プライの書き置き場

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【まとめ】2023年 日本劇場公開の映画(4月編)

 この記事は2023年4月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

オオカミ狩り

(C)2022 THE CONTENTS ON & CONTENTS G & CHEUM FILM CO.,LTD. All Rights Reserved.

公 開 日  :4月7日

ジャンル:アクション

監 督 :キム・ホンソン

キャスト:ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チェ・グィファ 他

 

概要

 『メタフォルフォーゼ/変身』や『共謀者』などを手掛けたキム・ホンソンが、2017年にフィリピンへ逃亡した韓国人犯罪者47名の集団送還のニュースから着想を得て生み出した韓国製バイオレンス・サバイバル・アクション。韓国映画としては、ポン・ジュノ監督作『グエムル 漢江の怪物』以来16年ぶりに第47回トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門に正式出品。さらには、第55回スペイン・シッチェス国際ファンタスティック映画祭コンペティション部門で審査委員特別賞・特殊効果賞を受賞するなど、各国の映画祭を席巻した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 2022年、フィリピンのマニラ。現地で逮捕された犯罪者たちを乗せた貨物船フロンティア・タイタン号が釜山港に向けて出航した。船には、凶悪犯罪を長年に渡って担当してきたベテラン刑事の約20人が護送官として乗船。釜山では、海上交通管制センターで海洋監視システムを設置。万全な警備体制の中、韓比共同護送計画(プロジェクト名:オオカミ狩り)が進められていた。しかし、密に脱出を企んでいた凶悪犯・ジョンドゥが、刑事として紛れ込んでいた仲間と暴動を起こし、船内は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる。仲間以外は誰であろうと容赦なく殺める犯罪者たちと、彼らに立ち向かう警察。二大勢力がぶつかり合う。だが、敵対して戦いを続ける彼等に、思わぬ出来事が訪れる…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 全てのアクションに血が付き纏う。ドクドク流血。バシャバシャ血飛沫。血の池ブワー。登場する人物たちを片っ端からキルしてバンバン放たれる出血に爽快感がある。だが、「とにかく登場人物をキルして出血させよう」という"とりあえず"な感じが先行しており、スラッシャー描写にバリエーションの広さが不足して口飽きする。また、戦闘する場所が船の一室や廊下といった狭い場所が多いため、登場人物たちが敵との距離を詰め過ぎている。武器を持った敵へ無闇に0距離まで詰める様は余りにも無謀、というか多くの登場人物から「敵を倒して生き残る」という気概が全く感じない。命の駆け引きをするのに全くリアリティがない。とにかくスラッシャーすることが先行しており、そこに行き着くまでの過程が貧相に見える。とはいえ、最後の最後で本作の物語の種明かしをした後のアクションは、船内を活かした演出を施しており、ようやく目を見張るアクションが繰り広げられる。次回作があれば、これぐらいのノリでお願いしたいところ。

 登場人物が多すぎる。いまひとつ交通整理がなってない。キャラが立つ前に、死亡フラグが立つキャラが何人いることやら…。次回作があれば、死亡した登場人物たちの存在を忘れてそうだ…。

 物語の進行は『THE WITCH 魔女』と似た戦法。本作が何の映画なのかを終盤まで言わない。箱に結ばれた紐を1つ1つ解き、蓋を開けて見る楽しさがある。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計12個

 

ザ・ホエール

(C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

公 開 日  :4月7日

ジャンル:ドラマ

監 督 :ダーレン・アロノフスキー

キャスト:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、サマンサ・モートン、タイ・シンプキンス 他

 

概要

 2012年に初上演された同名舞台劇の映画化であり、鬼才ダーレン・アロノフスキーによる『マザー!』以来5年ぶりの監督作。主演は『ハムナプトラ』シリーズなどでハリウッドのトップスターに昇りつめながらも、心身のバランスを崩して表舞台から遠ざかっていたブレンダン・フレイザーが奇跡のカムバッグを果たして務める。本作でブレンダンが演じたのは、体重272キロの孤独な中年男性。離婚後疎遠状態だった娘との絆を取り戻したいと願う主人公の最後の5日間を、ワン・シチュエーションの室内劇という様式で映し出す。ブレンダンの驚嘆すべき演技に多くの絶賛の声が寄せられ、ブロードキャスト映画批評家協会賞にて主演男優賞を受賞、さらに全米俳優組合賞、英国アカデミー賞でもノミネートが続き、ついにブレンダンはアカデミー賞主演男優賞に初ノミネートされて受賞を果たした。その他に『ストレンジャー・シングス』シリーズのセイディー・シンク、本作でアカデミー賞助演女優賞に初ノミネートを果たしたホン・チャウ、サマンサ・モートンら豪華俳優陣が脇を固める。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 恋人アランを亡くしたショックから現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、唯一の親友である看護師リズに頼る日々が続いていた。そんなある日、症状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを知ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒み切っていた。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 本作は『ブラック・スワン』や『マザー!』等、カオスな映像体験で観る者の脳内を侵食する作品を増産してきたダーレン・アロノフスキーが監督を務めるが、アロノフスキーのカラーが随分と脱色されている。脳内を侵食するような映像の乱打はなく、1つの小さな家屋に住む肥満な男の半径数メートルを堅実に映したミニマムなドラマに落ち着いている。

 本作で特筆すべきは主演である肥満男を務めたブレンダン・フレイザーである。特殊メイクを施し、ファットスーツを着用したことで実際のブレンダンのビジュアルから大きな変貌を遂げた。だが、ブレンダンの名演が命を灯し、特殊メイクとファットスーツの存在感を完全に消失させる。肥満が招く煩わしい生活様式。肥満が招く病魔の苦しみ。悲しみと罪悪感に蝕むほど心に刻まれた過去の苦しみ。全てにおいてブレンダンが演じてるように見えず、肥満男そのものが1人の人間として目の前で人生を送っているように見えてしまう。また、主張や行動の一貫性がぼやけていたり、自分に降りかかった悲劇がどこか自業自得の域であったりと、複雑な人間性を表現していた。

 本作の物語はポスターのキャッチコピーにある通り「他人を信じる」がテーマの1つかと思った。「他人の人生に影響を与えたい」や「他人の価値観を変えさせてみたい」なんて目標に掲げる人がいるけど、それは無理。自分の人生や価値観が他力本願のまま流動していかないことと同じで、他人は、その人自身の意志でしか変わらない。だから、他人に変化を望む際に出来ることは座して祈ることぐらい。本作では主人公が娘との不仲解消を試みており、肥満で文字通り身動きが取れない設定を用いて、他人の変化は座して待つものだと視覚的に感じ取らせている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

ノック 終末の訪問者

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

公 開 日  :4月7日

ジャンル:スリラー、ドラマ

監 督 :M・ナイト・シャマラン

キャスト:デイブ・バウティスタ、ジョナサン・グロフ、ベン・オルドリッジ、ニキ・アムカ=バード、クリステン・ツイ、アビー・クイン、ルパート・グリント

 

概要

 『シックス・センス』や『オールド』など、予測不可能なストーリー展開で世界を震撼させてきたM・ナイト・シャマランが、ポール・トレンブイが執筆した小説『終末の訪問者』を基に、家族と地球の存亡を選択する様を描いた愛と恐怖のスリラー映画。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 人里離れた山小屋で休暇を過ごしている3人の家族の前に、突如として現れた、謎の4人組。彼らは家族を拘束し、こう告げた。「私たちは、”終末”を防ぎに来た。君たちの”選択”に懸かっている。家族3人のうち、犠牲になる1人を選べ。でなければ、世界は滅びる」。果たして、4人の訪問者は何者なのか?なぜ、世界は終末を迎えることになるのか?そして、正気とは思えない究極の”選択”の結末とは?

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 凶器を携えた者たちが家に押し入ったり、滅亡へ進行している世界を見せつけたりとスリラー味が高めだが、本質はヒューマン・ドラマ。物語が進むにつれ、自分は何を信じるか(本作で言えば、信仰や他人)、1人1人が人生を抱えて生きていることが沸々と煮えたぎってくる。本作では、家族の命と地球の滅亡を天秤に掛けることで、それらを克明に提示した寓話に思える。ストーリー進行やキャラクターの人物像に対して「シャマラン作品にしては捻りがない」と評されそうだが、メッセージがダイレクトに伝わりやすいと考えれば吉。確かに、劇中世界に取り込む吸引力が乏しいストーリーだが、その部分は訪問者のリーダー格を演じたデイブ・バウティスタの俳優パワーが牽引している。デイブの筋骨隆々とした体型ながらも口調には丁寧さがあり、畏怖と安心の両方を抱かせる絶妙な存在感が観る者を惹きつける。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

AIR/エア

(C)AMAZON CONTENT SERVICES LLC

公 開 日  :4月7日

ジャンル:伝記、ドラマ

監 督 :ベン・アフレック

キャスト:マット・デイモンベン・アフレックジェイソン・ベイトマンマーロン・ウェイアンズクリス・タッカークリス・メッシーナヴィオラデイビス

 

概要

 スポーツの枠を超え、ファッションやアートなど現代のカルチャーに大きな影響を及ぼしたバスケット・シューズ「エア・ジョーダン」が誕生した実話を映画化。他社の運動靴メーカーから人気も売上も負けて窮地に居たナイキが、如何にして世界一有名なバスケット・シューズを世に生み出しかが描かれる感動のドラマとなっている。

 主演は『インビクタス/負けざる者たち』・『オデッセイ』・『フォードVSフェラーリ』など数々の名作に出演し続けるマット・デイモン。監督は『アルゴ』でアカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック。当時、ナイキに在籍していた社員ソニー・ヴァッカロをマット・デイモンが、CEOのフィル・ナイトを監督のベン・アフレックが演じる。なお、2人は本作の製作も担当している。

 ベン・アフレックが「マットと僕は『AIR/エア』の公開にワクワクしている。この映画は人生最高の経験だった!」と語る本作は、2人が俳優・監督・製作の全方位でタッグを組んだ特別な1本。映画史に名を刻む2人が起こす、新たな感動の奇跡が幕を開ける。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 時は1984年。運動靴の大手ブランドであるナイキでは、バスケットボール・シューズは人気と売上がなくて業績不振を起こしていた。社員であるソニーは、CEOのフィルからバスケットボール部門の立て直しを命じられる。競合ブランドたちが圧倒的シェアを占める中で苦戦するソニーが目をつけたのは、後の世界的スターとなる選手マイケル・ジョーダン。当時はまだ新人でNBAの試合に出たこともなく、しかも他社ブランドのファンだった。そんな不利な状況に関わらず、ソニーは驚くべき情熱と独創性を持って、ある秘策を持ちかける。負け犬だった男たちが、すべてを賭けて仕掛ける一発逆転の取引とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 NIKEの伝説的バスケット・シューズ「エア・ジョーダン」の誕生に全てを賭けた者達による奇跡の大博打ムービー。

 万人向けのメソッドではないが、仕事で成功するための流儀が詰まっている。リスクを取る。情報収集。戦略の立案。思いの念を込める。最後は運と他者に身を委ねる。自分自身がやれるだけやった後、結局は自分自身で作用できない他者の采配によって、革新が誕生するものだと思える快作。

 また、「エア・ジョーダン」の契約相手であるプロバスケ選手のマイケル・ジョーダンの母親の物語でもある。子供の可能性を広げたりする事は、多くの親が決断できない。さらに、子供が年齢を重ねても親が手を加える事もない。それらの逆に走ったジョーダン親子には、かなりの覚悟と信頼関係があったことが見える。

 物語の全体が会話劇だが、流れはスピーディで軽快。要点を話すとシーンがスパスパ変わってくれる。移動シーンではノリノリなBGMが画面を観る意欲を繋ぐ。個人的に体感速度は1時間もあったかどうかのスピード感だった。

 「エア・ジョーダンマイケル・ジョーダン」の唯一無二性を保つため、マイケル役の俳優の顔を映さなかったのは正解だと思う。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

パリタクシー

(C)2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

公 開 日  :4月7日

ジャンル:ドラマ

監 督 :クリスチャン・カリオン

キャスト:リーヌ・ルノーダニー・ブーン、アリス・イザース 他

 

概要

 『戦場のアリア』でセザール賞の作品賞および脚本賞を受賞したクリスチャン・カリオンの最新作。本作では、驚き・笑い・感動を詰め込んだ温かいドラマを作り上げた。

 主演は国民的人気を誇るシャンソン歌手リーヌ・ルノーとコメディアンのダニー・ブーン。2人は実生活で仲が良く、ルノーはダニーのことを「自分の息子」と称するほど。親交の深さから息の合った掛け合いを劇中で披露する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 パリでタクシー運転手を務めるシャルル。現在、金に困って懐が寂しく、ほぼ休みなしで働いて疲弊し、さらにはタクシー運転手でありながら免許停止寸前の違反を行い、うだつが上がらない生活を送っていた。そんなシャルルのもとにマドレーヌと名乗るマダムからタクシーの依頼が舞い込む。パリの反対側まで送る予定だったが、マドレーヌはシャルルに寄り道をお願いする。シャルルは承諾し、パリの街中を回っていく。そして、単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へ変貌していく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 崖っぷちタクシー運転手と乗客のマダムが街中と人生を辿る、笑いと驚愕と感動のヒューマン・ドラマ。 事前に情報を入れずに鑑賞することを推奨。公式や各種映画サイトにて、知らずに観た方が楽しめる展開が言及されている。劇中のダニー・ブーン演じるタクシー運転手のように、見ず知らずの他人と一定時間を共有する心構えで臨んだ方がリアルに本作を知る事が出来る。

 タクシー運転手と乗客が1台のタクシーでパリの街中を巡るシンプル設計だけでヒューマン・ドラマとして十分な味わいを備えた作りが秀逸。笑って温かくなれる。衝撃の事実に驚愕する。(しかも、社会性を帯びてる。)ただの運転手と乗客が紡いだ関係に感動する。ベタでシンプルな分、逆に見せ方が難しい設定だが、目が肥えた者達を唸らすほどの出来栄えに作り上げている。親子並みに親交が深いダニーとリーヌ・ルノーを共演させ、息の合った掛け合いをしたのが功を制したのではないでしょうか。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ダーク・グラス

Copyright 2021 (C) URANIA PICTURES S.R.L. e GETAWAY FILMS S.A.S. 

公 開 日  :4月7日

ジャンル:ホラー

監 督 :ダリオ・アルジェント

キャスト:イレニア・パストレッリ、アーシア・アルジェント、シンユー・チャン 他

 

概要

 『サスペリア』などの名作ホラーを世に生み出し、「ホラーの帝王」と称されるイタリア映画界の巨匠ダリオ・アルジェントが、前作『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』から10年ぶりに手掛けた新たなホラー作品。

 本作は2000年代初頭に脚本を執筆しながらも、製作サイドの事情で中止を余儀なくされた幻の企画であったが、ついに長年の時を経て実現。盲目のヒロインがサイコパスの殺人鬼に脅かされる”見えない恐怖”をスタイリッシュに映像化し、第72回ベルリン映画祭におけるプレミア上映では大きな反響を呼んだ。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生。その4人目のターゲットにされたコールガールのディアナもまた殺人鬼によって車を衝突させられ大事故に遭い、両目の視力を失ってしまう。同じ事故で両親を亡くした少年チンとの間に絆が生まれ、一緒に暮らすことになるが、サイコパスの殺人鬼は、その後もしつこくディアナたちを殺害しようと追跡してくる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 開幕から終幕まで用いる、テクノ音のアップ・テンポなBGMが心を掴む。殺人鬼が殺害を実行に移したり、標的を追跡したりする場面で流れ、「この後、何が起きるのか」という大きな期待に胸を高鳴らせる。そして、その膨らんだ期待に概ね応えてくれる。『悪の法則』にあるボリート起動の高揚感を彷彿させ、それが何度も訪れるような感覚である。『ハロウィン』もだけど、殺人鬼が襲うシーンのBGMは明るくした方が冴えが出る。その他のBGMも明るめな曲調であり、常に気持ちを劇中にライドさせてくれる。BGMが本作の鑑賞意欲を牽引してる。

 殺人シーンは作り物感が滲み出てるけど、残酷かつ丁寧に魅せる演出である。

 85分の短尺で無駄なくサクサク進み、疾走感がある。だが、その分、シーンの繋ぎや物語の進行に雑さが入ると悪目立ちしている。ストーリー展開が早い影響で登場人物の心情変化が激しく情緒不安定に見えたり、次のシーンに行くためのストーリー展開が強引過ぎたり、後半からは街の立地や登場人物の位置関係が不明確ゆえに何でもアリ過ぎて余計にシーンの繋ぎが雑に見える等、悪い部分が印象に残りやすい。短尺の疾走感を狙ったのかは知らないが、諸刃の剣になっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

スマイル

(C) 2022 PARAMOUNT PLAYERS, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES

公 開 日  :4月7日

ジャンル:ホラー

監 督 :パーカー・フィン

キャスト:ソシー・ベーコン、ジェシー・アッシャー、カイル・ガルナー、ロビン・ワイガード、ケイトリン・ステイシー、カル・ペン

 

概要

 全米公開時、3週目に『ハロウィン THE END』に首位を明け渡すまでの2週間、興行収入ランキング1位に君臨していた大ヒット・ホラー。公開前、微動だにしない不気味な笑顔を貼り付けた俳優をメジャーリーグ試合の客席などに配置し、TV中継に映り込ませるというゲリラ的な宣伝がSNSで話題にもなった。

 監督および脚本を務めたのはパーカー・フィンであり、本作が長編デビュー作となる。主人公を演じるのは、ケヴィン・ベーコンの娘であるソシー・ベーコン。

 ※NBCユニバーサル・エンタテインメントの販売サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 錯乱した患者が何かに怯えながら自殺する姿を目撃してしまった精神科医のローズ・コッター。その日から、周囲の人々が謎の≪笑顔≫を浮かべては豹変して襲いかかる現象が発生し、ローズは精神的に追い詰められていく。果たして、この≪笑顔≫の正体は何なのか?真相を探すため、ローズは奔走する。

 ※NBCユニバーサル・エンタテインメントの販売サイトより引用および抜粋

 

感想

 静寂な空気の中に浮き出る不敵な笑みとジャンプスケアが容赦なく襲い、緊張と恐怖が何度もMAXになる。また、演出だけでなくビジュアル面でも恐怖を煽る。特にラスト。トラウマをテーマとした作品だが、観てる側がトラウマを植え付けられる。覚悟必至。

 そして、何より恐ろしいのは、劇中の多くの人々が怪奇現象を認知できない点。それにより、怪奇現象を認知した者がいくら訴えても信用されず、逆に信用を失って孤立して追い詰められていく辛さに観てる側も胸が苦しくなる。この何を訴えても狂人扱いされる光景は、身体的疾患なのに精神的疾患と誤診されるケースと似ている。得体の知れない訴えは一蹴するのではなく、まずは話を聞こうと思った。

 本作を観て勝手に思ったのが、トラウマは完全に消失しないこと。そして、現実世界において、トラウマから解放される手段として自殺を選んでしまう方々もいるのも事実。ある意味、本作はトラウマを抱え込んだ者たちの心の声を受け取る作品だったのではないかと勝手に推察と妄想をした次第である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

公 開 日  :4月14日

ジャンル:ドラマ

監 督 :金子由里奈

キャスト:細田佳央太、駒井蓮、新谷ゆづみ、細川岳、真魚、上大迫祐希、若杉凪 他

 

概要

 『21世紀の女の子』などで注目を集めた金子由里奈監督による長編商業デビュー作にして、『おもろい以外いらんねん』をはじめ繊細な感性で話題作を生み出し続けている小説家・大前粟生さんにとって初の映像化作品。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ”男らしさ””女らしさ”のノリが苦手な大学生・七森は、入学時のオリエンテーションで知り合った麦戸と一緒に「ぬいぐるみサークル」の見学会に参加する。そのサークルは、部員たちが各々の心に閉まった思いの丈をぬいぐるみに喋りかけるという活動を行っていた。これまでの人間関係で窮屈な思いを抱えていた七森や麦戸もぬいぐるみと喋るうち、段々と人との関わり方を発見していく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 「ぬいぐるみとしゃべる人→やさしい」って、どういうこと?そんな疑問が浮かぶタイトルだが、視聴すれば納得の理論。自分の言動が他人に対して加害性が発生しないか心配する。逆に他人からの言動が自分に対して加害性を帯びてないか怯える。このようにクリーンな空気を汚さぬよう神経を擦り減らしてコミュケーション疲れを負った方へ「人間の代わりにぬいぐるみへ気持ちを吐露しよう」というセラピー映画であり、対人関係において加害性を考えられる貴方は優しいという解釈を確信的な根拠を持って論じている。鑑賞前では「ぬいぐるみと喋るって何よ?」と疑いを持つが、鑑賞後は視聴者に生きる術を教授してくれる実用性の高い作品。とはいえ、「この映画を観たら、あなたもぬいぐるみに喋りかけてみよう!」と押し売りになってない点や「ぬいぐるみに喋りかけることが全てではない」と補足する作り込みが抜かりない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ハロウィン THE END

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

公 開 日  :4月14日

ジャンル:ドラマ、ラブ・ロマンス、ホラー

監 督 :デビッド・ゴードン・グリーン

キャスト:ジェイミー・リー・カーティス、アンディ・マティチャック、ローハン・キャンベル、ウィル・パットン、カイル・リチャーズ、ジェームズ・ジュード・コートニー 他

 

概要

 1978年に公開されたジョン・カーペンターの名作『ハロウィン』の新シリーズとして製作された、2018年の『ハロウィン』・2021年の『ハロウィンKILLS』と並ぶ三部作にして完結編。40年間も続いたローリーとマイケルの因縁が本作で決着する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズが再びハドンフィールドを恐怖に陥れた事件から4年が経ち、街は少しずつ平穏な日常を取り戻しつつあった。マイケルの凶刃から生き延びたローリー・ストロードは孫娘のアリソンと暮らしながら回顧録を執筆し、40年以上に渡りマイケルに囚われ続けた人生を解放しようとしていた。

 しかし、暗い過去を持つ青年コーリーが、4年間、忽然と姿を消していたマイケルと遭遇したことをきっかけに、新たな恐怖が連鎖し始める。ついにローリーは、長年の因縁に決着をつけるべく、マイケルと最後の対峙を決意する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 前作はスラッシャー・ホラーを展開しながらマイケルの恐怖が人々へ伝染し、恐怖を解消するあまりに人々が凶暴化するドラマがあった。対して本作は、ホラー映画の続編として驚くべきことにラブ・ロマンス及びヒューマン・ドラマを展開しながら、誰しもの心に宿る邪悪こそが殺人行為の根源だと提示する、テーマの押し出しが強い作品となった。そして、マイケルを打倒するだけでは終われない心のセラピーを行ってキレイな締め括りとなっている。マイケルを仇として復讐に取り憑かれたローリー、復讐者の孫としてマイケルと因縁が結ばれたアリソン、子殺し疑惑のレッテルを貼られた新キャラ・コーリーが入り混じり、邪悪に呑み込まれるのは駄目なことだと伝えている。

 前作や前々作と比べてスプラッター描写は大幅に減少して大喜利を楽しむ要素は消滅したが、物語の完結としてドラマやテーマ性に比重を置いたのは正解だと思う。主演のジェイミー・リー・カーティスが本作の撮影終了後に涙を流したのも頷ける。 数少ないスプラッター描写では、レコードを用いたブラック・ユーモアが必見。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)

(C)2023青山剛昌名探偵コナン製作委員会

公 開 日  :4月14日

ジャンル:アニメ

監 督 :立川譲

キャスト:高山みなみ山崎和佳奈林原めぐみ緒方賢一堀之紀古谷徹池田秀一沢村一樹

 

概要

 アニメ『名探偵コナン』の劇場版シリーズ第26作目。

 

あらすじ

 東京・八丈島に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設『パシフィック・ブイ』。本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織・ユーロポールが管轄するネットワークと接続するため、世界各国のエンジニアが集結。そこでは顔認証システムを応用した、とある『新技術』のテストも進められていた。

 一方、園子の正体で八丈島にホエールウォッチングに来ていたコナン達少年探偵団。するとコナンのもとへ沖矢昴こと赤井秀一から、ユーロポールの職員がドイツでジンに殺害されたという一本の電話が。不穏に思ったコナンは、『パシフィック・ブイ』の警備に向かっていた黒田兵衛ら警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に侵入。すると、システム稼働に向けて着々と準備が進められている施設内で、ひとりの女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される事件が発生。さらに彼女が持っていた、ある情報を記すUSBが組織の手に渡ってしまう。

 海中で唸るスクリュー音。そして、八丈島に宿泊していた灰原のもとにも、黒い影が忍び寄る…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 コナンの原作やアニメの本編に大きく踏み込んだ作品。原作1話から因縁を持つ黒ずくめの組織が灰原とコナンの喉元まで差し迫り、このまま最終回に到達してしまうかのような怒涛の流れは全編クライマックス。とはいえ、コナンがまだまだ続くように、平凡な日常へリセットされていく着地を決めて安心。ただ、コナンと灰原の人間関係はリセット出来ないレベルで前進した。

 ミステリー要素は少ない部類だが、水やガジェットを駆使したアクション要素が多くて楽しめる。 毛利蘭の身体能力がバグり、スーパー格闘術となった。このまま毛利蘭はブラック・ウィドゥとなってしまうのか(笑)

 コナンと言えば「見た目は子供。頭脳は大人」が代名詞だが、今作は「子供」にフォーカスしており「身体能力も子供。社会的信用度も子供」といった印象付けがあり、改めてコナンが子供だと知る。その分、「子供だからって、なんだよ!」と跳ね返すコナンと灰原の行動原理が強く印象付けられる。

 個人的にウォッカがカワイイなあと思った(笑)あのイカつい見た目と立木文彦さんのイケボで、ジンの兄貴にタジタジしてるし、組織の連中に「お前らさ〜…」とツッコミを入れたりとギャップ萌えを感じる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

聖地には蜘蛛が巣を張る

(C)Profile Pictures / One Two Films

公 開 日  :4月14日

ジャンル:サスペンス

監 督 :アリ・アッバシ

キャスト:ザーラ・アミール・エブラヒミ、メフディ・バジェスタニ、アラシュ・アシュティアニ、フォルザン・ジャムシドネジャド 他

 

概要

 カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞した北欧ミステリー『ボーダー 二つの世界』で、人間たちが無意識に引く”境界”を暴き出し、差別や優劣意識を白日の下に晒した北欧ミステリーの鬼才アリ・アッバシ。今回、アリが着想を得たのは、2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで殺人鬼スパイダー・キラーが16人もの娼婦を殺害した連続殺人事件。『ボーダー 二つの境界』でも描いた、人間の本性を凝視する視線はそのままに、本作では、娼婦連続殺人事件の全容から、人間に潜在する狂気と恐怖を暴き出す。15年の着想を経て描く本作は、世界49以上の映画祭を席巻し、デンマークアカデミー賞ロバート賞で11部門を制覇。さらに、アカデミー賞デンマーク代表作品にも選出された。また、主人公のジャーナリストを演じたザーラ・アミール・エブラヒミはカンヌ国際映画祭女優賞を受賞した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 聖地マシュハドで起きた娼婦連続殺人事件。「街を浄化する」という犯行声明のもと殺人を繰り返す”スパイダー・キラー”に街は震撼していた。だが、一部の市民は犯人を英雄視していく。事件を覆い隠そうとする不穏な圧力のもと、女性ジャーナリストのラヒミは危険を顧みずに果敢に事件を追う。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 ヤヴァい映画。マジで人が死ぬ過程を見届けてしまったかのような殺人シーン。娼婦を汚れた者たちと蔑称する殺人鬼の異常なまでの潔癖性。私刑、宗教、女性蔑視といった社会問題。そして、何より恐ろしいのは殺人鬼と同様に娼婦を貶し、殺人鬼に賛同して神格化する一部の民衆の声が表立つことである。劇中でも語られるが、公然と殺人を認める支持者が存在することは殺人鬼が去っても第二、第三の殺人鬼に名乗り出る者が現れる。きっと、そうならないことを願うために本作が生まれ、殺人鬼を演じたメフディ・バジェスタニが最後に映るシーンをあのようにしたのだと思う。

 序盤は会話多めのスローペース。中盤はスリル満点で心が掴まれる。そんな中盤が過ぎた後に「この後は話がどうなるの?」と思った終盤に人間の深淵が浮き彫りとなる。本番は終盤からスタートする。終盤に持っていくまでの登り坂からのジェット・コースター的なペースは惹きつけるし、そのままの勢いで終盤にて主題を全開にする流れは観る者を間違いなく飽きさせない。サスペンスを味わってから本作のテーマを感じ取れる、良きペース配分。

 殺人シーンがヤヴァい。むごい。殺される娼婦を演じた方々の演技が凄すぎて、生々し過ぎる。オーバーにならないような最小限の痙攣。そして、何と言っても両眼を見開いた形相である。抵抗する必死さと今から自分は死を迎える恐怖が伝わり、その形相のまま死に絶えるのは強烈である。こんなのは一生に一度、生で見たら永遠のトラウマになる。それを何度も見せるため、なかなかのキツさである。

 殺人鬼を演じたメフディ・バジェスタニの快演がヤヴァい。娼婦に触れることすらも嫌悪感を抱く潔癖性。殺人を繰り返し、擦り減らされる精神のバランス。それでも、娼婦を殺害し続ける使命感。殺人や女性蔑視といった間違った正義を掲げながらも、娼婦を葬り続ける使命感と精神の消耗で葛藤している姿は狂気そのものだった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

ヴィレッジ

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

公 開 日  :4月21日

ジャンル:ドラマ

監 督 :藤井道人

キャスト:横浜流星黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、佐間龍斗、西田尚美木野花中村獅童古田新太

 

概要

 日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞し、大ヒット作『余命10年』など多くの話題作を手掛ける藤井道人監督と、日本映画の変革者である、故・川村光庸プロデューサーの遺志と遺伝子を受け継いだ注目のスタジオ・スターサンズの制作チームが結集して送るミステリアスな衝撃作。

 「村」という閉ざされた世界を舞台に、そこで生きる人々の綺麗事だけでは生きていけないリアルな姿を圧倒的な映像美と世界観で描き、社会構造の歪み、そして現代日本が抱える闇をあぶり出す。

 主人公を演じるのは、人気・実力を兼ね備えて出演作が相次ぐ横浜流星さん。どこにも居場所を見つけられずに生きてきた青年が、自分との世界をつなぐ唯一の希望を守るためダークサイドに転じる姿をリアルに体現し、黒木華さん、古田新太さん、中村獅童さんをはじめとした豪華出演陣との共演で新境地を魅せる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。

 幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異才を放つ最終処分場で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われて希望のない日々を送っていた。そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 内輪の世界に留まる人間たちの物語。劇中の登場人物たちの多くは、村や職場という閉鎖的かつ限定的な集団の中に人生を捧げ過ぎている。小さな集団にて、ゴミを分別するかのように他人を分別して人間関係を操作し、名誉や立ち位置を掴み取ることで人生が完結しており、総じて視野の狭さが伺える。狭い世界の中で狭い視野で生きる人間の醜悪を描くことによって観る者に対してヤバい界隈へ入ったら外の世界に進出することを促し、「置かれた場所で咲きなさい」へのアンチテーゼを感じる。

 藤井監督の前々作『ヤクザと家族』のように、一つのコミュニティの傾きを描いている。だが、本作はヤクザという現実世界からの接続が少ないコミュニティではなく、タイトルの通り村という身近で接続しやすいコミュニティであり、観る者にとって理解が深まる題材となっている。

 藤井監督のこだわりある画づくりは相変わらず。閉鎖的で暗~い空間を僅かな明かりで照らした灰色な画は、陰湿ながらも透明感のある美しさも備わっている。横浜流星さん演じる主人公の鬱屈具合により、画に映る霧のグラデーションを変えているのが良い味を出している。

 キャスト陣のアンサンブルが良い。横浜流星さん演じる主人公は他の登場人物よりも心境変化が何段階にも分かれ、その振り幅を見事に体現しており、藤井監督曰く「本作を横浜流星の代表作にする」という宣言通り、気合いが入っている。古田新太さんと一ノ瀬ワタルさん演じる親子は村と職場の人間や立場に執着し、所属するコミュニティへの依存を体現して、コミュニティで発生する人間問題を提示していた。黒木華さん演じる出戻り人間は都会で夢破れたリタイア組の生態を映している。そんな中、中村獅童さん演じる村を出た刑事と作間龍斗さん演じる青年は村というコミュニティの基準に従わない判断が出来、こういう方々がコミュニティを良くも悪くもコミュニティの行く末を決めるのだと感じさせる。キャスト陣のアンサンブルが、日本のどこへ行っても存在するコミュニティの動向を表現し、社会の縮図を提示している。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命

(C)和久井健講談社 (C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

公 開 日  :4月21日

ジャンル:漫画実写、青春

監 督 :英勉

キャスト:北村匠海山田裕貴杉野遥亮今田美桜磯村勇斗、眞栄田郷敦、清水尋也永山絢斗村上虹郎高杉真宙間宮祥太朗吉沢亮

 

概要

 和久井健先生が原作の同名漫画を実写映画化した『東京リベンジャーズ』の続編。今回は原作で人気が高い「血のハロウィン編」を前後編の2部作構成とし、本作は前編にあたる。

 

あらすじ

 タイムリープを駆使して、犯罪集団・東京卍會から殺された元恋人・ヒナタを救ったタケミチ。だが、ヒナタが東卍によって再び殺されてしまった。彼女を救う鍵は、1人1人が仲間のために命を張れる東卍結成メンバー6人の絆を引き裂いた過去の悲しい事件にあった。タケミチは再び、東卍が地元の一大暴走族だった高校時代へタイムリープする。

 かつての親友たちは何故戦わなければならない運命になったのか。そして、10月31日のハロウィンにて始まる東卍崩壊の危機をもたらす、かつての親友同士の壮絶な戦い。交錯する過去の悲劇と分裂していく仲間との絆。果たして、タケミチは最悪の結末を止め、ヒナタと仲間の未来を救えるのか。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 恋人を救出するタイムリープ劇の第2幕にして2部作の1作目。

 「THE・2部作の1作目」といったところ。起承転結の「承」ぐらいで終わる。だが、それでも魅力は十分。変えた過去がどの程度まで未来に影響を及ぼすのか?新たな敵対勢力・芭流覇羅の正体とは何なのか?謎を解き明かす要素があり、丁度よく次作へ持ち越している。 また、各キャラの個性および役者陣のルックスも魅力が高い。今回から参戦した永山絢斗さん・村上虹郎さん・高杉真宙さんの存在感が光る。 高杉さんのモブっぽいキャラから脇役へシフトしていく匙加減が良かった。「あっ、お前はあの時の…」と指を差されるキャラになっていた。永山さんは初見時にスラムダンク三井寿に見えた(笑)

 ネックだったのは、村上さん演じる一虎が芭流覇羅に加入した理由。自業自得と責任転嫁の域を出てないし、事の発端から芭流覇羅へ加入する過程に繋がりが見えない。次作で回収するのだろうか?あと、前作もだったけど、眞栄田さん演じる三ツ谷の影が薄くて扱いに困っている。前作でヌルッと登場させて、劇的な活躍をしたわけではないのに主要メンバーにしたツケが来ている。『NARUTO』で言うところのテンテン状態。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

レッド・ロケット

(C)2021 RED ROCKET PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :4月21日

ジャンル:ドラマ、コメディ

監 督 :ショーン・ベイカー

キャスト:サイモン・レックス、ブリー・エルロッド、スザンナ・サン 他

 

概要

 『タンジェリン』・『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』など、アメリカ社会を描くことに定評があるショーン・ベイカー監督の作品。本作は、そんなショーン・ベイカー監督の毛色と打って変わって、落ちぶれた元ポルノ男優のダメ男を描いたコメディ・ドラマであり、キャリアの中で異例の一作となっている。

 主人公の元ポルノ男優マイキーを演じるのは、過去のポルノ出演映像が流出したことで一時は表舞台から姿を消していたスキャンダルを持つなど、マイキーと重ねる点が多いサイモン・レックス。本作がカンヌ国際映画祭コンペティション部門において、サイモンの熱演は大きな話題を呼んだ。周りを固めるのは、舞台女優のブリー・エルロッド、地元テキサスに暮らす演技未経験の人々。そして、LAの映画館のロビーでベイカー監督にスカウトされたスザンナ・サン。本作が初の長編映画出演となるサンは、「次なる大物」として数々のメディアで大きく取り上げられている。

 撮影について、「物語を本当に起こる場所で撮りたい」というベイカー監督の意図のもと、テキサス出身の撮影監督であるドリュー・ダニエルズを起用。テキサス特有の色・湿度・土っぽさを表現するため16mmフィルムを使用し、粗削りでありながらも美しくエモーショナルな景色を映し出している。

 

あらすじ

 ポルノ業界のアカデミー賞を5回逃した元ポルノ俳優のマイキー。今は落ちぶれて無一文となり、故郷のテキサスへ戻った。だが、住む場所はない。そこでマイキーは、テキサスに在住している別居中の妻レクシーと義母リルの家へと向かい、2人から嫌々な態度をされながらも転がり込むことに成功する。その後、マイキーは収入を作ろうと昔のコネでマリファナの販売を開始するが、ある日、ドーナツ店で働く少女と出会い、大きな人生の再起を図るようになる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 物語が全体的に地味な出来事の積み上げ。幕開けの数十分後から退屈な話に。だが、登場人物の人物像を理解し、相関図が出来上がると、退屈な物語に魅力が創出。おおよその登場人物がクズや愚か者や落ちぶれた者。だが、それでも自分のやりたい事を自分勝手に突き抜けようとする姿勢には清々しさを覚える。特に、その気概を感じたのはサイモン・レックス演じるマイキーとスザンナ・サン演じるストロベリー。

 マイキーの人物像は強烈。やる事なす事の全てが利己的。他人に縋るだけ縋って、他人をポイ捨てする人間性はクズ。あと、過去の栄光をベラベラ語る様は凄くナルシズム。だが、人生に再起を懸けて最後までやり切ろうとする姿勢、ポルノ業界のオスカーに数年連続でノミネートされるも受賞できなかった惜しさから、利己的なマイキーを応援したくなる。ポルノ業界で功績を残す能力があるのだから、努力の矛先が間違っていると思える。目標の為に頑張れるから、クズなのに応援したくなるキャラの説得性が十分に立っている。

 ストロベリーは見た目と中身のギャップが印象的。初々しい学生らしいファースト・インプレッションから自由奔放な経歴や振る舞い、マイキーより低いが少しのクズ感が清々しい人物像を形取っていく。

 総論すると、何の変哲もない物語を、クズか愚か者か落ちぶれた人物像を持ちながらも魅力的なキャラクターたちが清々しく彩る、おバカなコメディ&ドラマである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室

(C)2023劇場版「TOKYO MER」製作委員会

公 開 日  :4月28日

ジャンル:ドラマ

監 督 :松本彩

キャスト:鈴木亮平賀来賢人中条あやみ要潤小手伸也佐野勇斗ジェシーフォンチー菜々緒、杏、仲里依紗石田ゆり子

 

概要

 2021年7月から12月までTBS系「日曜劇場」枠で放送され、第109回ドラマアカデミーにて最優秀作品賞・主演男優賞(鈴木亮平さん)・助演男優賞賀来賢人さん)・助演女優賞菜々緒さん)・監督賞(松本彩さん他3名)を受賞したTVドラマ『TOKYO MER 走る緊急救命室』が劇場版で帰って来た。舞台はTVドラマから2年後であり、医師たちの新たな戦いが始まり、新たなドラマが生まれる。

 

あらすじ

 オペ室を搭載した大型車両・ERカーで事故や災害現場に駆け付け、自らの危険を顧みず患者のために戦う、都知事直轄の救急医療チーム「TOKYO MER」。彼らの使命はただ一つ。それは、死者を一人も出さないこと。

 横浜・ランドマークタワーで爆発事故が発生。数千人が逃げ惑う前代未聞の緊急事態が発生し、「TOKYO MER」と厚生労働大臣が新設した救急医療チーム「YOKOHAMA MER」が出動する。燃え広がるタワーの様子を見ていた「TOKYO MER」のチーフドクター・喜多見は「待っているだけじゃ、救えない命がある」と一刻も早く現場のタワーに向かうべきだと主張する。だが、「YOKOHAMA MER」の鴨居チーフは「安全な場所で待っていなくては、救える命も救えなくなる」と真逆の信念を訴え、両チームの思いが対立する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 事故や災害の現場に駆けつけ、その場で医療行為を行う救急医療チームの奮闘を描いたノン・ストップ救出劇。

 胸熱な作品。チーム全員が死者を出さぬよう尽力する気概は胸を打つ。「そこに負傷者がいるから、どんな危険な場所でも行く」という信条は、登山家が「そこに山があるから登る」同様の本能から来るものであろう。

 名優陣の医療行為の演技が良い。冷静かつ丁寧な所作。優しい言葉遣い。 そんなことされたら、命の瀬戸際に接近しても、誰もが安心感を覚えてしまう。特に鈴木亮平さんの存在が大きく、 現場に登場するシーンや負傷者の側にいるシーンは安心感の塊である。さらには、安心感の塊だった鈴木亮平さん演じる主人公が1人の夫および父としてピンチに陥る様にはギャップを感じる。

 救出劇なので、「助けてに来たぜー!」からの「いよっ!待ってました!」という鉄板コースもある。

 本作の凄い所は現場の災害がリアルタイム的にノン・ストップで襲ってくる点である。災害は運にも左右されるが、本作の災害は詰め将棋のように人間たちを追い打ちし、常にピンチを作る。一難去って、また一難が続いて観る者の目を離す猶予を与えない。観れば観るほど体感速度が加速していく。おそらく、本作を観た多くの方々が128分の尺の長さを感じなかったことであろう。個人的な体感速度は1時間程度だった。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

(C)2022 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :4月28日

ジャンル:アニメ

監 督 :アーロン・ホーバス、マイケル・ジェレニック

キャスト:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイジャック・ブラック宮野真守(日本版)、志田有彩(日本版)、畠中祐(日本版)、三宅健太(日本版) 他

 

概要

 世界的人気を誇る任天堂のゲームシリーズ『スーパーマリオ』のアニメ化。『ミニオンズ』や『SING シング』でお馴染みのスタジオことイルミネーションが任天堂と共同で手掛ける。プロデューサーは、イルミネーションの創業者であり最高経営責任者のクリス・メレダンドリと、任天堂代表取締役を務める宮本茂氏が担当する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージ。謎の土管で迷い込んだのは、魔法に満ちた新世界。離れ離れになってしまった兄弟が、絆の力で世界の危機に立ち向かう。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 ゲームと同等の演出や世界観を用いたり、ゲームにあるアイテムやギミックが出現したりと『スーパーマリオ』シリーズの歴史が結集した、テンションがブチ上がる映像体験。さらに、本作のマリオは諦めない性格を持った人物としてキャラ設定されており、何度ミスしたりゲームオーバーになったりしてもコントローラーを握ってプレイを続けるゲーム・プレイヤー自身と重なる。と、言うのが『スーパーマリオ』シリーズをプレイした視点からの意見。

 1本の映画作品という視点で見ると、並レベルの映画。そもそも、『スーパーマリオ』シリーズに触れてない未経験者には面白さを感じ取れる内容ではない。また、本作は基本的にゲームと同等の演出や世界観に燃えたり、ゲームのアイテムを見ることが楽しみの主軸となっており、未経験者が楽しめる範囲は経験者より何倍も狭小。加えて、基本的にワールドを巡ってアクションしていくだけなので、ストーリーに中身がない。そして、登場人物の成長がない。そのため、未経験者の楽しめなさに更なる拍車が掛かる。 総論として、本作は映画ではなくファン・ムービーと位置付けた方が正確である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

せかいのおきく

(C)2023 FANTASIA

公 開 日  :4月28日

ジャンル:時代劇

監 督 :阪本順治

キャスト:黒木華寛一郎池松壮亮真木蔵人佐藤浩市石橋蓮司

 

概要

 全編の9割9分をモノクロで映した青春時代劇。脚本および監督を務めるのは『冬薔薇』の阪本順治さん。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 時は江戸時代末期。中次と名乗る青年は紙屑拾い、矢亮と名乗る青年は糞を売り買いして生計を生計を立てており、辛い日々が続きながらも懸命に生きていた。ある日、中次と矢亮は寺子屋の便所で遭遇する。2人は激しい雨が降る中で雨宿りをしていると、寺子屋で読み書きを教えている先生・おきくが現れる。おきくは、武家育ちでありながらも、現在は貧乏長屋で元武士である父と2人で暮らしており、中次と矢亮同様に逆境を生きていた。境遇が近い3人は親交を深めていったが、ある日、おきくは事件に巻き込まれ、喉を切られて声を失ってしまう。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 糞を扱う作品だけに、ちゃんと糞が映されて「う〜ん、これは…」と食欲減退。だが、その汚さを見た反動で、貧乏暮らしを送る3人の主要人物たちが心を通わせるシーンの数々に人間の温かさが際立つ。その温かさは、出来立てホヤホヤの糞の温かさとは比較にならないほどホッカホカ。

 池松壮亮さん演じる登場人物の「糞」を用いた言葉遊びが秀逸。「これがホントの◯◯糞」や「これがホントの糞◯◯」と口に出したり体で表現したりする姿に、男性諸君にとっては胸の内にある「小学生男子の心」を刺激して笑わせてくれる。特に体で表現する様は、小学生時代に見聞きしたり思いついたりした空想を画にしている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個