的に、新聞部の部室の扉を開けると殺し屋協会に所属する殺し屋(高石あかりさん)と清掃係(中井友望さん)が待ち構えてるのがオモロすぎる(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ブルーピリオド

(C)山口つばさ/講談社 (C)2024映画「ブルーピリオド」製作委員会

公 開 日  :8月9日

ジャンル:漫画実写化

監 督 :萩原健太郎

キャスト:眞栄田郷敦、高橋文哉、板垣李光人、桜田ひより江口のりこ薬師丸ひろ子

 

概要

 漫画家・山口つばささんが執筆し、「マンガ大賞2020」を受賞した同名漫画の実写映画化。

 

あらすじ

 周りの空気を読んで流れに任せて生きてきた高校生・矢口八虎は、ある日の美術の授業にて「私の好きな風景を描く」という課題で苦戦していた。悩んだ末に、「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時に絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたと感じ、美術に興味を持ち始め、のめり込んでいく。そして、ついに国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 劇中に出題される絵画の試験テーマ「縁」・「自画像」・「ヌード」の隠喩を用いて、夢に向かって頑張る行程で何が起きるかを示した作品。縁は、出会いの隠喩。良き人と巡り会うことである。劇中では、主人公が絵画に出会ってから上達するまで、常に良き人との出会いがある。自画像は、自分の心の隠喩。夢に向かう途中、複数の感情が複数の性格を生み出して鬩ぎ合いをしてることである。劇中の主人公は、夢に向かって頑張れる自分と、何かの頑張れない自分で格闘を繰り広げている。ヌードは文字通り裸の意味であり、ありのままの隠喩。どんなに技術を取得したり戦略を練ったりしても、最後は自分のオリジナリティをぶつけないと他人の目には止まらないことである。劇中では、終始一貫して、主人公の周囲にいる登場人物たちが「自分が見える世界を描いて」とアドバイスしており、それによって主人公の絵は他人の目を引くようになっていく。本作では「縁」・「自画像」・「ヌード」の3大隠喩が、夢に向かう行程に登場する通過点であると主張している。
 難点としては、数冊に渡る原作漫画の物語を圧縮した影響により、若干ながらダイジェスト風になっていること。主人公のナレーションを使って、主人公の心情や状況を伝えているのだが、逆に説明的になっている。映像作品なのに映像で語らないから尚のこと。そのため、物語の内容やキャラクターの人物像が表面をすくう程度の薄味になっている。特に、予備校にいる生徒と主人公の距離感が分からない。急に友達へ昇格したり、友達なのか只のクラスメイトなのかも分からず、予備校の生徒たち全般のキャラクター性がイマイチだった。板垣李光人さん演じる予備校生については、絵が凄く上手いという設定があるけど、その根拠が不明。そして、根拠がないのに「どうせ僕は受かるから」とセリフで言ってしまうものだから、受験先の学校に親のコネでもあるのかと思ってしまった(笑)主人公の眞栄田郷敦さん自身も絵画とナレーションで心情を語ることが多い以上、なかなか魅力が引き立たない。だが、ナレーションの低音ボイスはイケボで耳の御馳走になっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

クロス・ミッション

NETFLIX

公 開 日  :8月9日

ジャンル:アクション、コメディ

監 督 :イ・ミョンフン

キャスト:ファン・ジョンミン、ヨム・ジョンア、チョン・ヘジン、チョ・マンシク 他

 

概要

 NETFLIXにて8月9日から配信された韓国製アクション・コメディ。韓国映画界の大スターであるファン・ジョンミンとヨム・ジョンアがダブル主演を務める。

 

あらすじ

 エリート刑事の妻を持つ主夫カンム。その正体は元特殊部隊の隊員であり、現在は妻にも素性を隠して暮らしていた。ある日、カンムは特殊部隊時代の同僚と再会する。同僚は現在も特殊部隊に在籍しており、仕事で思い悩んでいた。事情を知ったカンムは、妻には内緒で同僚の仕事を手伝うことに。だが、その仕事に妻ミソンも巻き込まれていくのだった。

 

感想

 韓国映画らしく、スリリングな展開とコミカルな笑いが併存しており、それぞれがスパイスとして効いてる。そして、下ネタのバランスも丁度良い。特にカーチェイスのシーンでは下品の領域に留まらず、カッコよさも併存した珍妙なバランスである。

 アクションシーンでは、カメラのスイングが逐一パキッとキマるためスタイリッシュ。ファン・ジョンミンとヨム・ジョンアの動きのキレと同化して気持ち良い。また、画面のブレが臨場感を生んでいる。ブレを用いるとシーンが見づらくなるアクション映画が多々あるけど、本作は見やすい。ブレても何が起きているか瞬時に分かる。ただ、本作のアクションは敵が大人数になると質が落ちる。やはり敵の数が増えると、めちゃめちゃ体が動くアクションスターによるアクションよりも出来るバリエーションが狭まってしまう。なので、アクションは序盤と中盤がピークだった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

フォールガイ

(C)2023 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved.

公 開 日  :8月16日

ジャンル:アクション

監 督 :デヴィッド・リーチ

キャスト:ライアン・ゴズリングエミリー・ブラント、ウィンストン・デューク、アーロン・テイラー=ジョンソン、ハンナ・ワディンガム、ステファニー・スー 他

 

概要

 『ブレット・トレイン』、『ワイルド・スピードスーパーコンボ』、『デッドプール2』などのアクション大作を監督してきたデヴィッド・リーチが、自身で創業した87ノース・プロダクションズの下でメガホンを取った新たなアクション大作。主演はライアン・ゴズリングで、ヒロインはエミリー・ブラントが務める。

 

あらすじ

 大けがを負い、一線を退いていたスタントマン=コルト・シーバーズ。愛する元カノことジョディ・モレノの初監督作で久々に現場復帰するが、作品の主演俳優でありコルトのスタントダブルを請け負っていたトム・ライダーが謎の失踪を遂げてしまう。コルトはトムの行方を追っていくうちに危険な陰謀に巻き込まれていく。コルトは己のスタントスキルで、この危機を突破できるのか?

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 デヴィッド・リーチ監督らしく、軽快なアクションを繰り出すゴキゲンな快作。題材および主人公がスタントマンだからこそ導入できるデンジャラスなストーリー展開とアクション・シーンが目白押し。改めてスタントマンという職業の凄さに気づき、リスペクトを捧げたくなる。スタッフロールに流す映像も抜かりない。ただ、ストーリーのスケールが、アクションのスケールに比べてショボい点が寂しいところ。(逆にアクションのスケールが特大すぎる?)他のデヴィッド・リーチ監督作と同様、ストーリーの運び方に課題を残している。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ねこのガーフィールド

© 2024 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

公 開 日  :8月16日

ジャンル:アニメ

監 督 :マーク・ディンダル

キャスト:クリス・プラットサミュエル・L・ジャクソン、ハンナ・ワディンガム、ビング・レイムス、ニコラス・ホルト

 

概要

 1978年にジム・デイヴスが新聞連載として執筆していた同名漫画をアニメーション化した映画。

 

あらすじ

 飼い主のジョンに愛されて、幸せな毎日を送っていた家ねこのガーフィールド。だが、ある日、生き別れた父猫ヴィックが現れる。ヴィックは悪い猫たちに追われており、そんなヴィックを救うためにガーフィールドは、親友の犬オーディと一緒に家から飛び出す。初めて触れる外の世界でガーフィールドの大冒険が幕を開ける。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 キャラクターのアクションが面白い。「猫は液体である」と比喩表現がある通り、いろんな形状に体を変え、縦横無尽に動き回るアクションが爽快。水流の如く、次々と違うアクションを滑らかに見せては楽しませてくれる。ただ、「さっきまで体が縮んだのに、なんで今は穴に嵌ってるんだよっ!?」というツッコミを入れる隙がある(笑)ルールが決まっておらずガバガバである(笑)
 会話シーンにおいては、良くも悪くも水流の如くである。豊富なボキャブラリーで流暢にラリーしてるが、画の動きが少な過ぎて退屈。字幕版を観ると、ひたすら読むだけの作業になりそう。
 物語は2024年ワースト・レベル。大きな難点が3つある。
 1つ目は、ガーフィールドが父親と一緒に旅をする理由が最悪であること。なぜなら、父親が招いた失態のせいで旅をすることになるから。つまり、父親の自業自得に付き合わされてるだけである。そして、ガーフィールドは劇中で何一つ悪事(幼少期の盗み食いは子供ゆえにノーカウントで)を働いてないのに、旅に出てから次々と痛い目に遭わされる。大人たちから暴力を受け続けて不憫。前述の通り、アクションは絵的に面白いけど、同時に痛めつけられるガーフィールドが可哀想である。逆に、そのおかげでガーフィールドを応援したくなるのも確か。個人的には「親父もろとも悪い奴等をブチのめせ!」と拳に力が入った。
 2つ目は、難点1つ目の設定や物語を踏まえながら、親子の絆を描いたこと。何も悪くない子供が、悪い父親と悪い大人たちの争いに投げ込んで親子の絆を芽生えさせるのは都合が良すぎる。巻き込んだ詫びに父親が代償を払う展開もあるけど、それをするなら、その前にガーフィールドが敬意を払えるような姿勢を現在進行形で見せてくれよ。回想シーンで「生き別れた後も息子のことを想っていた」というのを表現したところで、視聴者にシーンは見えてるけど、ガーフィールドは耳で聞いてる以上は見えないから、本当にガーフィールドのことを想っていたのか伝わりにくい。あと、ガーフィールドを巻き込んだことについて謝罪がない。ジャック・バウアーのように「君を巻き込んでしまったことを本当にすまないと思っている」と謝れや(笑)
 最後の難点として、敵キャラだけを完全悪として描いたこと。そもそも、本作の事の発端は、父親と一緒に仲間として悪事を働いていた敵キャラが人間から捕まり、父親から置き去りにされたことである。その後、敵キャラが父親に対して、置き去りにしたことへの復讐をするためガーフィールドを巻き込んで争うわけである。つまり、父親の姿勢が原因。父親が誠心誠意を込めて敵キャラに尽くしていれば復讐に繋がらなかったのである。父親が大いに悪い。それにも関わらず、復讐を掲げてガーフィールドと父親に悪さを仕掛けてくる敵キャラだけを悪者にしている。父親も敵キャラも互いに悪さをしてる以上、最後は和解するのが妥当な着地だが、そのようなことを本作は一切しない。敵キャラだけを悪人として成敗している。かなり胸糞悪い。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐

星の総数    :計9個

 

ザ・ユニオン

NETFLIX

公 開 日  :8月16日

ジャンル:アクション、コメディ

監 督 :ジュリアン・ファリノ

キャスト:マーク・ウォルバーグ、ハル・ベリーJ・K・シモンズ、マイク・コルター 他

 

概要

 NETFLIXで8月16日から配信された、マーク・ウォルバーグとハル・ベリーがダブル主演で贈るコメディ・アクション。

 

あらすじ

 地元のニュージャージーで建設業に勤務する一般男性マイク。いつも通うバーで地元の友達と飲みながら遊んでいると、高校時代の恋人ロクサーヌが現れる。ロクサーヌは「ザ・ユニオン」と呼ばれる諜報組織に所属しており、マイクの適性を感じて組織加入の勧誘をしてきた。了承したマイクはザ・ユニオンの一員となり、ロクサーヌや仲間たちと共に、多くの組織が入り乱れる諜報合戦に身を投じていく。

 

感想

 小気味よいポップコーン・ムービー。マーク・ウォルバーグとハル・ベリーがダブル主演という豪華な絵面の中、縦横無尽なアクションとユーモラスな会話が繰り広げられる様は軽快。だが、アクション・シーンから予算の少なさが伺えたり、登場人物のキャラ立ちが薄いが故に物語のインパクトがなかったりといった安っぽさが目立つ。とはいえ、全体的な出来栄えは薄味になっておらず、ノイズとなる大きな粗もない。程よい楽しさを提供している。学校帰りや仕事帰りの後、飲み物片手に観たら英気を養えるライトなエンタメ。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

ラストマイル

(C)2024「ラストマイル」製作委員会

公 開 日  :8月23日

ジャンル:ドラマ、サスペンス

監 督 :塚原あゆ子

キャスト:満島ひかり岡田将生ディーン・フジオカ宇野祥平火野正平阿部サダヲ

 

概要

 塚原あゆ子監督と脚本家の野木亜紀子さんがタッグを組んで手掛けたTVドラマ『アンナチュラル』および『MIU404』と世界観を共有したシェアード・ユニバース・ムービー。本作でも同じく監督は塚原あゆ子さんであり、脚本は野木亜紀子さん。主題歌も同じく米津玄師さんが担当する。主演を務めるのは満島ひかりさんと岡田将生さんであり、2010年公開の『悪人』以来の共演となる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 時は11月。流通業界最大イベントのひとつ”ブラック・フライデー”の前夜、世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがて、それは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく。

 巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とと共に、未曽有の事態の収拾にあたる。

 誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?決して止めることのできない現代社会の生命線。世界に張り巡らされた物流という名の血管を止めず、いかにして連続爆破を止めることが出来るのか?全ての謎が解き明かされる時、この世界の隠された姿が浮かび上がる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 本作のような、お仕事映画が到来するのを待望していた。仕事が出来る有能者をちゃんと表現してる。お仕事映画といえば、主人公が職場の上層部と下層部そして取引先などの利害関係者たちから板挟みを喰らい、それでも情熱や"やりがい"等の熱量を持って困難な仕事を成し遂げ、そんな主人公に羨望して視聴者が「私も頑張ろう!」という気持ちで終えるのが定型として多かった。同時に、「熱量をバシバシ放出する者=仕事が出来る者」という世論や勘違いさえ生じていた。しかし、本作にて、そんな定型も世論も勘違いも遥か遠くへ置き去りにした。かつて羨望された主人公は理想ではなく、改めて幻想であることを突きつけた。本当に仕事が出来る者は熱量をバシバシ放出する者ではなく、主演を務めた満島ひかりさんと岡田将生さんが演じた登場人物のようなドライで合理的で手先が器用であることが前面に出る人間である。決して、熱量が前のめりになるわけではない。熱量は仕事ぶりの合間にチラッと見えるだけだ。(2024年時点で社会人歴が10年以上の方々にはバレてると思うけど。)満島さん演じるセンター長のように、ニコニコしてるわりには意外と温度が通ってない人の判断が凄く的確だったりする。岡田さん演じるマネージャーのように、仕事へ向ける情熱が少ないワーク・ライフ・バランス主義者が実は器用だったりする。ある程度の社会人歴を積んだ方々は2人の仕事ぶりと現実世界で共にした有能者にシンパシーを感じるし、社会人歴が少ない方々または学生の方々は社会進出後に2人のような人物に信頼を抱いた方が吉だと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

フレッシュ?!イン・ハイスクール

NETFILX

公 開 日  :8月23日

ジャンル:青春、コメディ

監 督 :デイブ・チャーニン、ジョン・チャーニン

キャスト:メイソン・テムズ、バルディア・シリ、ラモン・リード、ラファエル・アレハンドロ、イザベラ・フェレイラ、ローレン・グレイ、アリ・ギャロ、ボビー・カナヴェイル

 

概要

 バラ色の高校生活を送りたい男子4名がハチャメチャな一夜を過ごす、おバカな学園コメディ。

 

あらすじ

 高校1年生になったベンジー。イケてる高校生活を送りたいベンジーは、3人の親友たちと共にイケてる学生たちが集うパーティに乗り込む。浮かれ気分で舞い上がっていた4人だったが、想像を絶する運命が待ち受けていた!?さらには、ベンジーが想いを寄せる先輩ペイリーもパーティに参加。果たして、ベンジーは愛しのペイリーのハートを掴むことが出来るのか?

 

感想

 コメディの面は笑える。登場人物の多くが下品またはバカのどちらかに属しており、そんな輩に振り回される者たちのハプニングが小気味よい。ただ、かなり下品な描写があるため、食事中の鑑賞はオススメしない(笑)だが、ストーリーの面において、イケてる高校生になろうと背伸びする男子たちの成長物語としては微妙。なぜなら、「背伸びを止め、ありのままの自分で生きる」という最終的な成長が、偶然と出来レースで片付けられており、説得力が皆無だからである。このような強引な手法では、視聴者の心を響かせるのは難しいだろう。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

愛に乱暴

(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会

公 開 日  :8月30日

ジャンル:ドラマ、サスペンス

監 督 :森ガキ侑大

キャスト:江口のりこ小泉孝太郎、馬場ふみか、風吹ジュン

 

概要

 小説家・吉田修一さんの同名小説の実写映画化。物語に隠された仕掛けから映像化は難しいと思われた原作を繊細にアレンジし、フィルムを使って主人公の背後からまとわり付くようなカメラワークで撮影を敢行して息もつかせぬ緊迫感に包まれたヒューマン・サスペンスとなった。

 主演は江口のりこさんで、監督は『さんかく窓の外側は夜』の森がき侑大さんが務める。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 夫の実家の敷地内に建つ離れで暮らす初瀬桃子は、結婚して8年になる。微量なストレスを与える義母と自分に無関心な夫を振り払うように、石鹸づくり教室の講師やセンスのある装い、手の込んだ献立をつくって「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。

 そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火。愛猫の失踪。不気味な不倫アカウント。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、やがて追い詰められた桃子は、いつしか床下への異常な執着を募らせていく…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 実に見事な御点前。俳優陣の繊細な演技と長回しのカメラワークが素晴らしい。家族全員が表向きの態度を装いながらも同時に奥底へ秘めた本心を映すという妙技を生み出し、建前と本音が合わさった雰囲気を現実世界と同等レベルで生々しく醸成させている。その要因となるのが、俳優陣の繊細な演技と長回しのカメラワーク。本音と建前が混合した登場人物を俳優陣が精密に演じ、その俳優陣の後ろをカメラが長回しで追いかけることで、平穏な暮らしを続けながらも沸々と不満を燃やす登場人物の日常を視聴者へ定着させている。その定着があるからこそ、江口のりこさん演じる主人公が段々と狂気に取り憑かれた挙句、ブッとんだ蛮行へ及ぶシークエンスが自然体に映り、主人公の行動原理に大きな納得感がある。一見すると主人公の蛮行は、そのシーンだけを切り取るとシュールで笑いそうになるが、前述の通り登場人物の日常を定着させたことで自然に起きた出来事に見える。俳優陣の繊細な演技と長回しのカメラワークが作品を牽引し、見事なサスペンス・ドラマとなっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個