プライの書き置き場

映画とゲームを勝手気ままにレビューするブログです

【まとめ】2023年 日本劇場公開の映画(2月編)

 この記事は2023年2月に日本の劇場で公開された映画作品をかる~く紹介していく記事です。(私が観た作品だけ)

 「2023年って、どんな映画があったっけ?」と新たな映画に出会いたい方や振り返りたい方、「あの映画、気になってるけど実際どんな感じなの?」と鑑賞の判断をつけたい方向けの記事になっています。本当に軽く紹介するだけなので、軽く流し読みする程度で読んでください。ネタバレは絶対にしません。ご安心ください。

 

 各作品ごとに以下の項目を挙げて簡単に紹介していきます✍

  • 公開日(日本の劇場で公開された日)
  • ジャンル
  • 監督
  • キャスト
  • 概要
  • あらすじ
  • 感想

 加えて、各作品ごとに以下の観点を⭐の数で評価していきます。

  • 脚本・ストーリー
  • 演出・映像
  • 登場人物・演技
  • 設定・世界観

 ⭐は最大で5つです。

 

 それでは、早速いきましょう💨

スクロール

(C)橋爪駿輝/講談社 (C)2023映画「スクロール」製作委員会

公 開 日  :2月3日

ジャンル:ドラマ、青春

監 督 :清水康彦

キャスト:北村匠海中川大志松岡茉優、古川琴音、MEGUMI忍成修吾

 

概要

 YOASOBIの大ヒット曲『ハルジオン』の原作者としても知られる橋爪駿輝さんが、若い世代から「自分たちの物語」と圧倒的な共感を得たデビュー小説を映画化。若者たちのリアリティ溢れる青春譚を、国内外で数々の受賞歴を持つ清水康彦監督がエモーショナルに描き出し、米津玄師さん、King GnuあいみょんさんなどのMVを手掛ける撮影監督の川上智之さんが独創的な映像美で魅せる。そして、本作の主軸となる若者たちを北村匠海さん、中川大志さん、松岡茉優さん、古川琴音さんの4名が演じる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 学生時代に友達だった”僕”とユウスケのもとに、友人の森が自殺したという報せが届く。就職はしたものの上司から全てを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに想いをアップすることで何とか自分を保っていた”僕”と、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。森の死をきっかけに”生きること・愛すること”を見つめ直す2人に、”僕”の書き込みに共鳴して特別な自分になりたいと願う”私”と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯していく。青春の出口に立った4人が見つけた、きらめく明日への入り口とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 4人の若い男女が抱える辛い現実と答えが見えない理想を描いた青春群像劇。

 令和初期を生きる20〜30歳ぐらいの若者たち(主にZ世代)を投影してる。会社への帰属意識は薄い。結婚して家庭を築くことが幸せに繋がるとは思えない。それらの考え方が、会社への所属を続けることと結婚して新たな世帯を作ることを無意識に(敢えて、この表現で)実行してきた30歳以降の世代とは真逆の道を辿っている。いや、多様性やアイデンティティの自由度が強く主張され過ぎて、「何者かになること」が風潮的に義務化のようになってしまったことで辿らざるを得なくなった。そして、「何者かになること」が強迫概念となっている上、コレと言える答えはない。その上、答えは自分自身でしか見つけることが許されず、そのことで令和初期を20代で生きる若者たちが息苦しくなっていると思われる。これは会社で言うならば、上司から何に対する企画か知らされず、「何かウケるアイデア出せよ」という具合の無茶振りに似ている。

 そんな息苦しい社会の中で生きる若者たちを、劇中の主要人物4名が幅広く普遍的に投影している。北村匠海さん演じる"僕"は会社への帰属意識は薄く、かといって何かをしたいわけから生きる意味がなく、近年、ワード化された「絶望死」に近い存在となっている。古川琴音さん演じる"私"や中川大志さん演じるユウスケは、他者を通じて、自分1人の力で物事に取り組み、社会に何かを示そうとする存在として描かれている。松岡茉優さん演じる菜穂は「何者かになること」の手段が見出せず、自分より上の世代が答えとして教える「結婚して家庭を築く」という選択を取れば、とりあえず周囲の人々が何者かに認定してくれるのではないかと空回りし、結婚を生き急ぐ現代の若者特有の結婚観を提示している。4人の共通点として、「何者かになること」が誰も責任と確信を持って教えてくれない以上、他人からの「こうして生きた方がいいよ」というアドバイスを真に受けてない点も現代の若者らしい。

 令和初期を生きる若者をリアルに描写したのは良いが、その印象が強すぎてタイトルにもなっている「スクロール」の意味が薄い。また、主人公の"僕"とユウスケ同級生の自殺から始まり、その死を「記憶のスクロール」と称して悼み、絶望死に散った者が生きてきたことを示そうとするアプローチは理解できるけど、まず、絶望死が無くなることを願うのが優先事項だと個人的には考える。原作である小説の通りに着地したのかもしれないが、若者たちをリアルに描写した以上、同級生の死を発信して絶望死の認知を広げたり、世間の人々が対策を考えを持ったりと、息苦しさを抱える現代の若者に光を当てた方が世間に対するメッセージに出来たと思う。結果論だけど…。

 全体的に(特にナレーション)が小説の文章っぽくて、耳から聞いて意味を解釈するのに時間を要する。その間に物語が進行してしまうので、もう少しだけ話し言葉に寄せた方が聞きやすかったと思う。

 おそらく、本作は物語がZ世代的だったり、小説の文章っぽくて物語が把握しづらかったりと賛否両論が多い。とはいえ、現代の若者が抱える息苦しさを描いた物語として受け取って欲しいところ。「Z世代のことなど知ったことか」が1番の悪。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

バイオレント・ナイト

(C)2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :2月3日

ジャンル:アクション、コメディ

監 督 :トミー・ウィルコラ

キャスト:デビッド・ハーバー、ジョン・レグイザモ、アレックス・ハッセル、アレクシス・ラウダー、リア・ブレイディ、ビバリー・ダンジェロ、エディ・パターソン、カム・ジガンディ 他

 

概要

 『ブレット・トレイン』や『Mr.ノーバディ』など、ハリウッドのアクション映画の最先端を行く、製作集団「87ノース・プロダクションズ」の最新作。『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のホッパー署長役で大ブレイク中のデビッド・ハーバー主演で贈る、聖なる夜をブッ壊すクリスマス物語。クールでバイオレンスなアクションと大爆笑のストーリー展開。そして、まさかの感動のフィナーレ。映画ファン必見の一本。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 物欲主義な子供たちに嫌気が差して久しく、少しばかりお疲れ気味のサンタクロース。それでも体に鞭を打ち、良い子にプレゼントを届けるため、トナカイが引くソリでクリスマス・イブの夜を駆け回っていた。とある富豪ファミリーが盛大にクリスマス・パーティーを開く豪邸に降り立ち、煙突から部屋へ入ったサンタが偶然鉢合わせたのは、富豪ファミリーの金庫にある現金3億ドルを強奪するため潜入した武装強盗集団だった。その場を見なかったことにして立ち去ろうとするサンタだったが、富豪ファミリー共々、3億ドルを巡る大騒動に巻き込まれてしまう。不運なサンタと富豪ファミリーの運命はいかに…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 アクションが良い。『ブレット・トレイン』や『Mr.ノーバディ』の制作会社と同じであり、冴えたアクションが見れる。痛覚を感じても痛快に変換させるブラック・ユーモアなグロ描写。近くにある物品を用いたモノ大喜利。(しかも、クリスマスに馴染みある物品を多用し、クリスマスの世界観を保つ徹底ぶり。)『ホーム・アローン』を彷彿させる仕掛け技もある。

 雰囲気が良い。R15指定なのに雰囲気は他のクリスマス映画と同等。ポップでファミリー向けな雰囲気を出している。プレゼントを欲しがるお子様もちゃんと居る。なのに、グロい暴力描写があるギャップ差は新感覚。まさに、"大人向け"クリスマス映画である。ブラック・コメディも多くあり、その部分でも笑わせて楽しませてくれる。

 世界設定が良い。主人公が本物のサンタであることが活かされている。本物だからこそ感じるサンタ業のシンドさは皮肉や風刺が効いて笑える。あと、本物だからこそ出来ても浮くことのない魔法能力も面白い。(魔法は使えても、身体能力は高くないといったバランスもナイス。パワーで敵を倒すのではなく、心の成長で倒す要因を見事に作っている。)何よりも、本物だから生まれる子供とのドラマはジンワリと熱いものがある。

 グロくて暴力的なのに、笑って温かい気持ちになれる珍妙なバランスで成り立った良作。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

FALL フォール

(C)2022 FALL MOVIE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

公 開 日  :2月3日

ジャンル:スリラー

監 督 :スコット・マン

キャスト:グレイス・キャロライン・カリー、バージニア・ガードナー、ジェフリー・ディーン・モーガン

 

概要

 実際のサッカースタジアムを使って爆破シーンを撮影した『ファイナル・スコア』。走行するバス中で次々と巻き起こる出来事を、限られたシチュエーションを駆使してド迫力のアクションを創り出した『タイム・トゥ・ラン』。それらを監督したスコット・マンが次に選んだのは地上600mの鉄塔の上で取り残された女性2人を描いたサバイバル・スリラー。『シャザム!』のグレイス・キャロライン・カリーと『ハロウィン』のヴァージニア・ガードナーが取り残された2人を演じる。また、『ウォーキング・デッド』シリーズに出演したベテラン俳優のジェフリー・ディーン・モーガンが脇を固める。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 山でのフリークライミングの最中に夫・ダンを落下事故で亡くしたベッキーは、悲しみから抜け出せずに1年が経とうとしていた。ある日、ベッキーを立ち直らせようと親友のハンターが新たにクライミングの計画を立てる。選んだ場所は、今は使われていない地上600mのモンスター級のテレビ塔だった。

 当日、老朽化で足場が不安定になった梯子を登り続け、頂上へと到達することが出来たが、喜びも束の間。アクシデントに遭遇し、2人はテレビ塔に取り残されてしまう。自分たちの持つ技術と知識をフル活用して、どうにか危機を抜け出そうとするが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 地上600mの鉄塔に取り残された女性2人の命運を巡るワン・シチュエーション・スリラー。一見すると、出オチ映画のように思えるが、全くをもって出オチになってない。むしろ、オチまでスリリングな緊張感が持続する。

 この作品の魅力は、伏線を回収しまくること。鉄塔でのアクシデントと女性2人が生き残る為に閃くアイディア全てが、発生前にフラグを立てている。一見、無駄に思えるシーンが後になって、「この為の前フリだったのか!」と気付いては唸る。それ故、本作に無駄や蛇足が一切ない。シャープに練られたストーリー展開を見せてくれる。また、2人が生き残る為に実行することに必要なモノ全てが消耗品であり、次第に減少して絶望感を加速させる。この手の作品では水分と食料が命綱だが、それ以上に消耗品が貴重に見えてくる。あと、ビクついてる主人公に対し、好奇心剥き出しで鉄塔を登る女友達が主人公と一緒に観る者の恐怖を煽る。

 時間の経過と共に、女性2人の化粧が落ちていくのがリアル。

 鉄塔の描写もしっかり怖い。高低差はもちろんのこと、地上から映して360度回転させるのは頭おかしい(笑)ネジや梯子のガタつきをしっかり見せている。

 本作はスリラー要素だけではなく、「生きる」ことへのテーマ性もしっかり描いている。『ジョジョの奇妙な冒険』のツェペリに似ており、恐怖の克服こそが人生を前進する手段であることを女友達に煽られて行動した主人公から伝わってくる。また、一度大きな恐怖を体験すれば、小さな恐怖の耐性が出来るといった精神療法的な側面もある。ただ、現実世界の我々が本作の女性2人のようにバカ高い鉄塔に登ることを第一の手段にすることは当然ながら危険だ(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

#マンホール

(C)2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.

公 開 日  :2月10日

ジャンル:スリラー

監 督 :熊切和嘉

キャスト:中島裕翔、奈緒永山絢斗

 

概要

 『海炭市叙景』、『私の男』などを国内のみならず、海外から高い評価を受ける熊切和嘉監督の最新作。人間のダークサイドを抉り取る独自の作風を活かしながら、自身のキャリアでも初となる本格的ジャンル映画に挑み、新たな熊切ワールドを構築した本作。原案・脚本を務めるのは、『ライアーゲーム』シリーズ、『マスカレード・ホテル』シリーズの岡田道尚さん。本作は、巧妙な仕掛けを幾重にも張り巡らせ、観客の予測を裏切る脚本制作に定評のある岡田さんに完全オリジナルストーリーとなる。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 大手の不動産会社に勤める川村俊介は誰もが羨む存在だった。営業成績はナンバーワンであり、さらには社長令嬢との結婚が決まり、順風満帆な人生を送っていた。しかし、社長令嬢との結婚式を控えた前夜、会社の同僚たちによる結婚祝いのパーティを楽しんだ川村は、帰り道に突然と意識を失ってしまう。そして、目が覚めると、マンホールの穴に落ちてしまっていた。翌日の結婚式に間に合うよう、自身の持ち物を使って脱出を試みるが、状況は予期せぬ方向へ進んでいく。幸せの絶頂から最悪の事態へ転落した川村に待ち受ける結末は…。

 

感想

 マンホールに転落した男の脱出を巡るワン・シチュエーション・スリラー映画として、最後まで楽しませてくれる作品。

 穴に落ちる最悪。落ちた穴が最悪。時間経過と脱出の試みをする度に発生する新たな最悪。最悪な状況下、最悪を打破する主人公の機転に驚かされる。最悪を加減しながら待ち受けるラストに衝撃が走る

 主人公を演じた中島裕翔さんの1人芝居が良い。自身の持ち物だけでピンチを凌いだり、脱出を試みたりする閃きに「次は、どんな手段を使うのだろう?」と観る者を飽きさせない。また、穴に落ちた苛立ちや早く穴から出たい焦燥感が、体の震えから伝わってくる。99分間、見事な立ち回りでした。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

エゴイスト

C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

公 開 日  :2月10日

ジャンル:ドラマ

監 督 :松永大司

キャスト:鈴木亮平宮沢氷魚、ドリアン・ロロブリジーダ柄本明阿川佐和子

 

概要

 原作は数々の名コラムを世に送り出してきた高山真さんの自伝的小説『エゴイスト』。『トイレのピエタ』、『ハナレイ・ベイ』など人の心の澱を深く抉る作品で知られる松永大司監督が、ドキュメンタリータッチの映像で、登場人物たちの間に流れる親密な温度感や、愛ゆえに生まれる葛藤を繊細に伝える。

 主人公の浩輔を演じるのは、ストイックさと深い洞察力で数々のキャラクターに命を吹き込んできた鈴木亮平さん。本作では強さと脆さを同居させた生々しい演技で新たな境地を開拓した。浩輔の恋人である龍太役には話題作への出演が続く宮沢氷魚さん。その透明感あふれる儚い佇まいが愛を注がれる純粋な青年というキャラクターに説得力を与えている。また、龍太の母・妙子役の阿川佐和子さんは、主人公の人生観に影響を与えるキーパーソンともいうべき人物をナチュラルかつ圧倒的な存在感で演じている。すべての人に愛を問いかける感動のヒューマン・ドラマは、公開に先立って行われた東京国際映画祭でも高い評価を得た。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。

 自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらぬ運命が押し寄せる…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 恋人同士の愛だけに留まらず、他人を愛する全ての行為に目を向けたヒューマン・ドラマ。家族愛の他、無数にある愛の形へ変容し、誰しもの愛する行為に帯びた自身のエゴを良い意味で照らす。登場人物の行く末を見守る楽しみを備えながら、愛の本質に迫った今年を代表する傑作。

 鈴木亮平さんの演技が良いゲイを隠す時とオープンにする時の切り替えが見事。手つきから変えている。恋人やその家族へ一心に愛を貫き通そうとする気持ちは貢献心があれど、自身が手にしたい欲望が入り混じっている。今作のエゴイストというタイトルを見事なまでに体現している。

 宮沢氷魚さんも良い。 ゲイとして世を渡ってきた心苦しさが垣間見える。また、鈴木亮平さん演じる主人公と出会い、心が開放されて満たされていく姿を体現している。

 阿川佐和子さんも良い。 阿川さんのキャラが今作を同性愛の映画から家族の愛、そして性も血縁関係を超越した全ての愛へと結びつけてくれる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐️

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

バビロン

(C)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

公 開 日  :2月10日

ジャンル:歴史

監 督 :デイミアン・チャゼル

キャスト:ブラッド・ピットマーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョバン・アデポ、リー・ジュン・リー、トビー・マクガイア 他

 

概要

 『セッション』や『ラ・ラ・ランド』を手掛けたデイミアン・チャゼル監督の最新作。舞台はゴージャスでクレイジーなハリウッド黄金時代。豪華なファッション。ド派手なパーティ。規格外の映画撮影。熱狂的ジャズ・ミュージック。その全てが観る者の感性を刺激する。主演には、ブラッド・ピットマーゴット・ロビーを迎え、激動のハリウッドで夢を叶えようとする男女を演じる。ゴールデン・グローブ賞では作品賞や演技賞をほぼ独占するなど主要5部門にノミネートされ、作曲賞を受賞した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャックは毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る新人女優ネリーと、映画製作を夢見る青年マニーが運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、演技の才能で周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時はサイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして、3人の夢が迎える結末は…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 サイレント映画で得た栄光。トーキー映画の台頭で始まる没落。ハリウッドにおける時代の転換期に直面した映画人の変遷を描いた、アップダウンが激しい栄枯盛衰ムービー。 映画愛に溢れ、映画の不滅性を説いた作品。「映画は消えんぞ!受け継がれるんや!不滅なんだ!」とチャゼル監督の叫びが響き、映画へのリスペクトを感じ取れる。同時に、「映画の一部となる」と豪語したサイレント映画人の、映画に生きて映画に散った末路からは、映画の劇薬性も見て取れる。また、トビー・マグワイア演じる狂人からは、更なるエンタメを望む、行き過ぎた狂気も見て取れる。かつて、映画人にとってのは映画は麻薬だったのだろう。だが、それでも過去の映画人たちが繋いできたバトンで現在の我々が映画を観ていられると思えば、敬意を捧げる。

 チャゼル監督だけあって、音楽は素晴らしい。序盤の乱痴気パーティでは力強いジャズが鳴り響く。同時に、右往左往しながら多人数を捉えていくカメラワークも素晴らしい。また、サイレント映画の撮影現場のガヤガヤ感、トーキー映画の撮影現場の静かで神経質な演出も流石。対比をバッチリ見せつける。

 「これがホントのクソ喰らえ」を絵面でやってしまうので、一部シーンは閲覧注意。あと、尺が3時間越えで疲労困憊する。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

銀平町シネマブルース

(C)2022「銀平町シネマブルース」製作委員会

公 開 日  :2月10日

ジャンル:ドラマ

監 督 :城定秀夫

キャスト:小出恵介吹越満宇野祥平、足立エリカ、日高七海、中島歩、さとうほなみ

 

概要

 映画界屈指の作り手・城定秀夫さんといまおかしんじさんが初タッグで描くのは、時代遅れの小さな映画館を舞台に、映画好きの愛すべきバカ者たちが一瞬の夢を見るために集まり奔走する、ひとときの祭りの終わりと新たな旅の始まりの物語。

 出演には本作が本格的な主演復帰作となる小出恵介さんを中心に、吹越満さんなどのベテラン俳優陣、宇野祥平さんなどの城定秀夫監督の過去作でお馴染みの個性豊かなキャストが集結した。

 埼玉県にある現役ミニシアター・川崎スカラ座をロケセットとして撮影を敢行。年齢も境遇も違う、多種多様な人間たちを受容する映画館という場所で、ひとときの高揚とそこはかとない物悲しさに満ちた人間模様がジンワリと胸を打つ快作が誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 かつて青春時代を過ごした町・銀平町に帰ってきた一文無しの青年・近藤は、ひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤と、映画館”スカラ座”の支配人・梶原と出会い、バイトを始める。同僚のスタッフ、老練な映写技師、個性豊かな映画館の常連客との出会いを経て、近藤はかつての自分と向き合い始めるが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 映画や映画館についての映画がある中、映画を愛する者達のコミュニティに焦点を当てた映画。

 映画は多くの人々に観てもらい、ヒットを狙う商業目的が一般的。だが、身近な人達という狭い範囲に思いを届ける選択肢としても映画は機能する。商業性を抜くことで、改めて映画の存在意義を実感する。劇中全体が内輪ムードの狭い世界観であり、映画の良さを投げ掛けることはないが、映画を通して繋がった者達による幸福感が詰まった作品。

 何が起きても、登場人物の経歴がなんとかする後出しジャンケンの連続は、ご都合主義感が否めない。だが、登場人物が人生を頑張って生きてきた説得材料となり、応援したくなる要因になっている。

 城定監督作品らしい長回し撮影などの遊び心も健在。

  吹越満さんと宇野祥平さんは相変わらず、オモシロおじさんとなって笑わせてくれる。 中島歩さんは相変わらず、女性に手を伸ばす役でワロタ。ユニバースしすぎやろ(笑)

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

コンパートメントNO.6

(C)2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

公 開 日  :2月10日

ジャンル:ドラマ

監 督 :ユホ・クオスマネン

キャスト:セイディ・ハーラ、ユーリー・ボリソフ、ディナーラ・ドルカーロワ

 

概要

 今作で監督を務めるのは、デビュー作『オリ・マキの人生で最も幸せな日』でカンヌ国際映画祭の「ある視点部門」を受賞したユホ・クオスマネン。鮮烈な映画監督デビューを果たしたユホが2作目に選んだ題材は、ロサ・リクソムの同名小説を原案にしたロード・ムービー。今作もカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、2作目にしてグランプリを獲得。さらには、フィンランドアカデミー賞と言われるユッシ賞では作品賞・監督賞・主演女優賞など7冠を制し、アカデミー賞国際長編映画フィンランド代表選出、ゴールデングローブ賞非英語映画賞ノミネートと世界中の映画祭で17冠の快挙を遂げ、フィンランドを代表する新たな名作となった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 時は1990年代のモスクワ。留学中のフィンランド人学生ライラは恋人ともに、世界最北端駅ムルマンスクにある古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅を予定していた。だが、恋人にドタキャンされ、1人で列車に乗って旅をすることになった。ライラが乗った寝台列車6号コンパートメントの同室に乗り合わせたのは、リョーハというロシア人男性。リョーハは粗野で子供じみており、ライラは接し方に苦慮することに…。だが、列車の旅が進むうち、国籍も人種も違う2人は互いに惹かれあっていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 列車で相席した、孤独を抱えたフィンランド人の留学生と子供じみて変なロシア人男性による愛しきロードムービー国境も人種も超えた旅ゆえ、旅を題材にした名曲「Voyage Voyage」が見事にマッチ。孤独を埋め合わせてゆく2人の感情にジワジワと温かみを覚える。

 今作は、登場人物の説明はおろか、主人公の名前紹介すら削ぎ落とし、シンプルな設計を越えてリアリティあるロードムービーとなっている。情報源が少ない画と台詞で構成されており、観る者の想像性と感受性に委ねている。だが、それが目に映ることや耳で聞いたことしか情報を得られない現実世界の我々と重なり、見知らぬ誰かに囲まれながら旅をする没入感を作っている。また、観る者の想像に委ねることで、ロードムービーにありがちな主人公たちの自己満足の域で完結する弱点をクリアしており、主人公たちの思いと直結しやすくなっている。ロードムービーの正解って、コレだったのか?

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

崖上のスパイ

(C)2021 Emperor Film and Entertainment (Beijing) Limited Emperor Film Production Company Limited China Film Co., Ltd. Shanghai Film (Group) Co.,Ltd. All Rights Reserved

公 開 日  :2月10日

ジャンル:サスペンス

監 督 :チャン・イーモウ

キャスト:チャン・イー、ユー・ホーフェイ、チン・ハイルー、リウ・ハオツン、チュー・ヤーウェン 他

 

概要

 1987年の監督デビュー作『紅いコーリャン』でベルリン国際映画祭金獅子賞を受賞し、中国第5世代の才能として世界的な脚光を浴び、その後も高度な娯楽性に富んだ作品群を世に送り出し、2008年夏季と2022年冬季の北京オリンピックで開会式、閉会式の総監督を務めるなど華やかなフィルモグラフィーを築いてきたイーモウ監督が初めてスパイ・サスペンスに挑んだ。雪と闇に彩られた映像、ヒッチッコクの名作を彷彿とさせる列車内の攻防、ハルビン市街地でのチェイス、銃撃戦といった息詰まる見せ場が満載。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 1934年冬、満州国ハルビンソ連で特殊訓練を受けた共産党スパイ・チームの男女4人が、極秘作戦”ウートラ計画”を実行するため現地に潜入する。ウートラ計画とは、秘密施設から逃れた同胞を国外に脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らしめること。だが、仲間の裏切りによって、そのミッションは共産党の天敵である特務警察に察知されていた。特務の執拗な追跡、次々と放たれる罠により、チームは追い詰められていく。果たして、彼らはミッションを完遂することができるのか…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 1930年代の冬、満州国に潜入したスパイたちの極秘任務を描いたサスペンス。舞台である満州国の白い雪上とは対比的に、陰で暗躍する者たちの黒い諜報戦が繰り広げられる。

 かなり硬派な仕上がり。スパイ・アクション映画のようなスタイリッシュな演出は皆無。現実の軍事経験者のように無駄のない動きで肉弾戦・銃撃戦・諜報戦をシームレスに展開していく本格路線。敵の倒し方や味方との連絡手段1つ1つを堅実にカメラへ収めている。加えて、劇伴の助力&思わぬ敵と味方の発覚が常に緊迫の糸を張らせる。また、綺麗な雪上で綺麗事では済まない汚く血みどろなコントラトがカラッと味を付ける。

  個人的に辛かった点は、中国映画に詳しくないので、俳優の顔の区別が難しかったこと。似たような服装をしたキャラが入り乱れる為、「この人、誰だっけ?」が頻発した。整理する自信がない方は疲労時の鑑賞をオススメしない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

対峙

(C)2020 7 ECCLES STREET LLC

公 開 日  :2月10日

ジャンル:ドラマ

監 督 :フランク・クランツ

キャスト:リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトン、ミッシェル・N・カーター 他

 

概要

 ほぼ全編、密室4人の会話だけで進行するにも関わらず、どんなスリラーにも勝る緊迫感に満ちた脚本と、俳優陣が生み出す臨場感におって、本作は英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部門でノミネート、釜山国際映画祭フラッシュフォワード部門観客賞をはじめ43映画賞を受賞した。

 不寛容やリアルな人間関係の希薄さが問題視される現代社会で、「被害者と加害者の対話」という極めて重くセンシティブなテーマを圧倒的な臨場感とスリルで描き切る傑作が誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの生徒が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。

 夫婦はセラピストの勧めで、加害者の両親と合って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす4人。そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 事件で共に息子を失った被害者と加害者の両親による心中のぶつけ合いを描いたワン・シチュエーション対話劇。

  息子を殺害された、やり場なき葛藤。息子を犯罪者に育て上げた責任感と罪悪感。事件を究明しても生まれ来る落とし所なき悲しみに、双方どちらにも感情移入。誰かが亡くなる悲しみを知ることで、確かにその人は存在して愛していたのだと実感する。そういった意味で、悲しみを知る者たちは同志になるのだろうと思った。

 1時間以上ある対話が、始まりから終わりまで時系列を飛ばすことなく、ワンカット風に展開し、非常に本物感があった。惜しかった部分は、加害者サイドの両親が同時に喋ると、まるで打ち合わせしたかのように互いにセリフを被らせず流暢にペラペラ話すため、その時だけ本物感が若干、消失した。だが、それを踏まえても、被害者と加害者の双方の苦悩が対話だけでも克明に伝わり、煮え切らない思いからの前進を示した傑作であることに変わりない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

BLUE GIANT

(C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C)2013 石塚真一小学館

公 開 日  :2月17日

ジャンル:アニメ、青春、音楽

監 督 :立川譲

キャスト:山田裕貴間宮祥太朗岡山天音

 

概要

 2013年に石塚真一先生が「ビッグコミック」(小学館)で連載を開始した漫画「BLUE GIANT」。世界一のジャズプレーヤーを目指す青年・宮本大を中心とした、エキサイティングで感動的なストーリーや、音楽シーンの圧倒的な表現力などで多くの読者を魅了し、”音が聞こえてくる漫画”とも評されている。第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞および第62回小学館漫画賞(一般向け部門)など受賞多数。多くの著名人からも絶賛され、コミックスのシリーズ累計部数は890万部を超える大ヒット作品が満を持して映像化。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会い、バンドを組もうと誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、2人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は”JASS”を結成する。

 楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに全力でサックスを吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを賭けてきた雪祈。初心者の玉田。3人は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演して日本のジャズシーンを変えることを目標にして日々の練習に打ち込んでいく。情熱の限りを音楽を注いだ彼らに見える景色とは…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 3人の若きジャズマンの成長を見守りながら感銘を受ける、熱く激しく楽しい映像体験。身につけた術に思いを込める。「技能×気持ち」の掛け算から生み出した演奏から、聴覚的・視覚的…そして感情的な視点で言語なき高揚感を一身に受け止める快作

 主要人物3人のバランスが良かった。天性で感覚派のサックス・プレイヤー。現実主義で秀才タイプのピアニスト。初心者ドラマー。感性と技量の差はあれど、身につけた術に気持ちを乗せ、演奏で感情を表現する姿勢に感銘を受けた。スラムダンクの堂本監督と同じで、技能を会得したら最後は気持ちの問題。

 演奏シーンが惜しい。キャラがCGになった際の挙動が全てカクカクだし、体の関節があらぬ方向へ曲がっていた。それ以外は抽象的表現とキャラの人生を描写するケレン味があって素晴らしい。

 ジャズ用語が最小限で助かる。ジャズを知らずに観ても楽しめる。また、主人公・宮本の信条である「演奏を聴いてくれた人が感動するだけでいい」を構造的に体現している。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計16個

 

シャイロックの子供たち

(C)2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

公 開 日  :2月17日

ジャンル:ドラマ、ミステリー

監 督 :本木克英

キャスト:阿部サダヲ上戸彩、玉森祐太、柳葉敏郎杉本哲太佐藤隆太渡辺いっけい柄本明橋爪功、白石蔵ノ介 他

 

概要

 累計発行部数60万部を突破した池井戸潤さんによる小説『シャイロックの子供たち』。

 池井戸さんが「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と明言し、原点にして最高峰とも言える原作が、満を持して初映画化。WOWWOWドラマ化も話題となっているが、映画は小説ともドラマとも展開が異なり、独自のキャラクターが登場する完全オリジナルストーリー。池井戸さんが太鼓判を押した脚本である、この映画版『シャイロックの子供たち』に、2018年大ヒットを記録した『空飛ぶタイヤ』の本木克英監督をはじめとするメインスタッフが再集結。キャスト陣には、主演の阿部サダヲさんをはじめとする超豪華キャストが勢ぞろいした。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 東京第一銀行の小さな支店で起きた、現金紛失事件。お客様係の西木は、同じ支店の愛理と田端とともに、事件の真相を探る。一見平和に見える支店だが、そこには曲者揃いの銀行員が勢ぞろい。出世コースから外れた支店長・九条、超パワハラ上司の副支店長・古川、エースだが過去の客にたかられている滝野、調査に訪れる嫌われ者の本部検査部・黒田。そして、一つの真相に辿り着く西木。それはメガバンクにはびこる、とてつもない不祥事の始まりに過ぎなかった…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 金の呪縛に囚われ、闇を抱えた銀行員と銀行そのものを浄化する群像劇。金の切れ目が縁の切れ目ならぬ、金の切れ目が闇の切れ目となる。

 池井戸潤さんの原作映画らしく、人間と職場の矜持の物語であり、人間関係のしがらみや秘密を抱えた苦悩といったヒューマン・ドラマがあり、曲者たちによる手札の出し合い・伏線を綺麗サッパリ回収する逆転性といったエンタメ性が完備されている。今作はヒューマン・ドラマ性のある群像劇に比重を置いており、痛快さを求めると肩透かしを喰らう。だが、欲に釣られた金貸しからありのままの人間へと心機一転するカタルシス感じる。とはいえ、エンタメ性とのバランスが悪かったり、主要人物さえもしれっとフェードアウトしたりで薄まるけれども。

 主人公を演じた阿部サダヲさんの活躍が大きい。温かみある人柄ながらも表に決して出さない闇を抱えている。加えて、お笑い担当も兼任。そのため、他の池井戸潤さん原作の映画に比べ、コミカルな部分が多い。阿部サダヲさんのツッコミ力や柄本明さんとの漫才的な掛け合いは笑える。

 銀行の闇から生まれるヒューマン・ドラマとエンタメ性。コミカルな演出。それら全てを阿部サダヲさんのマンパワーで示した、安定の池井戸潤イズム映画。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

ベネデッタ

(C)2020 SBS PRODUCTIONS - PATHE FILMS - FRANCE 2 CINEMA - FRANCE 3 CINEMA

公 開 日  :2月17日

ジャンル:伝記

監 督 :ポール・ヴァーホーベン

キャスト:ビルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソン、ルイーズ・シュビョット 他

 

概要

 カンヌ国際映画祭騒然!暴力と、セックスと、教会の欺瞞を挑発的に描くポール・ヴァーホーベン監督最新作。『氷の微笑』、『ショーガール』、『ブラックブック』、『エル ELLE』を生み出したポール・ヴァーホーベンが次に目をつけた題材は、17世紀に実在した修道女の裁判記録に記載されたベネデッタ・カルリーニという名の女性。彼女は幼い頃からキリストのビジョンを見続け、聖痕や奇蹟を起こして民衆から崇められた一方、同性愛の罪で裁判にかけられた。男性が支配する時代に権力を手にした彼女が起こした奇蹟は本物か、はたまた狂言か。ベネデッタに翻弄される人々を描いた奇想天外なスペクタクルが巨匠ポール・ヴァーホーベンにより映像化される。主演は『エル ELLE』にも出演しているビルジニー・エフィラ。さらに世界的大女優シャーロット・ランプリングも登場する。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 17世紀イタリア。幼い頃から聖母マリアと対話し、奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは6歳で修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性・バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い、ベネデッタとバルトロメアは秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスの花嫁とみなされて波紋が広がる。民衆から聖女と崇められ、権力を手にしていくベネデッタだったが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 エスに導かれ、聖女と名乗り出た修道女を巡る、人と神(?)のスペクタクル。

 組織内のパワーバランス。禁忌を犯して得る自由の愛。心身共に信仰で固まった人の論理と所業に、真実か虚偽かを問うことさえ愚問となるのは恐ろしい。同時に、「いや、理屈は分かるけど、なんだよソレ〜」とツッコミを入れる余地があるエンタメ性もある。キリスト教の話ではあるが、知識は不要。ほぼ全ての登場人物がキリストの教えに沿って行動するが、理屈が簡潔。世界中の誰が観ても「あ、そういうことね」と納得する。作りが優しい。また、キリスト教の物語だけど、コミュニティのイザコザ劇として身近な親しみもある。

 出演者の演技が素晴らしい。主人公を演じたビルジニー・エフィラは純心さと無敵感を併せ持ったカリスマ性を披露。バルトロメアを演じたダフネ・パタキアは「この組織、君に向いてないぞ?」と思わせるお調子者ぶりを披露。修道院長を演じたシャーロット・ランプリングは信仰と実娘と組織に右往左往しながらも答えを探ろうとする意思を体現してた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計19個

 

アントマン&ワスプ クアントマニア

(C)Marvel Studios 2022

公 開 日  :2月17日

ジャンル:アメコミ、SF、アクション

監 督 :ペイトン・リード

キャスト:ポール・ラッドエバンジェリン・リリー、キャスリン・ニュートンミシェル・ファイファーマイケル・ダグラス、ジョナサン・メジャース 他

 

概要

 新たな「アベンジャーズ」へ続く物語が、ついに始動。最小&最強のアベンジャーズアントマンは、量子世界に導く装置を生み出した娘キャシー達と共に、ミクロより小さな世界へ引きずりこまれてしまう。そこで待ち受けていたのは、過去、現在、未来すべての時を操る能力を持つ、マーベル史上最凶の敵、征服者カーン。彼がこの世界から解き放たれたら、全人類に恐るべき危機が迫る…。アベンジャーズで最も”普通すぎる男”アントマンが、マーベル史上最大の脅威に挑むアクション超大作。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 上記の概要に同じ。

 

感想

 コミカルな雰囲気や小さくなったり大きくなったりする伸縮自在なアクションの軽快さは鳴りを潜め、極小にして広大な量子世界を渡るSFアドベンチャーへ移行したアントマン3作目。もはや、アントマンの名を冠することも不要かも。既存2作品のコメディとアクションが減少した分、今作は群勢vs群勢という逆に蟻らしい要素や次回以降のMCUシリーズの世界観構築をしてバトンを繋ぐ役割を担った。また、シリーズのラスボスとなるカーンの小手調べとしても機能し、良くも悪くも古き良き、続編の為の続編となった作品。

 辺り一面に広がる量子世界のビジュアルについては、今までのMCU作品やスター・ウォーズを彷彿させる既視感がある。異人種の共存や飛行船とレーザー銃が思いっきりSW。生物や地表はストレンジ・ワールドに似たブヨブヨ感がある。

 キャラクターについて言及すると、量子世界の説明をなかなかしやいジャネットにイラついた。 キャシーが、自分の犯した過ちについて、自分で責務を果たそうとする姿勢に好感が持てる。MCUシリーズの前作において、すぐ他人へ責任転嫁をした『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のDr.ストレンジと『ブラック・パンサー:ワカンダ・フォーエバー』のラモンダはキャシーを見習って欲しい。

 全体的にアントマンらしさは薄くなったが、今後のMCUシリーズの土台として、1つのSF映画としては無難に楽しいであろう作品。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

ボーンズ アンド オール

(C)2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.

公 開 日  :2月17日

ジャンル:ドラマ、ラブ・ロマンス

監 督 :ルカ・グァダニーノ

キャスト:テイラー・ラッセル、ティモシー・シャラメアンドレホランド、クロエ・セビニー、マーク・ライランス

 

概要

 『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメの再タッグを結成して贈る、人喰いたちを描いたドラマ。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 生まれながらに人を喰べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン。彼女はその謎を解くために顔も知らない母親を探す旅に出る。その道中、同じく人を喰べる衝動を抑えられない青年リーと出会う。初めて自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を見つけ、次第に求め合う2人。だが、彼らの絆は、あまりにも危険だった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 カニバリズムというホラー、スリラー、サスペンスに分類されるジャンルを取り扱っているが、人喰いという特殊事情を持つ者たちの特殊なヒューマン・ドラマに落とし込みながらも秘密を持つ者やマイノリティを抱える者たちの世間一般には理解し難い葛藤を描いた普遍的な物語になっている。

 人喰い故に他者を物理的に傷つけること。家族や親しい者から拒絶を受けること。本当の自分を受容してくれると思って、同類との関わりを追い求めること。同類かと思いきや価値観が一致せず、同じ人喰いだからといって一括りに出来ないこと。人喰いとなった者が抱える特殊事情を網羅し、「人喰いになると、そうなるのか」と理解すると同時に「全部とは限らないが、誰にも言えない秘密を持ってる人やマイノリティを抱える人にも当てはまる」とも捉えられ、本作のカニバリズムはメタファーでもあると理解する。人喰いたちのヒューマン・ドラマという唯一無二の特殊な作品にしながらも、登場人物が抱える葛藤は他の特殊事情を持つ者にも通ずる普遍性を帯びており、見事なテーマの落とし込みである。

 特殊を持って普遍を語るモノだが、ラストは人喰いならではの唯一無二なオチであり、『ボーンズ アンド オール』というタイトル回収を行って見事な着地を決める。邪悪な人間でないとはいえ、人を喰らう者として「私は人殺しをしても幸せに生きてやる!」という具合でジョジョ吉良吉影にはならず、苦痛と幸福の半々を残すベストなバランスである。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

別れる決心

(C)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

公 開 日  :2月17日

ジャンル:サスペンス、ラブ・ロマンス

監 督 :パク・チャヌク

キャスト:パク・ヘイル、タン・ウェイイ・ジョンヒョン、コ・ギンピョ 他

 

概要

 『オールド・ボーイ』『お嬢さん』など唯一無二のストーリーテリングで世界中の観客を魅了し続けてきた巨匠パク・チャヌク監督の最新作は、サスペンスとロマンスが溶け合う珠玉のドラマ。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門では監督賞を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞部門の韓国代表に選出された。

 韓国では公開後に発表された脚本集がベストセラーになり、劇中のセリフがネットで大流行。BTSのメンバーRMが繰り返し鑑賞したことをSNSで報告するなど、本作が描く迷路にハマり込む人々が続出した。次から次へと起こる予想外の展開、細部までこだわり抜かれたビジュアル、相手の本心を知りたいヘジュンとソレのスリリングな駆け引き…先の読めないドラマは、映画史上最大の”美しくも残酷な結末”に向かって突き進んでいく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレは捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が沸き上がってくる。いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く”愛の迷路”のはじまりだった…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 事件を追う刑事と事件の容疑者である女性による対峙と禁断の愛を描いたクライム・サスペンス&ラブ・ロマンス。

 演出がレベチ。他の監督が絶対やらないであろう視点からのショット。秀逸なマッチカットのセンス。裸体を晒さず、手や指で表現する官能感。一見、台詞やシーンで語られる情報量の多さが目立つが、画力の強さとシーンの繋ぎで観る者をグイグイ引き込む魔力を宿している。あと、他人の恋愛模様を覗き見する面白おかしい笑いも完備。

 また、対峙と惹かれ合いを繰り返した2人を通し、恋愛そのものがサスペンスであり、傷口や悔恨を残すものだと染みる。観る者に映像を焼き付け、映像でテーマを語る。「これが映画だ!」と言わんばかりの傑作。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

彷徨い

Netflix

公 開 日  :2月22日

ジャンル:スリラー

監 督 :ナサニエル・マーテロ・ホワイト

キャスト:アシュリー・マデクウィ、ジョーデン・マイリー、ブッキー・バックレイ、サミュエル・スモール、マリア・アルメイダ、ジャスティン・サリンジャー

 

概要

 特になし。

 

あらすじ

 理想的な生活を丹念に作り上げ、夫と子供2人と共に郊外で暮らす女性教師ニーヴ。だが、ある日、見覚えのない黒人の男女が突然目の前に現れたことで、満ち足りていた彼女の生活が一変する。

 ※Netfiixの視聴ページより引用および抜粋

 

感想

 夫と子供2人を持つ女性教師の前に突如、姿を現した謎の黒人男女が彼女の生活を不穏に侵食していくスリラー。 不意打ちで視覚に入ってくる黒人男女の眼差しを浴び、体が止まるファースト・インプレッションを味わう。観る者の目を引いたところで、人物相関図を作り上げ、家族と人種のテーマにスライドしていく順序がバッチリと嵌まっている。

 一見するとスリラー作品だが、物語の先にあるのは人種と家族の問題である。邦画の『ある男』でも語られた「人生はやり直すことが出来るけど、生まれ直すことは出来ない」が本作にもあり、『ある男』とは対極の方面に突き抜けており、生まれ落ちた場所を呪って否定し続けることが描かれる。そして、生まれ直しを出来ないことが家族という呪縛へ永遠に繋がっていることも追随している。それ故、人種も家族も永遠の鎖で繋ぎ止まっているから、逃げずに向き合っていこうと思える作品である。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計14個

 

湯道

(C)2023映画「湯道」製作委員会

公 開 日  :2月23日

ジャンル:ドラマ

監 督 :鈴木雅之

キャスト:生田斗真濱田岳、橋本環奈、小日向文世吉田鋼太郎窪田正孝柄本明

 

概要

 第81回米アカデミー賞外国語映画賞をはじめ、国内外問わず数々の賞を総なめにした映画『おくりびと』の脚本家であり、斬新なTV番組を数多く企画・構成する放送作家、さらにはご当地キャラクターブームを牽引した「くまモン」の生みの親など、ジャンルを問わない企画のプロフェッショナルである小山薫堂さん。その小山さんが日本特有の入浴行為を文化の1つとして捉え、2015年に提唱した「湯道」が、自身の完全オリジナル脚本で奇跡の映画化。キャストは生田斗真さんをはじめ、俳優・歌手・お笑い芸人など日本のエンタメ界全体をまたぎ、珠玉のタレント人が大集結。監督は『HERO』・『マスカレード』シリーズを手掛けた鈴木雅之監督。心も身体もシットリ感動、ホッコリな幸せ気分に整う、”お湯”を愛する全ての人々に贈るお風呂エンタメ。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 亡き父が遺した実家の銭湯「まるきん温泉」に突然戻ってきた長男の建築家・三浦史朗。帰省の理由は店を切り盛りする弟の悟朗に、古びた銭湯を畳んでマンションに建て替えることを伝えるためだった。しかし、実家を飛び出して都会で自由気ままに生きる史朗に、悟朗は反発して冷たい態度をとっていた。だが、銭湯の手伝いをしながら常連客と触れ合ううちに史朗の心情に変化が生じていく。

 一方、「お風呂について深く顧みる」という「湯道」の世界に魅せられた定年間近の郵便局員・横山は、日々、湯道会館で家元から入浴の作法を学び、定年後は対職員で「家のお風呂を檜風呂にする」という夢を抱いていたが、家族には言い出せずにいた。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 銭湯を経営する兄弟たちと常連客、そして湯の精通者たちの温かい思いが募るドラマ。

 銭湯が好きな一個人の思いと銭湯好きのコミュニティの絆が伝わるが、それが銭湯特有のものかというと、かなり疑問符。銭湯への精神性も精神性だけに感情論の域を出ることはないし、入湯シーンも登場人物の作法・表情・湯の表面だけ映しては、観る者の精神も身体も擬似的に温まることもない。どうして、温泉番組的な撮影をしなかったのだろう…。結果的に、銭湯好きによる「銭湯って、いいよね〜」ぐらいの内輪ノリにしかなってない気がする。実在する銭湯によるドキュメンタリーの生の声だったら説得力あったけど、フィクションのセリフでは思いの記号化にしかならない。

 とはいえ、豪華出演陣の演技は良い。小日向文世さんは『マスカレード・ホテル』のように母集団から外れた位置いるのが相変わらず似合う。窪田正孝さんは湯の作法をする時、挙動1つ1つの体幹がブレない安定ぶり。あと、やっぱり生田斗真さんは『モグラの唄』シリーズの宿命からか、素っ裸になるんだな〜と脱ぎっぷりに感心。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計10個

 

少女は卒業しない

(C)朝井リョウ集英社・2023 映画「少女は卒業しない」製作委員会

公 開 日  :2月23日

ジャンル:青春

監 督 :中川駿

キャスト:河合優美、小野莉奈、小宮山莉緒、中井友望、窪塚愛流佐藤緋美、宇佐卓真、藤原季節 他

 

概要

 同世代のリアルな心情を鮮やかに描き出し、共感を呼ぶ作品を発表し続け『桐島、部活やめるってよ』や『何者』など映像化作品も数多の直木賞作家・朝井リョウさんの連作短編小説が、10年の時を経て待望の映画化。青春時代に味わう全ての感情を詰め込んだ原作の感銘を受け、監督・脚本を手掛けたのは、高校生を主人公に描いた短編映画『カランコエの花』が国内映画祭で13冠を受賞し話題を呼んだ中川駿さん。商業長編映画デビューとなる本作では、原作の持つ瑞々しさと甘酸っぱさをそのままに群像劇へと構成を変え、繊細な少女たちの心の機微を丁寧に描き出す。

 誰もが経験のある「卒業」と「恋の別れ」。後悔と希望を胸に迎える卒業式に、恋する喜びと切なさを心に刻む少女たち。二度と戻れない”あの頃”の感情を呼び起こす、新たな青春恋愛映画の金字塔が誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えた、とある地方高校の”最後の卒業式”までの2日間。別れの匂いに満ちた校舎で、世界のすべてだった”恋”にさよならを告げようとする4人の少女たち。抗うことのできない別れを受け入れ、それぞれが秘めた想いを形にする。ある少女は、進路の違いで離れ離れになる彼氏に。ある少女は、中学から片思いの同級生に。ある少女は、密かに想いを寄せる先生に。しかし、卒業生代表の答辞を担当するまなみは、どうしても伝えられない彼への”想い”を抱えていた…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 卒業式の前日と当日の過ごし方を巡る、4人の少女の群像劇。

  全ての愛しさも辛さも清算し、学校という過去の世界へ置いて去っていく少女たちの姿に、卒業とは物理的な事象であると同時に精神的な移ろいだったと改めた。 学生時代にやり残したことを劇中の少女たちが代わりに浄化してくれる清々しさがあり、余韻が胸の中で溢れ出た。

 主人公4人を演じた全ての女優が素晴らしかった。卒業間近でも、学校へ置き去りにしたくない思いがひしひしと伝わってきた。 カメラが主要人物を追随する長回しのシーンが多く、途切れない会話に生々しさがあった。その分、かつて学生だった人達の心を浸していったと思う。

 原作が朝井リョウさんだけあって、観る者に全く気付かせない仕掛けが発動してる点も良く、オチだけに留まらず登場人物たちに彩りを与えている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計15個

 

ちひろさん

(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之秋田書店)2014

公 開 日  :2月23日

ジャンル:漫画実写化、ドラマ

監 督 :今泉力哉

キャスト:有村架純、豊嶋花、嶋田鉄太、van、若葉竜也リリー・フランキー風吹ジュン

 

概要

 熱狂的支持を集める漫画『ちひろさん』が、ついに映画化。主人公のちひろ役を務めるのは、今や国民的女優となった有村架純さん。脇を固める役者陣も豪華であり、弁当屋の主人の妻・多恵を演じる風吹ジュンさんや、風俗店の元店長役のリリー・フランキーさんといったベテラン陣から、若葉竜也さんや豊嶋花さんといった若手の注目俳優まで、個性的なメンバーが集結。メガホンを取るのは、『愛がなんだ』や『街の上で』など立て続けにヒット作を生み出した今泉力哉監督。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 ちひろは、風俗嬢の仕事を辞めて、今は海辺の小さな街にある弁当屋で働いている。元・風俗嬢であることを隠そうとせず、ひょうひょうと生きるちひろ。彼女は、自分のことを色目で観る若い男たちも、ホームレスのおじさんも、子供も、動物も、誰に対して分け隔てなく接する。

 そんなちひろの元に吸い寄せられるかのように集まる人々。彼らは皆、それぞれに孤独を抱えている。厳格な家族に息苦しさを覚え、学校との友達とも隔たりを感じる女子高生・オカジ。シングルマザーの元で、母親の愛情に飢える小学生・マコト。父親との確執を抱え続け、過去の父子関係に苦悩する青年・谷口。ちひろは、そんな彼らとご飯を食べ、言葉をかけ、それぞれがそれぞれの孤独と向き合い前に進んで行けるよう、時に優しく、時に強く、背中を押していく。そして、ちひろ自身も自らの孤独と向き合い、少しずつ変わっていく。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 家族。男女。血縁や生物的本能で結ばれた関係性を越えて、自分にとっての誰かを見つけることや誰もが孤独を抱いて生きてくことを感じ取れるヒューマン・ドラマ。

 今泉監督特有の自然な会話からクスッと笑えたり、グラッと衝撃を喰らう会話劇は健在。何気ない日常から生まれゆくものを感じながら、物語のピースが埋まる快感がある。

 マコトを演じた子の嶋崎鉄太さんの憎たらしくも可愛い存在感が堪らない。 オカジを演じた豊嶋花さんも良い。水面下に位置した家族の軋轢や仲良しグループとの趣向の変化を静かに体現していた。 そんな中、実はハマっていなかったのは主演の有村架純さんかもしれない。何かと周囲の人間を感化させるインフルエンサーであり、今泉監督が作り出すナチュラルな空間に溶け込んでない気がする。劇中でも風変わり人物と評されているが、鑑賞者である我々からすれば映画の雰囲気から視覚的に浮いてる人物になっている。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計13個

 

エンパイア・オブ・ライト

(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

公 開 日  :2月23日

ジャンル:ドラマ

監 督 :サム・メンデス

キャスト:オリビア・コールマン、マイケル・ウォード、クリスタル・クラーク、トビー・ジョーンズコリン・ファース

 

概要

 現代映画界&演劇界が誇る名匠サム・メンデス監督が満を持して、サーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ最新作。舞台は1980年のイギリス南岸の静かなリゾート地。本作は、そこに生きる人々の絆と”映画と映画館という魔法”を力強く、感動的に描く、珠玉のヒューマン・ラブストーリーである。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 時は、不況や人種差別による不穏が漂う1980年初頭のイギリス。海辺の町にある映画館・エンパイア劇場で働く女性ヒラリーは、辛い過去を持っており、その闇を背負いながら生きていた。ある日、スティーブンと名乗る黒人の青年がエンパイア劇場のスタッフとして加わる。スティーブンは憧れの大学に通う夢があったが、世情により諦めて働きに出たという事情があった。互いに抱えるものがあるヒラリーとスティーブンは惹かれ合い、自身の心と世間の闇へと向き合っていく。だが、その道のりは決して楽なものではなかった…。

 

感想

 孤独。歳の差。人種差別。男性優位性。自己と時代の障壁をシームレスに組み込み、映画館で映画を観る行為が魔法であることを教え、未来永劫、人々が映画を観る理由を示した愛ある傑作。

 リビア・コールマンが素晴らしい。作品の常として、1キャラにつき1つの葛藤が用意されるが、オリビア演じるキャラは時代・人間関係・自身に秘めた問題と並び、現実世界の人間の同等の数の葛藤を抱えている。それら全てに、喜怒哀楽に可憐に表現した技量の大きさに感服。

 マイケル・ウォードも素晴らしい。若さ故の青臭さ。だが、人間関係や仕事との向き合い方は誠実。そして、人種差別を喰らう弱さと立ち向かう爆発力。未成熟だが、信念を通す若者を熱演していた。

  有害な劇場支配人を演じたコリン・ファースや寡黙な映写技師のトビー・ジョーンズも良い味を出してた。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計18個

 

逆転のトライアングル

Fredrik Wenzel (C) Plattform Produktion

公 開 日  :2月23日

ジャンル:コメディ

監 督 :リューベン・オストルンド

キャスト:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウッディ・ハレルソン 他

 

概要

 特になし。

 

あらすじ

 現代の超絶セレブたちを乗せた豪華客船が無人島に漂着。そこで頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃員だった。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 あまりの退屈さに1時間で視聴を断念。何かしらの風刺を狙った台詞が回りくどい。変に捉え方を難しくさせてる。しかも、画が単調で視覚的な面白さがない。あと、登場人物に嘔吐させればウケるだろうという発想が安直。表現方法を全部ミスり倒した奇跡のような作品。

 嘔吐描写の連続がつまらなかった。ケレン味のない描写であり、ガチで気分を悪くしてる人の嘔吐を見るのは、そんなに笑えるものではない。俗に言う「誰かを傷付けて取る笑い」に近く、くだらないバラエティ番組を観てるようだった。しかも、見せ方の質をそっちのけで物量で勝負しており、「どう?いっぱい嘔吐させたら面白いだろ?」という試みさえ鼻につく。おそらく、2023年公開作品の中でワースト最有力。オールタイム・ワーストも視野に入る。吐き気を催すほど、つまらない。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐

演出・映像   :⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐

星の総数    :計7個

 

アラビアンナイト 三千年の願い

(C)2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.

公 開 日  :2月23日

ジャンル:SF

監 督 :ジョージ・ミラー

キャスト:イドリス・エルバティルダ・スウィントン、エチュ・ユクセル、オグルカン・アルマン・ウスル、ブルク・ゴルゲダール 他

 

概要

 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で世界中を熱狂の渦に巻き込んだ鬼才ジョージ・ミラー監督作。3000年もの間、幽閉されていた孤独な魔人と、見果てぬ夢を追い求める女性学者とが織りなす、時空を超えた魂の旅の物語。イスラムの説話集『アラビアンナイト』をモチーフに、圧倒的な造形美と絢爛たる色彩美のアラベスクは、愛の神秘、狂気と欲望の世界へと観る者を誘う。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 古今東西の物語や神話を研究するナラトジー物語論の専門家アリシアは、講演のためにトルコのイスタンプールに訪れた。バザールで美しいガラス瓶を買い、ホテルの部屋に戻ると、ガラス瓶の中から巨大な魔人が現れた。意外にお紳士的で女生徒の会話が大好きという魔人は、ガラス瓶から出してくれたお礼に「3つの願い」を叶えようと申し出る。だが、物語の専門家アリシアは、その誘いに疑念を抱く。なぜなら、願いの物語はどれも危険でハッピーエンドがないことを知っていたのだ。魔人は彼女の考えを変えさせようと、紀元前からの3000年に及ぶ自身の物語を語り始める。そしてアリシアは、魔人も、さらに自らをも驚かせる、ある願い事をするのだった…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 意匠を凝らした美術とCGが織り混ざった鮮やかな映像美。愛を貫き通す難しさが染みる数々の小話。それらをキレのある編集で繋ぎ合わせ、見る目を惹きつける魅惑的な作品。ラスト数10分でガクッと勢いが失速するが、愛の不定形さや物語の必要性を受け取れる。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐

星の総数    :計17個

 

レッドシューズ

(C)映画レッドシューズ製作委員会

公 開 日  :2月24日

ジャンル:ドラマ、スポーツ

監 督 :雑賀俊朗

キャスト:朝比奈彩、野田あかり、市原隼人佐々木希森崎ウィン観月ありさ松下由樹

 

概要

 崖っぷちのシングルマザー・ボクサーを描いた、北九州オールロケの感動作。主人公・真名美役に本格的なトレーニングを受けて身体作りに挑んだ朝比奈彩さん、真名美に厳しくも温かく寄り添うトレーナー役に市原隼人さん、真名美の親友・由佳役に佐々木希さん、娘と親権を争う義母役に松下由樹さん、その他にも森崎ウィンさんや観月ありささんといった名優たちが出演。また、若戸大橋北九州空港、小倉旦過市場など前編北九州オールロケを敢行。

 監督に、『カノン』で中国のアカデミー賞と呼ばれる金鶏百花映画祭で『おくりびと』以来、三冠を獲得した雑賀俊朗さんを迎え、母と娘、そして周囲の人々が織りなす感動作が誕生した。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

あらすじ

 夫を病気で亡くし、娘と2人で慎ましくも静かに暮らすプロボクサーの真名美は、経済状況が悪くて貧困に状態にあった。家庭裁判所からは、夫の母が娘を引き取って育てるべきだという判断に押され気味になっていた。ただでさえ苦しい状況の中、職場でも理不尽な不幸に見舞われる。娘と一緒に居るため、そしてボクシングを続けるために、あらゆる手段を尽くしていくが…。

 ※公式サイトより引用および抜粋

 

感想

 ボクシング。シングルマザー。ワーキング・プア。3要素を合わせた家族物語。ファイトマネーを貰うだけの惰性ボクシング。経済面的に困窮する子育て。経歴的に選べない仕事。世間に虐げられても我が子の為に命を燃やす朝比奈さんの執念が光る。また、試合のシーンでは1つ1つの挙動にキレがあり、練習の成果が感じ取れる。

 演出に難あり。登場人物のやり取りが形式的過ぎてケレン味が極小。また、シーンの途中で、そこに居ないであろうはずの人物がニュルッと出現し、最初から居ました感を出すのは無理がある。てか、怖い(笑)

 脚本に難あり。不幸に見舞われる朝比奈さんの演技は良いが、襲い来る不幸が未然に防げたか建設的に話し合えば、不幸の連鎖に縛られることもなかった気がする。他の登場人物もあまり考えずに行き当たりばったりであるし、どういうわけか他人が今現在どの地点に居るか探知する能力者がいる(笑) 題材が良かっただけに惜しい。

 

⭐評価

脚本・ストーリー:⭐⭐

演出・映像   :⭐⭐

登場人物・演技 :⭐⭐⭐

設定・世界観  :⭐⭐⭐

星の総数    :計10個